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くらげ投げ----------------------------❅ミズクラゲ / 2min


肌がじりじり灼かれていくのがわかる。なのに、ざあっと足もとから寒気が這い上がってきた。うつくしい砂浜を埋め尽くす、白みがかった半透明の、水まんじゅうのような物体。──くらげだ。

「ま、ママ……あの子たち、大丈夫なの」

娘が声をひそめた。
視線の先には、娘と同じくらいの子どもたちが、くらげを投げて遊んでいる。

くらげを投げて遊んでいるのだ。


夫も私も言葉を失った。

その日私たち家族は、水上アスレチックに来ていた。沖合に大きなふわふわのアスレチック遊具が浮かんでいて、そこで遊ぶのだけれど、数分かけて泳いでいかなければならない。
あの、くらげのうようよいる海を。


「ちょ、……俺聞いてくるわ」

夫はそういうと、スタッフさんのところへ向かっていった。


子どもたちは数人でボートに乗っている。砂浜に打ち上げられたボートには、海水がとっぷりと入り込んでいて、その中には何匹ものくらげが漂っていた。
彼らはきゃらきゃら笑いながら、素手でぶにょんとくらげをつかみ、砂浜へ放った。



「なんか……毒、ないっぽい」

ややあって戻ってきた夫が言う。

「ミズクラゲっていう種類なんやけど、毒が弱い?って言われた。ないわけじゃないけど、被害はほぼないんやって」

「えー……」

それでもかなり抵抗があった。



やがて、沖合へ向かうときがやってきた。子どもたちといっしょに慎重に進んでいくと、時おり、ぶにょん、と手に弾かれるような感覚があった。ぞわぞわしたけれど、確かに痛くはない。

何度も海に落ちるうちに、だんだんと、くらげが気にならなくなってきた。
すーっと周りの風景の一部に溶け込むように。手に当たるあの弾力も、ぷるんとした水まんじゅうのように思えるようになってきた。



あれから一年が過ぎた。

私はふと、本当にミズクラゲに毒はなかったのかと調べてみることにした。

結論から言うと、毒はある。

そもそもくらげの毒を受けるというのは、触手についた毒針に刺されることによって起こるもの。ミズクラゲは、毒針がとても短い。だから、毒がないわけじゃなくって、単に痛みを感じにくいのだという。刺されてもかゆみ程度で済むようだ。

小さな子どもだったら痛みを感じることもある。
だから、触手には触らないほうが無難なのだ。


それでも、知識だけではきっとわからないこと──必要以上に怖がらなくていいということを学べた夏だったのだと思う。







両親の離婚がきっかけで東京から父親の実家である離島に引っ越してきた璃子は、すべてがうまく行っていなかった。学校でも浮いている。
璃子が浜辺を歩いていると、学校の子たちがくらげを投げて遊んでいた。そこに”クラゲババア”と揶揄される地元の不審者が現れる。
あまりにもひどいあだ名に眉をひそめていた璃子は、逃げ惑う子どもたちに取り残された。彼女は璃子に「海に近づくと”ずくずく様”に連れていかれるよ」と釘をさす。
それからしばらく経ったある日。”クラゲババア”から逃げる子どもたちに押された璃子は、転んで岩に頭をぶつけてしまう。
目を覚ましたとき、そこは”クラゲババア”の家で──。

#ビンゴエッセイ


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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡