フェリア外伝①
これは、音と周波数を司る女神フェリアが、
世界に忘れられた声を聴いていく物語。
天空レムリアで起きた、
小さな異変からすべては始まった――。
フェリア外伝①
世界が少しだけ音を外した日
天空レムリア――
その朝は、何も変わらない朝だった。
白い塔。
空に浮かぶ水路。
遠くを飛ぶ龍たち。
神殿から響く朝の鐘。
誰もが、
いつもの朝だと思っていた。
ただ一人を除いて。
音と周波数の女神――フェリア。
彼女は天空神殿の回廊で足を止めた。
「……あれ?」
空を見上げる。
風が吹いている。
鳥も鳴いている。
水も流れている。
何もおかしくない。
なのに。
「……今、ズレた」
誰にも分からない。
だがフェリアだけは聴いていた。
世界全体の音。
レムリアには、
誰も知らない秘密があった。
世界は見えない音で支えられている。
山にも。
海にも。
人にも。
龍にも。
星にも。
全部。
音がある。
そして今。
ほんのわずかに。
その音が狂った。
フェリアは目を閉じた。
静かに呼吸する。
周囲の音が消える。
鐘。
風。
水。
人の声。
空の振動。
龍の羽ばたき。
すべてが線になる。
そして。
彼女は聴いてしまった。
誰かの声を。
「……見つけた」
フェリアの瞳が開く。
「……誰?」
だが返事はない。
代わりに。
神殿の柱の水晶が。
パキ……
一本だけ。
静かに割れた。
フェリアは初めて恐怖を感じた。
「……世界の音が」
「誰かに聴かれている……」
空の向こう。
誰も知らない場所。
暗闇の中で。
何者かが微笑んでいた。
「やっと見つけたよ」
「音の巫女――フェリア」

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第二章
音の無い子供
水晶が割れた翌日。
天空レムリア全土は少し騒がしくなっていた。
理由は単純だった。
神殿の水晶は自然には割れない。
しかも割れたのは、
《共鳴柱(レゾナンス・ピラー)》
都市全体の振動を整えている重要柱だった。
神官たちは慌ただしく走り回っていた。
技術官たちも調査している。
セレオンも水晶解析を行っていた。
しかし。
誰にも原因が分からない。
フェリアだけは黙っていた。
(違う……)
(柱が壊れたんじゃない)
(誰かが触った)
(音へ)
その夜。
フェリアは一人で神殿を抜け出した。
白い月が浮かぶ空。
風の橋を歩く。
誰にも言わなかった。
言っても理解されないと思ったからだ。
そして。
彼女は気付く。
「……また」
聞こえる。
あの声。
遠く。
遠く。
でも昨日より近い。
「……こっち」
フェリアは歩く。
神殿区画を抜ける。
王族区画を抜ける。
龍庭園を抜ける。
そして。
天空都市の端まで来た。
そこには、
誰も使わなくなった古い音殿があった。
天空レムリア最古の建造物
《静音神殿》
何百年も前に閉鎖された場所。
理由は誰も知らない。
フェリアはゆっくり扉へ手を置く。
ゴゴゴ……
重い石扉が開く。
真っ暗だった。
何もない。
何も聞こえない。
違う。
フェリアの背筋が震えた。
「……音が無い」
世界には必ず音がある。
水。
風。
鼓動。
呼吸。
空間振動。
完全な無音なんて存在しない。
なのに。
ここは違う。
そして奥で。
小さな声。
「……来た」
フェリアが振り返る。
そこにいたのは。
小さな男の子だった。
外見は十歳くらい。
白銀の髪。
白い服。
裸足。
そして。
異常だった。
フェリアはその瞬間理解する。
(嘘……)
(この子……)
(音が無い……)
少年は微笑む。
「やっと来た」
「僕の声が聞こえたのは」
「君だけ」
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第三章
忘れられた旋律
静音神殿。
そこには何も無かった。
風も。
水も。
振動も。
生き物の気配すらない。
世界から切り離された空間。
その中心で。
白い少年は静かにフェリアを見ていた。
「……名前が無いって」
フェリアが小さく言う。
「どういう事?」
少年は首を傾げた。
「そのままだよ」
「忘れられたんだ」
「みんなに」
「名前も」
「存在も」
「全部」
フェリアは眉を寄せた。
「そんな事あるの?」
「存在しているのに?」
少年は笑った。
その笑顔は少しだけ寂しかった。
「あるよ」
「音が消えればね」
少年は静かに神殿の奥を指差した。
そこには巨大な水晶があった。
古く。
非常に古く。
そして。
完全に黒く変色していた。
フェリアが近づいた瞬間。
胸が締め付けられた。
ドクン。
ドクン。
突然。
耳の奥へ大量の音が流れ込んできた。
叫び声。
泣き声。
笑い声。
歌。
鐘。
祈り。
龍の咆哮。
何千。
何万。
何十万。
「っ……!」
フェリアが膝をつく。
「何……これ……!」
少年は静かに言った。
「記憶」
「世界が捨てた音」
そして。
黒い水晶の奥で。
何かが動いた。
パキ……
パキ……
細い亀裂が走る。
少年が初めて焦った顔をする。
「駄目だ」
「起きる……!」
フェリアが叫ぶ。
「何が!?」
少年は恐怖に震えながら言った。
「世界が消した音が――」
「戻って来る」
(フェリア外伝②へ続く)
こちらの作品は日月神示の三柱のイシュアが
降ろして書いた天空のレムリアの実話です。
私、ロアンナはフェリアの過去世を持っています。
その作品をお借りしてお届けしています。
本編、続編もどうぞお読みください🙏
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