Claude Code講義で分かった、AIエージェントを作る前にやること
先日、「Claude Codeで業務を自動化する最初の一歩」という初心者向けの講義を聞きました。
講義では、あらかじめ用意されたスキルとサブエージェントをClaude Codeで動かすハンズオンがありました。テーマを一つ伝えると、調査、レポート、スライド作成を担当するAIが順番に動き、複数の成果物を作っていきます。
短い指示から、数分で資料ができる。AIエージェントの可能性が目に見える場面でした。
ただ、講義を最後まで聞いて、私に最も残ったのは派手なデモではありませんでした。
それは、最初からスキルやエージェントを作ることを目的にしない、という考え方です。
まずAIとやり取りし、期待する成果が出るまで直す。うまくいった仕事の進め方が見つかったら、そこで初めてスキルにする。
この順番を飛ばしてはいけない。AIエージェントを仕事で使ううえで、本当に重要なのはここだと感じました。
一言で資料ができても、仕事が完成したとは限らない
ハンズオンでは、配布されたフォルダをClaude Codeで開き、短い依頼を送るだけで処理が始まりました。
調査を担当するAIが情報を集め、別のAIがレポートへまとめ、さらにスライドを作る。作業ごとに担当を分け、一つの流れとして進める仕組みです。
Claude Codeは、ファイルを読んで編集し、コマンドを実行できます。公式ドキュメントでも、繰り返す手順はスキルとしてまとめられ、特定の仕事は専用のサブエージェントへ任せられると説明されています。
しかし、動いたことと、仕事として完成したことは同じではありません。
調査結果の数字は正しいか。使った情報は新しいか。スライドの主張は相手に合っているか。見栄えが整っていても、内容まで正しいとは限りません。
講義でも、生成物には誤りが含まれる可能性があるため、内容を確認する必要があると説明されていました。
一回のデモで成果物が出ると、つい「ここまで自動化できた」と考えたくなります。しかし実務では、その後に人間が修正し続けているなら、まだ安定した仕事の型にはなっていません。
自動化できたのではなく、最初の試作品ができただけです。

スキルにするのは、うまくいった後
質疑応答で印象に残った質問がありました。
自分の事業や仕事に合ったスキルとサブエージェントを、どう作ればよいのかという質問です。
回答の要点は明快でした。
スキルを作ること自体を目的にしない。まず通常のやり取りで、理想の成果物が出るまでAIと調整する。うまくいったら、その手順をスキルにする。
私は、この順番に納得しました。
業務の進め方が固まっていない段階で自動化すると、曖昧さまで固定されます。何を入力するのか、どの資料を優先するのか、どこで確認するのかが決まっていなければ、AIは毎回それらしい判断で空白を埋めます。
そして自動化は、その不安定な判断を速く、何度も繰り返します。
逆に、人間とAIで一度仕事を完成させ、修正の過程を残しておけば、再利用できる材料が見えてきます。
どの資料を参照したか
どの順番で処理したか
何を満たせば完成か
どんな場合に人間へ戻すか
どの確認を毎回行うか
この部分をスキルとして保存すれば、「前回と同じように」が人の記憶や長いチャット履歴だけに依存しなくなります。
スキルとは、魔法のプロンプトではありません。うまくいった仕事から取り出した、再現可能な手順です。

私なら、試行・標準化・自動化の順で進める
Claude Codeで業務を自動化するなら、私は三つの段階に分けます。
最初は「試行」です。
実際の仕事を一件だけ選び、AIと一緒に進めます。入力資料、期待する成果物、修正した箇所、確認が必要だった判断を残します。この段階では、手作業が多くても問題ありません。
次が「標準化」です。
同じ仕事をもう一度行い、前回の手順で再現できるか確かめます。例外が出たら、どの条件で人間へ戻すかを決めます。担当者が変わっても同じ基準で確認できるところまで、手順と完了条件を言葉にします。
最後が「自動化」です。
安定した手順をスキルへまとめ、必要なら調査、作成、検査などをサブエージェントに分けます。文字数、ファイル名、必須項目、リンク切れのように機械で確認できる条件は、自動検査へ移します。
一方、読者に新しい価値があるか、顧客への提案として妥当か、公開してよい情報かといった判断は、人間に残します。
たとえば、note記事の作成も同じです。
いきなり「良い記事を書くスキル」を作るのではなく、まず一つの記事を完成させます。どこが自分らしくなかったか、どの事実を確認したか、過去記事と何が重なったかを記録する。
その後、文字数の計測、リンク確認、旧版を上書きしていないかの検査、根拠が必要な表現の抽出などを再利用できる手順にする。記事の主張や著者の声は、最後に人間が判断します。
全部を自動化するのではなく、再現できる部分だけを自動化する。この切り分けが重要です。
最初に選ぶ仕事にも条件があります。
人間が正解を判断できること。失敗しても元へ戻せること。外部へ公開、送信する前に止められること。そして、同じ手順を何度も繰り返していることです。
社外へ送るメール、会計処理、人事評価のように、間違えたときの影響が大きい仕事を、いきなり完全自動にする必要はありません。まずは社内向け資料の下書き、定例レポートの整形、ファイルの一覧作成など、結果を人間が確かめやすい仕事から始めます。
小さな一件で試し、間違い方を知ってから対象を広げる。その過程で見つかった例外こそ、次のスキルに入れるべき材料になります。
AIにレビューさせても、責任までは渡せない
講義では、生成物を別のAIに専門家の立場でレビューさせる方法も紹介されていました。自分だけでは見落とす問題の候補を出す方法としては有効です。
ただし、AIがAIを確認したから正しい、とは言えません。
作成側とレビュー側が同じ前提を誤解することもあります。専門分野の知識が不足している人が、AIのもっともらしい指摘を正しく評価できない場合もあります。
AIレビューは品質保証ではなく、確認範囲を広げる補助です。
Claude Codeには、読み取り、ファイル変更、コマンド実行などに対する権限設定があります。公式ドキュメントでも、重要なファイルへの変更や実行コマンドを確認し、扱う範囲を制限することが推奨されています。
何を自動で許可するか。どの操作は毎回確認するか。何が起きたら停止するか。
エージェントを増やす前に、この境界を決めなければいけません。AIは成果物を作れても、その成果物を使うことで生じる責任までは引き受けられないからです。

AIエージェントは、仕事の設計を映す
講義の実演だけを見ると、スキルやサブエージェントを増やすことが、活用の深さにつながるように見えます。
しかし、講義を通じて見えたのは、その手前にある仕事の設計です。
良い仕事の進め方が分からないままでは、良いスキルは作れません。完成の基準が曖昧なら、エージェントもどこで止まればよいか分かりません。人間の判断が整理されていない業務を、そのままAIへ渡しても安定しません。
AIエージェントは、曖昧な仕事を自動的に整理してくれる万能な社員ではありません。むしろ、自分たちの業務で決まっていないことを映し出す存在です。
前回の記事「Claudeデスクトップアプリ講義|『答えるAI』から『働くAI』へ」では、Claudeが「答えるAI」から「働くAI」へ変わり、どこまで任せるかを人間が決める必要があると書きました。

その次に必要なのは、エージェントをたくさん作ることではありません。
まず一つの仕事を、人間とAIで最後まで完成させる。うまくいった理由と、失敗した条件を残す。そして、再現できる部分だけをスキルへ変える。
Claude Codeで業務を自動化する最初の一歩は、コードを書くことではなく、自分たちの仕事を観察することから始まります。
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