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 暗闇は身体を包み、木々の向こうから鋭い目が、近付き、大きくなり、飲み込もうとする。

逃げるように暗闇を歩く。小石や小枝を踏むと足が痛む。だけど歩かなければならない。

やがて、足に柔らかさを感じる。それは満ちていくものを与えた。だから踏み歩く。

再び小石を踏むと立ち止まり、振り返り、足元へ顔を近づける。数々の花が倒れている。慎ましく咲いた花や蕾。

私ではない。
私は踏んでいない。

―――わからなかった。踏みながら歩いて嫌な気分じゃなかったんだ。

だから踏み歩いた。痛くないから。


 空から鳴き声が聞こえる。時折パタパタと翼の音が聞こえる。優雅に飛ぶ姿を想像する。

「暗闇の出口はどこですか?」

「空の飛び方を教えてください」

鳥は何も答えない。ただ遠ざかり、やがて音すら消える。声は届いていなかったのか。


 真っ暗な道を歩くと、向かい風は体を冷やし、歩を停める。追い風は背中を押し、歩を進める。

横風は汗をさらい触れていく。私は風の音に耳を澄ます。

風は心の響きを敏感にする。


 闇夜は月夜となり一粒の眩い光。月夜は私を照らし輪郭を帯びる。

「後ろを見るな」

どこからか聞こえる。でも振り返る。後ろにこの体を暗く形どった影。

私は過去を悔やむ、皮膚に爪が刺さる。何度も爪が肌に食い込む。

―――私は人々を照らすあの月になりたかった。

ただ、それだけだった。



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