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手術は、空気を読みすぎると上手くならない

これは、あくまで僕の持論です。

手術は、空気を読みすぎると、絶対に上手くならない。

若い頃は、どうしても上司の言うことを聞く。

「先生がそう言うなら、そうなんだろう」

「先輩がこうしているから、自分もそうしよう」

それは当然だと思います。

経験の浅い時期には、まず先人の技術を真似ることが大切です。

でも、ある程度の症例数を経験し、一定の年齢になったら、どこかで次の段階に進まなければならない。

「教えてもらう」から、「自分で考える」へ。

ここが、手術が上手くなるかどうかの大きな分岐点だと思っています。


手術には、正解が一つしかないわけではありません。

特に腹腔鏡手術では、

「この層を剥離するのか」

「ここから回るのか」

「この血管を先に処理するのか」

「この視野をどう作るのか」

術者によって、かなり違います。

そして、残念ながら、

ベテランだから、いつも正しいわけではありません。

技術認定医であっても、剥離層を間違えることはある。

経験が豊富でも、症例によっては判断を誤ることがある。

もちろん、これはベテランを否定しているわけではありません。

むしろ逆です。

ベテランの意見は、とても大切です。

ただ、

「ベテランが言ったから正しい」

と考えるのは、少し違うと思っています。



そして、もっと怖いのは、

「上司のやり方に合わせること」が目的になってしまうこと。

明らかにうまくいっていない。

視野が悪い。

剥離層がおかしい。

手術が進まない。

それでも、

「先生がそうしているから」

と、そのまま続けてしまう。

これでは、自分の手術になりません。

いつまで経っても、

「誰かの手術を再現しているだけ」

になってしまう。

手術は、最終的には自分で考えて、自分の手を動かして、問題を解決できるようにならなければならない。



もちろん、

「自分のやり方が正しい」

と思い込むのも危険です。

だからこそ、反論するなら根拠を持つ。

これが大切です。

手術前に動画を見る。

同じ術式の動画を何本も見る。

自分の施設だけではなく、他施設の手術も見る。

先輩に聞く。

他院の指導者に聞く。

「この場面では、どうしていますか?」

「ここで出血したら、どうリカバリーしますか?」

「この層がわからなくなったら、どこに戻りますか?」

手術には、技術そのものだけではなく、

コツがある。

そして、

トラブルシューティングにも、ある程度の型がある。

だから、事前に準備しておく。

そうすれば、いざというときに、

「どうしよう」

ではなく、

「ここに戻ればいい」

と考えられる。

これが、自分の手術を作っていくということだと思います。



そして、これはロボット手術でも同じです。

むしろロボット手術では、より意識していいのかもしれません。

プロクターの先生に教えていただく。

これは非常に大切です。

でも、

「プロクターがそう言ったから、それが絶対の正解」

ではありません。

プロクターにも、その先生の流儀がある。

施設にも流儀がある。

術者にも、患者さんにも違いがある。

教えてもらったことを一度自分の中に落とし込んで、

「なぜ、この操作なのか?」

「別の方法はないのか?」

「この症例では、本当にこれが最適なのか?」

と考える。

それが、自分の技術になる。



もちろん、大前提があります。

安全が第一です。

独善的になってはいけない。

危険な操作を「自分のやり方だから」と押し通してはいけない。

経験のある先生の助言を軽視してはいけない。

でも、

安全に配慮しながら、自分の頭で考えることまで放棄してはいけない。

ここは、とても大切だと思います。



手術が上手くなるというのは、

「上手い先生の言うことを、忠実に再現できるようになること」

だけではありません。

最初は、真似る。

次に、理解する。

そして最後は、

自分で判断して、自分で修正して、自分で責任を持つ。

そこまで行って、ようやく「自分の手術」になる。

守破離

だから若い外科医には、あえて言いたい。

空気を読みすぎなくていい。

先輩の顔色を見ながら手術をする必要はない。

ただし、反論するなら勉強する。

自分の考えを持つなら、根拠を持つ。

そして、患者さんの安全だけは絶対に譲らない。

その姿勢があれば、

「先生、それは違うと思います」

と言える外科医になっていい。

いや、

いつかは、そうならなければいけない。

手術は、誰かの正解を覚える仕事ではない。

最後には、

自分の頭で考えて、自分の手で患者さんを治す仕事だから。

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