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鎌田という男について語りたい【平場の月】

※ネタバレ注意


鎌田という男が実際に出てくるシーンは二回のみ。

成田凌の自然な、柔らかい関西弁も素晴らしく良かった。私自身関西出身のため、関西弁の役には厳しい眼差しになることが多いが、鎌田の関西弁はとても流暢で、人の日懐にヌルっと入るのが得意な人間のしゃべり方だなと感じた。

一度目は青砥と須藤が一緒に帰っていた時
二度目は青砥が先にアパートについた時

二度目の登場で鎌田という男がどんな人間なのか、あの映画に色濃く残す場面となっている。

鎌田は須藤が元夫と死別したのちに入れあげた男として登場する。

でも鎌田はお金をせびるどころか、お金を返しにくる。

本作品は全体を通してリアルな人間を如実に描いているが、私はとくに鎌田が一番リアルだと感じた。

現実の人生にも、悪者はそうそういない。
みんな、自分の可愛さに負けて、相手をないがしろにしてしまうことはあるが。

鎌田という男も、きっとそのような人間の一人だったのだろう。
鎌田の登場シーンは短いが、その短いシーンでもどういう男なのかわかるように描かれている。
お金を返しに来た、という鎌田が渡した封筒にはしわくちゃのお札が入っていた。よくは見えなかったが、そんなに枚数も入っていなかったように見える。きっと、須藤が鎌田に使ったお金と比べると何の足しにもならないのだろう。

そして、青砥はその封筒をみて、「こんなことしたらあなた須藤に嫌われますよ」と伝える。

そこで、鎌田は封筒を受け取り、「もう二度ときませんから。」と言う。

この一連の会話こそ、鎌田という男をよく表している。

鎌田はここで「嫌われてもいい。ただ、お金を少しでもかえしたいんだ」とは言わないのだ。

なぜなら、鎌田は自分の罪悪感を消すためだけの行動だったから。須藤を思いやる気持ちが0%というわけではないが、それでも青砥の言葉をうけて引き下がったのは、やはり自分の可愛さに負けたのだろう。

鎌田は封筒を渡したとき、「僕結婚するんです。だからその前に少しでも」といって青砥に語り掛ける。
そう。須藤に申し訳ない気持ちが先に来たのではない。自分が結婚する前に、自分の過去の禊を少しでも祓いたかったのだ。

なんたる自己中心的な考え、と腹が立ちそうになるのだか、そこまで怒りが沸き上がらない理由は、鎌田が須藤を正しくとらえていたからだと感じている。
青砥に中学時代の須藤を訪ねた際、

「なんというか、太い感じ?」
と答えた鎌田を、私はなんだか憎めない。




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