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本当はドーナツ買ってあげたかった

昨日は、ひと月に1回通っているメンタルクリニックに行った。郊外に住む僕は、電車で片道30分かけて通院している。会社員時代は毎日使っていた駅なのに、たまにしか行かなくなると緊張もするし、ちょっと気合いも入る。

診察自体の持ち時間は10分くらい。一瞬で終わる。せっかく街まで出てきているので、いつもなら気分転換にウィンドウショッピングをしたり、行きつけの眼鏡屋さんでメンテナンスをしたりする。昨日は病院の後、帰宅ルートの途中駅にあるハローワークで済ませたい手続きがあったので、駅ビルを軽く散策してから行くことにした。

駅ビルを歩いている間、いつもクリニックの帰りに購入するクロワッサンが頭をよぎる。ここ数回、買って帰っているから妻も息子も期待しているはず。

ただ、失業中の身で呑気にお土産を買っている場合じゃない。先週の日曜日、洋菓子店でシュークリームを買ったよなぁ、なんて買わない言い訳をする。生粋の貧乏性にくわえ、失業中という「お金を払いたくない条件」が重なりすぎていた。ふと、ハローワークのある駅に、某有名ドーナツチェーン店があることを思い出し、その手があったかと意気揚々と駅ビルを後にする。

ドーナツ店を背にして、まずはハローワークに向かった。道中、蒸し暑い外気とうっとうしい霧雨に悪戦苦闘しながら、20分ほどかけて目的地に着く。施設内は人も少なく、スムーズに対応してもらえるのかと思いきや、想定よりも待つことになった。

順番を待っている間、お昼を食べておらず腹ペコだったこともあり、「甘いドーナツ1つとパイ系のやつを1つ、カフェラテでも頼もうかな」なんて妄想する。もちろん、家族にも2つずつ買って帰ろう……そんなことを最初の方は余裕で考えていた。ところが、だんだんと雲行きが怪しくなる。後から来た人が先に呼ばれ、用を済ませて帰っていく。

「僕の手続き、ちゃんと進んでます?」と何回聞こうとしたことか。結局、45分くらい待って自分の名前が呼ばれる。そして、クリニック同様に10分ほどであっさり手続き終了。

そのあたりから偏頭痛の予感がし始め、いよいよ余裕が無くなっていた。時計を見ると、想定よりも1時間遅い。ハローワークを後にし、足早に歩きながら、ドーナツを店内で食べるか、持ち帰りにするかを頭の中でグルグル考える。とりあえず店内に入ったらなるようになると思い、いざ商品が並ぶガラスケースの前で店員さんと対峙した。

「すみません。フランクフルトのパイとチョコファッションを2つください。以上で、ドリンクは結構です。」

偏頭痛と疲れのせいか、それとも貧乏性が出たのかは、もはや自分でもわからない。席に座り時計を見ると、次の電車の時刻まであと13分。その次の電車はなぜか1時間後。2つのドーナツを口に頬張り、無理やり胃袋に収めて駅のホームに向かった。

次の日の朝。自分でコーヒーを淹れる、と言う妻。 彼女の分の豆を挽いて、そっとキッチン脇に置いておいた。


【自分に嘘をつけない40代の、言葉】
日々のちょっとした葛藤や本音、愛用する洋服のことを綴っています。

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