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leeri1989
月
暗闇は身体を包み、木々の向こうから鋭い目が、近付き、大きくなり、飲み込もうとする。
逃げるように暗闇を歩く。小石や小枝を踏むと足が痛む。だけど歩かなければならない。
やがて、足に柔らかさを感じる。それは満ちていくものを与えた。だから踏み歩く。
再び小石を踏むと立ち止まり、振り返り、足元へ顔を近づける。数々の花が倒れている。慎ましく咲いた花や蕾。
私ではない。
私は踏んでいない。
―――わからなかった。踏みながら歩いて嫌な気分じゃなかったんだ。
だから踏み歩いた。痛くないから。
空から鳴き声が聞こえる。時折パタパタと翼の音が聞こえる。優雅に飛ぶ姿を想像する。
「暗闇の出口はどこですか?」
「空の飛び方を教えてください」
鳥は何も答えない。ただ遠ざかり、やがて音すら消える。声は届いていなかったのか。
真っ暗な道を歩くと、向かい風は体を冷やし、歩を停める。追い風は背中を押し、歩を進める。
横風は汗をさらい触れていく。私は風の音に耳を澄ます。
風は心の響きを敏感にする。
闇夜は月夜となり一粒の眩い光。月夜は私を照らし輪郭を帯びる。
「後ろを見るな」
どこからか聞こえる。でも振り返る。後ろにこの体を暗く形どった影。
私は過去を悔やむ、皮膚に爪が刺さる。何度も爪が肌に食い込む。
―――私は人々を照らすあの月になりたかった。
ただ、それだけだった。
