ハグのおかわり制度を導入した3歳児
休日、私はわりと娘にハグをする。
かなりする。
すきあらばする。
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娘がおままごとしている。
ハグする。
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ブロックで遊んでいる。
ハグする。
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テレビを見ている。
後ろからハグする。
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正直、かなり鬱陶しい父親かもしれない。
娘が将来この記事を読んだら、
「やめて」
と言う可能性がある。
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しかし今は3歳なので許されている。
たぶん。
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ある休日も、
いつものようにハグしていた。
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ぎゅー。
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娘。
「えへへ」
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ぎゅー。
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娘。
「もういっかい」
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ぎゅー。
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娘。
「もっといっぱいして!」
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私は少し笑った。
なんだその要求。
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ラーメンの替え玉みたいなノリである。
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どうやら我が家では、
ハグのおかわり制度が導入されたらしい。
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こちらとしては嬉しい。
かなり嬉しい。
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ただ同時に少し不思議だった。
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娘って、
こんなにハグ好きだったっけ。
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私は勝手に、
こういうものは慣れると思っていた。
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毎日食べるカレーみたいなものだ。
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最初は嬉しい。
でもそのうち当たり前になる。
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ところが娘は違った。
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むしろ要求量が増えている。
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「もういっかい」
↓
「もっといっぱいして!」
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完全に需要が伸びている。
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供給側としてはありがたい。
かなりありがたい。
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ただ少し怖い。
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このペースで要求量が増えたら、
将来的にハグ工場の増産対応が必要になる。
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生産能力が追いつかない。
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私は生産技術なので、
ついそういうことを考えてしまう。
かなり職業病である。
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私は昔から、
好意は伝えた方がいいと思っている。
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ありがとう。
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助かった。
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好きだよ。
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良いと思った。
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そういうものは、
思っているだけより言った方がいい派だ。
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かなり言う。
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むしろ言い過ぎる。
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だから娘にも、
「だいすきだよ」
をよく言う。
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そしてハグする。
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たぶん娘からすると、
「また始まった」
くらいだと思う。
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しかし最近は、
娘の方から近づいてくることが増えた。
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自分から抱きついてくる。
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そして、
「ぎゅーして!」
と言う。
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さらに、
「もっといっぱいして!」
と言う。
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完全にリピーターである。
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最近思う。
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娘はハグそのものが好きなのではなく、
ハグの時の空気が好きなのかもしれない。
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ハグしている時、
私はスマホを見ない。
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仕事のメールも見ない。
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おままごとの途中でも、
その数秒だけは娘だけを見る。
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娘の顔を見る。
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娘も私を見る。
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ただそれだけだ。
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でも3歳児は、
意外とそういう時間を感じ取っている気がする。
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もちろん私は毎回余裕があるわけではない。
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休日でも疲れている日がある。
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ゴロゴロしたい日もある。
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ハグより昼寝したい日もある。
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私は聖人ではない。
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少し分析癖が強くて、
娘に甘いだけの父親である。
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それでも今日も娘は言う。
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「ぎゅーして!」
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私はハグする。
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すると娘は言う。
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「もっといっぱいして!」
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要求水準が上がっている。
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完全にリピーターである。
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もしかすると愛情というのは、
足りないから欲しくなるのではなく、
十分あると分かった時に、
初めて「もっと」と言えるものなのかもしれない。
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