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目をつぶれば、今日が聞こえる|娘と過ごす夏の音【詩】 #シロクマ文芸部

目をつぶれば、今日が聞こえる

目をつぶる。

娘の寝息が、
となりで小さな波になる。

行けなかった海が、
こんなところにあった。

遠くの蝉。
エアコンの低い声。

白くまのかき氷機が
氷を削る、
がりがりという音。

いちごシロップを
好きなだけかけて、
笑った声。

絵本のページをめくる音。
「もういっかい」と
伸びてきた、小さな手。

夏らしい思い出を
つくらなくてはと、
焦る私に。

海へ。
花火へ。
どこか、特別な場所へ。

けれど、
目をつぶってみれば、

今日という一日は
こんなにもにぎやかに、
ここに残っている。

思い出を見つけられなかったのは、
目を開けていた
私のほう。

娘がいつか
今日を忘れてしまっても、
私はきっと思い出す。

寝息の波を。
氷を削る音を。
夏の真ん中で響いた
あの笑い声を。

目をつぶれば、
今日が聞こえる。



あとがき

小牧幸助さんの#シロクマ文芸部 に参加しています。

夏休みになると、娘に何か特別な思い出をつくってあげなくては、と焦ります。

海や花火へ連れていけていないことばかりが、目に入っていました。

けれど、目をつぶって耳を澄ませると、娘の寝息、かき氷を削る音、「もういっかい」と絵本をせがむ声。

何気ない今日のなかにも、残しておきたい夏の音が、たくさんありました。

娘はいつか、この一日を忘れてしまうかもしれません。

それでも私は、今日の音を覚えていたい。

そんな気持ちを詩にしました。

お読みいただき、ありがとうございます💖

喜木 拝


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