整理がつかない
白玉みたらしあんと黒ごまのパンナコッタが作りたい。
ふわふわのシフォンケーキをキャラメリゼして、たっぷりの生クリームを挟みたい。
格闘技の強さは足の強さだから、走りに行きたい。
無限のスタミナが欲しいから、坂道ダッシュがしたい。
時間が許すかぎりずっと練習したい。
強くなりたい。
……なのに、なぜか出来ない。
頭の中には、甘い香りと激しい呼吸の熱量を持った私だけの私のためだけの「やりたいこと」が、せきを切ったように溢れている。
本当は分かっている。
私が今、本当に守りたいのは、この家に響く子ども達の笑顔だ。子ども達と過ごす今この瞬間を、何よりも大切にしたいから、私は自分の「やりたいこと」を後回しにする。
逃げているんじゃない、私は選んでいると思いたい。
なのに、それでも頭の片隅で、燻る熱が気になる。選んでいるのに逃げているように感じる。
気づけば私は、バンテージを巻く代わりに、家事をしている。「日常のしなきゃいけないこと」という安全な場所に逃げ込むように、わざわざ小さな雑務を見つけては、淡々と時間を埋めていく。本当にやりたいことから、器用に目を背けながら。
本当にやりたいことってなんだろう?大切にしたいものが多すぎる。選べない。全部選んでやりとげる強さがほしい。
ふと、スマートフォンの画面に目を落とした。
ロック画面の中で、愛猫がのんびりと肉球を見せてくれている。画面の隅には「33℃」という、外の容赦ない暑さを示す数字。
…私は、もう三日もお風呂に入る気力がない。
「限界を迎えている」「そんな自分も愛してあげよう」なんて、優しい言葉で自分を甘やかすつもりもない。
ただ、強くなりたい。
なのに、出来ない。
その矛盾の理由も、解決策もわからない。
私は今日も明日も自分の混沌と向き合わなければいけない。
