【掌編小説】海のカケラ
あるときは森にいた。
山にいたこともある。
そのあと川に流された。
そして海を漂った。
やがて砂浜に辿り着いた。
そのまま、じっとしていた。
自分が取るに足らない存在だということは、
分かっていた。
灰色で、何の変哲もない、この体。
誰に見向きもされない。
そうして長い年月が経ったあと、体温の高い指が、自分をつまみ上げた。
そのまま、大きな瞳に見つめられる。
緊張で、硬い体をさらに硬くさせる。
「お父さん見て、この小石きれい!
海みたいに青くて、きらきらのカケラが
入ってるよ!」
小さな男の子の声に、びっくりする。
自分が青いカケラを持っていることなんて、
知らなかった。
鏡なんて、見たことがなかったし、誰も
教えてはくれなかったから。
そのまま、小瓶にそっと入れてもらった。
やがて小瓶は、海の見える窓辺に置かれた。
青い海に向かって、ちょっとだけ胸を張る。
波音は、ずっとずっと優しかった。

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「不運だけど不幸じゃない」をテーマに、頭の中の考えや記憶、気持ちなどをぽこぽこと形にしています。ひとりじゃないんだなと思っていただけたら嬉しいです!