知りたがり読者向け深掘り解説
この作品は表面だけ見ると、
「変な友達と電車に乗っていたら、よくわからない会話が続くコメディ」
です。
でも知りたがり読者になると、作者がもっと別のことを書こうとしているのが見えてきます。
この小説の主人公は本当に井上なのか?
物語は井上の一人称で進みます。
だから普通に読むと主人公は井上です。
しかし実際には、
物語を動かしているのは白石です。
井上はずっと、
ツッコミを入れる
振り回される
困惑する
ばかりです。
一方の白石は、
話題を作る
行動を起こす
子どもに話しかける
井上の家へ行く
など、物語を前へ進めています。
つまり井上は、
読者の分身
なのです。
読者も井上と一緒に
「なんだこいつ?」
と思いながら白石を見ています。
白石はなぜこんなに変なのか?
白石は変人として描かれています。
しかしよく見ると、
白石は嘘をついていません。
むしろ異常なほど素直です。
例えば女子高生たちが二人を見て噂している場面。
普通の人なら
「もしかして変な誤解されてる?」
と考えます。
でも白石は
「君が魅力的だからですよ」
と言います。
これは空気を読んでいないとも言えます。
しかし、
悪意もありません。
白石は世界をそのまま受け取っているのです。
井上がずっと負け続けている理由
井上は何度も白石を馬鹿にします。
例えば、
ワンチャン
点P
ゴム手袋風船
など。
ところが最後まで見ると、
実は井上の方が思い込みに縛られています。
女子高生の件もそうです。
井上は勝手に
「変な目で見られている」
と思っています。
でも本当にそうかは分かりません。
つまり井上は、
世間の目を気にしている人
です。
白石は何を象徴しているのか
白石は、
ある意味で「子ども」に近い存在です。
子どもは、
常識を気にしない
面白そうなものに興味を持つ
他人の評価をあまり考えない
ですよね。
白石も同じです。
だから最後に子どもと自然に仲良くなります。
点Pの本当の意味
タイトルにもなっている
「点P」
は数学の記号です。
普通なら
AからBへ移動する点です。
しかし白石は、
自分自身を点Pに例えています。
ここにこの作品のテーマがあります。
数学の点P
点Pは決められた線の上しか動けません。
AーーーーPーーーーB
みたいな感じです。
自由がありません。
白石の人生
白石も、
毎日同じ場所を行き来しています。
同じ駅。
同じ生活。
同じルート。
つまり、
人生そのものが点P状態
なのです。
だから立川に行くことが特別
井上に誘われて、
白石は予定外の立川へ行きます。
たったそれだけです。
でも白石は大喜びします。
なぜか。
それは、
点Pが線から外れたからです。
もちろん数学的にはありえません。
でも人生ではありえます。
「道を外れる」の意味
この作品で何度も出てくる重要な言葉です。
普通、
道を外れる
というと悪い意味があります。
不良になる
サボる
ルールを破る
みたいな。
でも白石の言う
「道を外れる」
は違います。
それは
いつもの自分から少しはみ出すこと
です。
例えば、
行ったことのない場所へ行く
知らない人と話す
新しい本を読む
初めてのことをする
そんな小さな冒険です。
最後の子どもの場面
最後に子どもが出てきます。
これは偶然ではありません。
物語の締めくくりとして置かれています。
白石は子どもに
ワンちゃんの絵を描いてあげます。
でも全然ワンちゃんに見えません。
大人なら
「下手だな」
で終わりです。
しかし子どもは喜びます。
なぜでしょう。
それは、
子どもには
正解より面白さが大事だから
です。
緑色の耳の犬と変な犬
最初の犬。
最後の犬。
この二匹は対比になっています。
最初の犬は既製品です。
誰かが作った完成品。
最後の犬は白石が作ったものです。
不格好で変です。
でも世界に一つしかありません。
作者はここで、
「完璧なものより、誰かが作った変なものの方が面白いこともある」
と言いたいのかもしれません。
この作品の一番大事なテーマ
知りたがり読者向けに一言で言うなら、
「人はみんな自分だけの線の上を歩いている」
という話です。
学校。
家。
部活。
塾。
友達関係。
みんな知らないうちに決まった線の上を歩いています。
でも時々、
その線から少しだけ外れてみる。
すると新しい景色が見える。
白石が立川へ向かったように。
だからこの小説は、
変人コメディの顔をしながら、
実は
『人生には寄り道も必要だ』
というメッセージを持った青春小説なのです。
