見出し画像

介護保険の「認定調査」で失敗しないための3つの鉄則—親の「まだできる」に騙されないために


なぜ本当は介護が必要なのに「要支援1」になってしまうのか?

「親が転んで骨折し、いよいよ介護が必要になった。役所に介護保険の申請をして、調査員が自宅に来てくれた。これでヘルパーさんやデイサービスが使えるはず……」

数週間後、届いた認定結果は「要支援1」(最も軽い区分)。
ケアマネジャーからは「要支援1だと、ご希望のサービスは週に1回しか使えませんね」と言われてしまう。

「あんなに歩くのも大変で、トイレも失敗するのに、なぜ要支援1!?」

介護の入り口で、この絶望を味わう家族が後を絶ちません。

その最大の原因は、介護保険の「認定調査」の場で、親が「よそ行き」の顔をしてしまい、調査員に正確な状態が伝わらなかったことにあります。

この記事では、介護保険サービスの命運を分ける「認定調査」で失敗しないための、家族が守るべき3つの鉄則をお伝えします。


介護保険の「認定調査」とは何か

介護保険サービスを利用するためには、まず市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をします。

その後、市区町村の調査員(または委託されたケアマネジャー等)が自宅や病院に訪問し、本人の心身の状態を確認する面取り調査が行われます。これを「認定調査」と呼びます。

認定調査の仕組み

  • 調査項目:全国共通の74項目(歩行、食事、排泄、認知機能など)

  • 調査時間:約30分〜1時間

  • 判定の流れ:この調査結果をコンピューターで一次判定し、主治医の意見書と合わせて「介護認定審査会」が最終的な要介護度(要支援1・2、要介護1〜5)を決定する。

つまり、この約30分の調査で、親のこれからの介護の限界枠(月にいくら分サービスを使えるか)が決まってしまうのです。


なぜ認定調査で失敗(本来より軽く判定)するのか?

最大の理由は、親の「見栄」と「プライド」です。

調査員という「見知らぬお客さん」が家に来ると、親はどうなるか。

  1. よそ行きの顔になる:普段はパジャマで寝たきりなのに、その日だけはシャキッと着替えてソファに座っている。

  2. できないことを「できる」と言う:調査員に「お風呂は一人で入れますか?」と聞かれ、実際は家族が手伝っているのに「はい、一人で入れます」と胸を張って答えてしまう。

  3. その日だけ奇跡的に調子がいい:認知症で普段はチグハグな会話なのに、調査員が来ている間だけはニコニコと辻褄の合う会話をしてしまう。

調査員はプロですが、基本的には「その場で見えたこと」と「本人の回答」をベースに記録せざるを得ません。

結果、「一人で生活できる」と判断され、軽い介護度が出てしまうのです。


認定調査で失敗しないための3つの鉄則

これを防ぐためには、家族のサポートが絶対条件です。

鉄則①:家族が必ず立ち会う

本人のみで認定調査を受けさせるのは絶対にNGです。
親と同居していない場合でも、必ずスケジュールを調整して立ち会ってください。

本人が「できる」と答えた時、横から家族が「実際の状況」を補足する必要があります。

調査員:「トイレは一人で行けますか?」
:「はい、一人で行けますよ」
家族:「(すかさず)日中は行けますが、夜間は間に合わずに失敗することが週に3回ほどあります」

このように、事実をその場で修正する役割が家族には求められます。

鉄則②:親の「できる」は「1人で・安全に・いつでも・早くできるか」で判断する

親が「できる」と言い張る行動について、家族は以下の4つの基準で客観的に見てください。

  1. 1人で:誰の声かけや見守りもなくできるか?(「お風呂入ろうね」と促さないと入らないなら、それは「できない」に分類されます)

  2. 安全に:転倒の危険なくできるか?(手すりや家族の支えが必要なら「介助が必要」です)

  3. いつでも:調子が良い時だけでなく、悪い時でもできるか?

  4. 早く:著しく時間がかかっていないか?(着替えに30分かかるなら「介助が必要」です)

これらを満たしていないなら、調査員に対して「一人では安全にできません」と伝えるのが正解です。

鉄則③:困りごとを「メモ」にして調査員にこっそり渡す

これが最強のテクニックです。

親の目の前で「お母さんはトイレを失敗して……」「認知症で昨日のことも忘れて……」と赤裸々に語ると、親はひどく傷ついたり、激怒して調査を拒否したりするリスクがあります。

そこで、日頃の困りごとや、親が隠したがる真実をA4用紙1枚程度のメモにまとめておくのです。


そして、調査員が帰る際、玄関先まで見送るふりをして「本人の前では言えませんでしたが、実際の状況をメモにしました。特記事項に反映していただけますか?」とこっそり渡します。

調査員もこの「家族からのメモ」は非常にありがたい情報として、審査のための「特記事項」にしっかり書き込んでくれます。


認定調査は「テスト」ではない

親にとって、認定調査は「できないことを見透かされるテスト」のように感じられます。だから見栄を張る。

しかし、家族はこう考えてください。
認定調査は、ありのままの「一番悪い状態」を伝える場である、と。

「できること」をアピールしても、介護サービスは増えません。
「何に困っているか」「家族がどれだけ負担を抱えているか」を正確に伝えることでのみ、親が安全に暮らすためのサービスを獲得できます。


まとめ:認定調査に向けたチェックリスト

  • [ ] 認定調査の日は、必ず家族が立ち会うようスケジュールを調整した

  • [ ] 親の「できる」が、本当に「安全に一人でできるか」を客観的に見直した

  • [ ] 日頃の具体的なエピソード(困りごと、危険なこと)をリストアップした

  • [ ] 親の目の前で言いにくいことは、事前に「メモ」にまとめた

  • [ ] 調査員が帰る際、玄関先でメモを渡す準備ができている

親の「まだ大丈夫」というプライドを守りながら、必要な介護サービスをしっかり獲得する。
それが、介護のスタートラインに立つ家族の最初のミッションです。


📝 関連する記事

  • 親の介護にかかるお金のリアル——月額・総額・使える制度

  • いいケアマネジャーの見分け方——「この人に任せて大丈夫?」と不安な40代へ

  • 親が突然倒れた——最初の72時間でやるべきことリスト

  • 認知症の初期サインを見逃さないための15のチェックポイント



いいなと思ったら応援しよう!