日記:紙芝居をやっていたら作務衣のジジイに絡まれた話
おとといね、超お世話になってる人の結婚式パーティーに行ってきたんですよ
結婚式パーティーっつっても、夫妻の幼少期のホームビデオを延々と観せられたり、リッツに色々なものを載せたりする類のものじゃなく、普通にフェスだった
田んぼと山に囲まれた某所で行われたんだけども、デッケエテントをいくつも設営して、舞台美術とかもバッチリしっかりやって、もちろんPAも入れて、演者がバンド/ソロ含めて何十人という
フードも四か所あったからね
完全にフェス
ビリヤニめちゃくちゃ美味しかったし
至る所で子どもたちが無限に走り回り、大人たちは酒をかっ喰らってよもやま話に花を咲かせ、出演者たちはそれぞれの表現でこのめでたき日を祝福し、ほんとにナイスパーティーでしたよ
オレが10代の頃から知ってるような重鎮オルタナバンドの方もいらっしゃったりして、フェスとしてそもそも豪華だった
デネ、僕はギタリストの宮崎良研くんと『ペガサス団』っていう紙芝居ユニットをやってるんですけども、このたび演者としてオファーいただきまして、日曜日の昼日中から野外ステージで紙芝居やったわけです
これが大変だったですよ
われわれペガサス団は、僕が自作の紙芝居を語り、ギタリストの宮崎くんがそれに即興で伴奏をつけていくというスタイルなのですけれども、まず始まった段階ですでに宮崎くんが三人の子どもに取り囲まれてた
たんに取り囲まれているだけでなく、普通に襲われてた
ヒッチコックの『鳥』みたいになってたもん
宮崎くんはハイテンションの子どもたちになすすべもなく蹂躙されてワチャワチャになっていた
ギターのペグとかもめちゃくちゃいじられまくって、初っ端からすでにチューニングが狂いまくっているという始末
で、なんとか無理くり始めたはいいんですけども、ギターをいじくるのに飽きた子どもたちが、今度はオレのほうに襲い掛かってきました
マジヤバかった
紙芝居の紙とか勝手に抜こうとするし
最終的に紙芝居の舞台を置いてるテーブルの上に子どもが三人とも乗っかって鬼はしゃいでた
もう絵が見えないとかのレベルじゃない
あとで写真見たらほぼ子どもに埋め尽くされててヤバかった
でも紙芝居って始めちゃったらどっかで脱線してリカバリーするのが難しいから、最後までやりきるより仕方ないんですよ
しかもオレの紙芝居ってまあまあシリアスというかそれなりにエモーショナルな話で、すごい真剣にやらなきゃ成立しないんで、めちゃくちゃマジトーンでやるワケですけども
結果として子どもたちがふざけまくっているそのすぐ後ろで、紙芝居を全力でやるおじさんと、チューニングの狂ったギターを弾くおじさんという珍妙な絵面が爆誕した
どう考えても異様すぎる
その日は二本立てだったんですけども、一本目が終わった時点で宮崎くんがチューニングするからっつって『なんか喋って繋いで! 10分ぐらい!』って言ってきた
そんなにチューニングめちゃくちゃになってんのかよと思うと同時に、10分フリートークで繋ぐのはさすがに無理ですよというお気持ち
10分フリートークで繋ぐスキルあったらそもそも紙芝居とかやってねえわ
それでもまぁなんとかふたたびライブをリスタートしたワケですけども
二本目が始まってすぐ、子どもたちも飽きたのかどこかへ消えてしまい、ようやくなんとかギアが入ってきました
オレも宮崎くんもここまでの醜態を取り戻さんとする熱演を見せつけ、よしこのまま突っ走ればなんとかなるぞって思ったクライマックスの矢先、突然怒鳴り声が響いてきた
『やめろ!!』
ん? なんだ? そう思っていると、前列の観客が割れ、作務衣を着たジジイがまるでモーゼみたいに現れた
『やめろっつってんだよ!! 今すぐやめろ!! うるせえんだよ!!』
なんかよくわからないけどムチャクチャ怒っている!
しかもなんかオレたちに向かって怒っているらしい!
とはいえ先ほど申し上げた通り、紙芝居というのは基本的に始めちゃったら最後までやりきらないといけないもので、なんかやたら怒鳴りながらブチギレるジジイを尻目にオレは紙芝居を続けた
そして紙芝居を続けながら必死に考えた
怖いとかじゃなくて、ジジイの正体とその意図が全く掴めなかったから
最初ね、そういう『仕込みギャグ』かと思ったんですよ
昭和プロレス的な乱入エンタメとでもいいましょうか
ブチギレた作務衣のジジイをけしかけるという、誰かがサプライズで仕掛けた仕込みギャグだと思ったの
でもこのジジイがあきらかにギャグの域を超えてブチギレてて、とにかく『やめろ! うるせえ!』の一本槍なんで、さすがに仕込みではないくさい
だから『内容に怒ってるのかな?』って思ったの
なんかよくわかんないけどオレの紙芝居の内容に何かしらジジイの機嫌を損ねる要素があり、それで怒ってるのかなと
そんなふうにジジイを注意深く観察しながらも無視し続けてたら、やがてジジイがオレの真横まで来たんで、これはもうさすがにスルーできないなと思って、ジジイに聞いたんです
『どうしました?』
『どうしたもこうしたもねーよ! うるせえっつってんだよ! 近所中まで音が響いてんだよ!』
『え、あー、じゃあ、客、ではない?』
『そうだよ! 田んぼ突っ切って来たんだよ今! うるせえから今すぐやめろ!』
ジジイは客じゃなかったんだよ
なんかうるさいから文句言おうと思って田んぼ突っ切って会場に裏ルートでアクセスしてきた近隣住民だったという
それがようやくこの時点で判明した
でも判明したとてどーする? っていう
ガチでブチギレてる人が急に目の前に現れると、怖いとかじゃなくてただただビックリするね人間
本当に何も言えなかった
完全にフリーズした
オレは何も言えないまま黙ってジジイの目をまっすぐ見つめ続け、ジジイもただ無言でオレを睨みつけるという状況
友人の結婚式パーティーで、紙芝居をやっている最中に、ブチギレた作務衣のジジイと無言で見つめあう
こんな状況いまだかつて経験したことない
サイケデリックな昼
異変を察知した宮崎くんがオレのところに来て、ジジイに聞いた
『どうしました?』
『どうしたもこうしたもねーよ! うるせえっつってんだよ! 近所中まで音が響いてんだよ!』
また同じくだりが続いた
そしてやはりオレと同様、宮崎くんもどうしていいかわからずにフリーズしてしまい、黙りこくった
無言で見つめ合うジジイとおじさん二人
そしたらそこでお客さんの男性が仲介に入ってくれて、ジジイを言葉巧みに奥へと誘導してくれたのでなんとか事なきを得たというワケだが、あの人がいなかったらオレたちはいつまでも無言で見つめあっていたに違いない
で、小さくなるジジイの後ろ姿を見つめながら、続きをやった
何度もいっているが、紙芝居というのは基本的に始めちゃったら最後までやりきらないといけないものだから
マジスーパー疲れた
終わった後、いろんな人に『ジジイ込みで面白かった』っていわれたけど、正直不本意ですよ!
だってそもそもジジイは込みではないからね!!
ジジイも込みでお出ししたかったわけではないから!!
ライブ中にブチギレた作務衣のジジイが乱入してきたらそりゃ面白いに決まってるだろーが!!
そんなんどのジャンルのライブでも絶対面白くなるわ!!
でもそれはオレたちの功績ではなくてジジイの功績じゃん!!
ジジイがベストアクトって話じゃん!!
ていうか絶対当日の演者の中で、オレらがいちばんデシベル数が低い、音ちっちゃいグループだったのに、オレらにクレームがダイレクトアタックで来たのも納得いかねーし!!
そういうのも込みでなおさら面白くなっちゃってるじゃん!!
あと何人かの友達が『仕込みだと思ったから助けに行けなかった』って言ってて、みんなもそう思っていたのかってなったね。火事のときってこうやって通報遅れるんだなって思ったよ。
友人の山田くんも『オレ、内容に怒ってるんだと思ってた。なんか紙芝居で描かれてる内容と似たような人生を送ってきた人で、だから怒ってるんだと思った。だったらその怒りは止めちゃいけないと思ったから見てた』って言ってたし、あのときけっこう意外とみんなの心がひとつになってたんだなって思った。
いやでも本当にびっくりしたね
ああいうときにライブ力っていうか現場対応力が試されるねほんと
オレはまだまだ未熟者だと思ったよ
久々にブチギレる人間を間近で見たから超びっくりした
あと作務衣をプライベートで着てるジジイも何気に生で見たの初めてだわ
貴重な経験だったよ

