見出し画像

 HAMBURGER BLUES第11話               名前のない少年と、誰も知らないbeemの過去





朝九時

WAGYU BURGER



古代テクノブルース

小音量

昨日の狂気が

まだ壁に残っている



カラン……



誰も喋らない

珍しい朝だった



黒いパーカーの少年

椅子に座っている

背筋が真っ直ぐだった



Walker

「……」

「いや待て」

「昨日から思ってたけど」

「お前マジで誰なんだ」



少年

「分かりません」



bads

「は?」



cool

「名前ないんですかねぇ」



少年

「昔あったかもしれません」



beem

黙って肉を焼いている



ジュゥゥゥ……



Walker

「出身地は?」



「分かりません」



「親は?」



「覚えていません」



「何歳?」



「多分」



「十二歳です」



Walker

「全部フワフワしてんじゃねぇか!!!」



客A

「モーニング二つ!!」



beem

「了解だァァァ!!!」



客B

「昨日の運動会最高だったぞ!!」



bads

「当然よ!!!」



客C

「五位って微妙じゃね?」



bads

「死ぬ?」



Walker

「毎朝それやるな!!!」



少年

静かに店内を見ている



cool

「……」

「何か不思議ですねぇ」



少年

「ここは」



「変わっていません」



静寂



Walker

「……何?」



少年

「匂いも」



「音も」



「空気も」



「七年前と同じです」



全員

「……」



Walker

「待て」



「七年前?」



「お前十二歳だろ?」



少年

「はい」



「五歳の時です」



beem

肉をひっくり返す音だけが響く



ジュッ……



少年

「黒いバイク」



静寂



少年

「古いVツイン」



beem

手が止まる



Walker

「……店長?」



少年

「黒い服を着た男の人」



「雨の日でした」



cool

表情が変わる



bads

「……」



少年

「和牛バーガーを」



「半分だけくれました」



完全な沈黙



Walker

「……」



「え?」



少年

「その時」



「こう言われました」



ゆっくり

beemを見る



『腹が減った子供に理由はいらない』



ジュゥゥ……



肉の焼ける音だけ



Walker

「……」



cool

「……」



bads

「……」



beem

黙っている



少年

「だから」



「戻ってきました」



「働こうと思って」



Walker

「……」



「店長」



「本当なの?」



長い沈黙



beem

小さく笑う



「覚えてねぇ」



Walker

「嘘つけ」



beem

「毎日」



「色んな奴に飯食わせてる」



「覚えてられるか」



cool

静かに笑う



「覚えてる顔ですねぇ」



beem

「……」



bads

「待って」



「何で誰にも言わなかったの?」



beem

「言う必要がねぇ」



「飯食わせただけだ」



Walker

「カッコつけやがって」



その瞬間

少年

店の壁を見る



古い写真



第一回ベラ地区バーガー祭

七年前



少年

立ち上がる



ゆっくり近付く



指を差す



「これです」



全員

近付く



そこには

若いbeem

そして

隣に

知らない男が写っていた



長髪

カーキ色のコート

左腕が義手

笑っている



Walker

「誰?」



静寂



cool

手が止まる



cool

「……」



beem

目を逸らす



bads

「……何よ」



cool

「その写真」



「まだ残ってたんですねぇ」



Walker

「知ってるの?」



cool

笑わない



「昔」



「一緒に働いてました」



Walker

「は?」



cool

「俺と」



「beemさんと」



「もう一人」



静寂



少年

小さく呟く



「……会いたいです」



beem

「無理だ」



全員

「?」



beem

振り返らない



「もう」



「死んでる」



店内の音が

全部消える



その時

カランカラン!!!



酔っ払い客

「ハンバーガー十個ォォォォ!!!」



全員

「うるせぇぇぇぇぇぇ!!!!」



空気が壊れる



Walker

「いや待て待て待て!!!」



「今すげぇ話してたよな!?」



bads

「死人!?」



cool

「懐かしいですねぇ」



beem

肉を焼く



ジュゥゥゥ……



beem

「仕事しろ」



Walker

「説明しろォォォォ!!!」



少年

初めて

ほんの少しだけ笑う



「……」



「やっぱり」



「ここで間違ってなかった」



古代テクノブルース

静かに流れる



そして

誰も知らない

beemの過去が

少しだけ

開き始めていた



続く

第12話

失われた三人目と、カーキ色の約束

いいなと思ったら応援しよう!

Ainexus 出来るだけ面白い小説を書いていきます よろしければ応援お願いします いただいたチップは物語の為に新しいハンバーガーの研究に使わせていただきます1000話まで目指して頑張ります。