料理は地域の価値を世界へ届ける
私にとって、料理だけではなく、仕事への向き合い方まで学ばせていただける restaurant sola。
今回は、その restaurant solaで開催された特別なディナーにお声掛けいただき、参加してきました。
今回の主役は、日本を代表する3人のシェフによる、一夜限りのコラボレーション。
ホストを務めるのは、パリでミシュラン一つ星を獲得し、福岡から世界へ挑戦し続けるrestaurant solaの吉武広樹シェフ。
その吉武シェフのもとに、第一線で活躍するシェフたちが集い、それぞれの哲学や技術を持ち寄って創り上げる、この日限りの特別なコースです。
吉武シェフは、パリで自身のレストラン「Sola」をオープンからわずか1年3か月でミシュラン一つ星へと導き、その後、日本の拠点として福岡にrestaurant solaをオープン。世界で評価を受けながらも、東京ではなく福岡を選んだのは、「九州には世界に誇れる食材がある」という強い信念があったからだそうです。
「海と山に恵まれ、生産者との距離が近い九州だからこそ表現できる料理がある。」
吉武シェフは、生産者と直接向き合い、その土地だからこそ育まれる食材の魅力を最大限に引き出すことを何よりも大切にされています。
また、高級食材を競うのではなく、「どこでも手に入る食材を、料理人の技術で唯一無二の一皿へと昇華させる」という哲学も、吉武シェフを語るうえで欠かせません。
restaurant solaの象徴でもある薪焼きには、九州北部豪雨で発生した流木を活用するなど、料理だけでなく環境や地域との循環まで見据えた取り組みも行われています。
フランス料理の確かな技術を土台に、日本の旬、生産者の想い、そして九州という土地の個性を一皿に表現する。その料理には、美味しさだけではなく、地域への敬意と未来へのメッセージが込められているように感じました。
続いて、福岡のイノベーティブ・フレンチ「TTOAHISU」でミシュラン一つ星を獲得し、独創的な発想と繊細な技術で多くの人を魅了する山下泰史シェフ。

愛媛県出身の山下シェフの料理は、新鮮な素材が持つ力を最大限に引き出し、その土地ならではの魅力を一皿に表現していました。
目の前に運ばれてきた瞬間から驚きがあり、一口ごとに新しい発見がある。自由な発想と確かな技術が融合し、料理そのものが一つの作品として完成しているように感じました。

そして、中国四川省・チベット自治区出身、18歳でニューヨークへ渡り、世界最高峰ともいわれる「Blue Hill at Stone Barns」で4年間、副料理長を務めた後、現在は湯布院のオーベルジュ「ENOWA YUFUIN」のシェフを務めるタシ・ジャムツォシェフ。
タシシェフは、自ら原種に近い野菜を育て、その日に収穫した食材と向き合いながら料理を生み出しています。
効率ではなく、本来の香りや味、生命力を大切にする姿勢からは、自然への深い敬意と、生産者としての哲学を感じました。

世界を舞台に活躍する3人が、それぞれ異なる経験と哲学、技術を持ち寄り、一つのコースを創り上げる。

京都亀岡七谷鴨 野菜は朝湯布院のタシシェフの畑で3人のシェフが採ってきたもの
同じ料理人であっても、歩んできた人生も、価値観も、表現もまったく違う。
だからこそ、その違いが一皿ごとに重なり合い、この日、この瞬間にしか生まれない料理になっていることを感じました。そして、料理はもちろん、サービスや空間、演出まで、そのすべてが一つの体験として丁寧に紡がれているのも素晴らしかったです。
目の前に運ばれてくる料理を味わうたびに、その背景にある生産者の想い、土地の個性、そしてシェフが積み重ねてきた経験や哲学までも感じられる特別な時間でもありました。

今回、改めて感じたのは、一流の料理人がつくっているのは「料理」だけではないということです。
その土地の風土や文化、生産者の想い、食材の価値を、一皿を通して世界へ届けている。だからこそ、その料理に触れた人は、その地域に興味を持ち、生産者を知り、実際にその土地を訪れたくなる。
料理は、人を動かし、地域を動かし、経済を動かす力を持っています。
地域には素晴らしい食材や技術があっても、その価値が伝わらなければ埋もれてしまいます。
その価値を世界へ届けるのが料理人であり、その一皿が地域のブランドを育て、新たな人の流れや経済を生み出していく。
今回のディナーは、そんなことを改めて実感させてくれる時間でした。
こうした特別な時間をご一緒させていただけたことに、心から感謝しています。
また一つ、多くの学びをいただいた、忘れられない一夜でした。

