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【短編小説】 カイピリーニャの海

サンダルで、海に続く坂道を駆け下りた。

「急げ〜」
ユミが笑う。

ホルターネックのワンピース。
白い素肌を、連日の陽射しが赤く染めている。

生ざらしの素肌に、小さな汗の粒が光っていた。

太陽は眩しくて、空は痛いくらいの青だ。

脱げそうなサンダルが、覚束無い。

「急ぐぞ〜」
ケンジが笑う。

この街で買ったアロハシャツ。
陽気なヤシの柄が、すこし浮いている。

アロハの下から覗く上腕は白く、
肘下の赤黒い日焼けとは、
鮮やかなコントラスト。

薄いうぶ毛が、光に反射している。

太陽は眩し過ぎて、
空はもう、痛いくらいの白だった。

リオ・デ・ジャネイロ。
コパカバーナのビーチ。

世界でいちばん陽気なビーチで、
世界でいちばん笑い合う。

いま、この瞬間が何色に見えるかな。

頼んだカイピリーニャを手に、
僕たちはビーチで肌を焼く。

口に含むと、ライムの香りと蒸留酒の味わいが広がる。
スッキリした酩酊。

くらくらと溶けていく。
最高に、ご機嫌じゃないか。

カイピリーニャは、あたしの頭を覚醒させる。
ライムの香り。

隣あって寝そべって、
ケンジの笑い顔を見る。

あ、あんなところにホクロあったっけ?
まるで初めて会った人みたい。
あたしはまじまじと、ケンジを見つめる。

酔いが覚めていく。
最高に、ご機嫌になれたら。

出発前。
洗面台の下、棚の奥。
見覚えのない化粧水が、静かに光る。

波のような、透明な液体がチャプン。

ザザン、ザザン……。

風に煽られ、寄せては返す、リオの海。
太陽は痛いくらい眩しいけれど、
見える色は同じ色?

「最高に、ご機嫌だな」
「最高に、ご機嫌だね」

甘くてスッキリしたライム酒の、
グラスの氷が、静かに溶ける。

僕たち、あたしたち。

寄せては返す波音が、
ボサノヴァと共に、海に消えていく。





◆シロクマ文芸部
◆お題「サンダルで」



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