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元グミと私〜「ついで」の代償

血迷った、としか言いようがない。

「ザクザク食感」
パッケージにはそう書いてあった。
噛むたびに歯にまとわりつく。
グミのあの弾力は、どこにもない。
うん、これはグミではない。
グミをグミでないものにした何かだ。

なぜ私はこんなものを買ったのか。
グミを食べたかっただけなのに。

以前にも見かけたことはあった。でもそのときは買わなかった。

なぜなら、そのときの私は、冷静だったから。

今回は、慌てていた。
夫が別の店で買い物をしている間に、私は100均で詰め替え用のボトルを一本買わなければならなかった。
用事はそれだけのはずだった。

でもせっかく来たのだから。

そう思ってしまったのが運の尽きだった。

100均とは、人間の「ついで」を刺激するために設計された場所だと思う。一歩踏み込むと、棚という棚が「そういえば」を差し出してくる。

そういえば洗濯ネットが破れていたんじゃないか。
そういえば布団バサミが一個割れたままだった。
そういえばこのサイズのジップ袋、家にあったっけ。
そういえばこの形のスポンジ、使いやすかった。
あ、これ前から欲しかったやつじゃないか。

気づけば両手がふさがっている。
詰め替え用ボトルを買いに来た人間の手が、なぜ洗濯ネットと布団バサミと正体不明の便利グッズでいっぱいになっているのか。
一つ買うつもりだったのに、気づけばせっせと買い物カゴまで取りに行く羽目に。
でも全部必要なものだ。必要なものを買って何が悪い。
むしろ褒めてほしい。生活力の結晶だ。

そしてそういう状態のとき、人間の判断力は著しく低下している。

あぁ、せっかく来たんだから、何かおやつを。そうだ、帰りの車で大好きなグミが食べたい。
でも夫はもう買い物が終わっている頃だ。急がなきゃ。
だけどせっかく来たのに大した収穫がないのも——いや十分ある、両手がふさがっているのだから——でもやっぱりグミくらいは買って帰りたい。
まだ食べたことのない新作のグミ、なにかないかな。
探すと——あ、あった。

フリーズドライ製法のグミだと?

これ、食べたことない。
あれ、これグミなのか?

うーん、違うような気もする。
でも安全策として、いつものレモン味のグミも一緒に買えばいい。
二個も無駄遣いかな。まあいっか、急がなきゃ。

この「まあいっか」が、すべての元凶だった。


帰りの車の中で、例のグミは忘れられた。
安心と信頼のレモン味グミを迷わず食べた。
家に帰ってから思い出した。
あ、もう一種類買ったんだった。

袋を開けて一粒取り出して眺めてみる。
カチコチでザラザラしていた。グミ感ゼロ。
えいっと口に放り込む。そいつは口に入るや否や、私の上顎を攻撃した。

痛い。

表面の粗いざらつきが、想像以上に痛い。
おそるおそる噛む。
口の中で水分を吸って柔らかくなることもなく、ガリッと乾いた音がした。そして噛んだ歯にすかさずまとわりついて、離れなかった。
なかなか離れない。執着が強い。

元グミとは思えない粘りだ。

サイアクじゃないか。
考えてみれば当然のことだった。グミとは弾力を楽しむ甘いものだ。
それをフリーズドライする、ということはグミの命である弾力を排除した、かつてグミだっただけの塊に変化させる、ということだ。
要するに、グミの持ち味を全部捨てた結果だけが残っている。

炊いたごはんが服についてカピカピになったやつ、あれを食べるようなものだ。それはごはんでもなく、煎餅でもなく、カピカピになった元ごはんだ。

そもそも、これのターゲットは誰なのだろう。
グミ売り場に紛れて陳列させてはいけないのではないだろうか。
グミを求めている人は、これを買わない。
グミが苦手で煎餅が好きな人?
でも甘い煎餅より醤油味が好きなはずだ。そもそもグミが苦手だったらグミ売り場にはこない。
果実の風味がする煎餅を食べてみたい層? なんだその層、聞いたことがない。
存在するのかもしれないが、私はまだ出会ったことがない。
強いて言えば「噛み砕きやすい飴」を求めている人だろうか。

でも一番の怒りは、そこではない。

私はこれまで、何度かこのフリーズドライグミを見かけるたびに、ちゃんと見送ってきた。
冷静に、これはグミではないと判断してきた。
その判断は正しかった。今日もそれができたはずだった。
なのに、100均の「ついで」にやられて、夫を待たせる焦りにやられて、洗濯ネットと布団バサミと便利グッズでいっぱいのカゴを抱えた状態の私は、あっさり陥落した。

もう一個をコロロの巨峰味にすればよかった。
それだけで、完璧だったのだ。

ちょっと硬めの爽やかなレモングミをゆっくり噛んで、なくなるや否や、レモンの風味が残るうちに、コロロのグレープをそっと放り込む。
レモンの余韻の上にふわりと乗る、やわらかくはじけるグレープ。
弾力の硬さが違う二種のグミが、順番に口の中で役割を果たしていく。
それは完璧なグミライフだ。

すぐそこにあったはずの、完璧なグミライフが。


例のグミよ、君が悪いわけではないのかもしれない。
君を買った私が悪い。
でも私が悪くなったのは、100均のせいだ。
あの場所は人間をおかしくする。
今も歯にくっついたまま、私は責任の所在を探している。


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