「外国人実習生から教わった、″栽培技術以外″のこと」
4月から農業実習に通い始めて、また一つ、農業への見方が変わりました。以前の記事でも触れましたが、お世話になっている実習先では多くの外国人技能実習生の方々が働いています。
農業を始める前の私は、「農場では経営者が従業員と一緒に作業をし、現場で細かな指示を出す。従業員は、その指示に従って働くもの」というイメージを持っていました。しかし実際には、想像していたよりもはるかに現場判断に委ねられて動いていました。
◾️現場リーダーを中心とした作業体制
初めて実習へ向かった朝。デスクワーク中心の生活から一転し、体力にも、初めての作業にも不安がありました。しかし、自己紹介の際に皆さんが笑顔で迎えてくれ、少しだけ肩の力が抜けたことを覚えています。
その中で紹介されたのが、約5年間この農場で働いているベトナム人の現場リーダーでした。一通りの紹介が終われば、その後は経営者の方と一緒に現場へ向かうものだと思っていましたが、実際には、現場リーダーと外国人スタッフの方々だけで、収穫作業へ向かうことになりました。
「何十棟ものハウスがある中で、経営者が現場にいなくても、本当に回るのだろうか」そんな疑問を持ちましたが、経営者の方はインカムで大まかな指示を出し、その後の作業の流れや細かな判断、スタッフへの指示、さらには始業・終業時刻の判断まで、現場リーダーに任されていました。
「作業内容を数字で管理し、現場は育成したリーダーを中心に任せている。だからこそ、自分は経営の仕事に集中できている。」
後から伺ったその言葉が、とても印象に残っています。任せられる組織だからこそ、人も、農場も、成長を続けられる。組織経営では当たり前のことかもしれません。しかし私は、農業も同じように組織として動いていることを、実習の最初の段階で初めて実感しました。
◾️外国人実習生という言葉への思い込みが崩れた
実習初日の収穫は朝6時からスタート。作業が始まると、熟練したスタッフの方々と自分との差を、すぐに痛感しました。私は遅れないように焦りながらも、一粒ずつ状態を確認し、何度も後ろを振り返りながら慎重に収穫していました。
一方で、スタッフの方々は迷いなく手を動かし、次々といちごでかごを埋めていきます。後から収穫した場所を見返しても取り残しはなく、かごの中には真っ赤ないちごがサイズ順に綺麗に並べられている。収穫だけではありません。パック詰めでも、等級を一瞬で見極め、迷いなく手を動かしていく。体力面でも、私は作業についていくだけで精一杯なのに、皆さんは会話をしながらでも手早く作業を進めていました。
私はそれまで、「外国人技能実習生」の方々に対し、言葉の壁もあり、自分が直接仕事を教わる姿は想像できていませんでした。しかし、その認識はすぐに変わりました。目の前の方達は現場を支えるプロフェッショナルであり、自然と必死で技術を学び取っていきたいと思うようになりました。
◾️人を見て、教え、任せる姿勢
さらに印象に残ったのは、人への接し方です。私が慣れない作業で手を止めると、すぐに気付いて近くまで来てくれます。
まずは、実際にやって見せる。
次に、私にやらせてみる。
少しだけ、その様子を見守る。
そして大丈夫そうだと思うと、「OKね!」と力強く言い、笑顔で自分の持ち場へ戻っていきます。逆に、初めての作業がうまくできず、私が謝った時には、「大丈夫よー。」と、本当に優しい声で返してくれます。
間違えたら、その場ですぐにやって見せて直してくれる。できるようになれば、安心して任せてくれる。そこにあったのは、人に向き合って育てる基本的な姿勢であり、私自身、その姿勢に何度も助けてもらっています。
◾️一緒に働く仲間になっていく
最近では、機械作業なども含め、他のスタッフの方とペアで作業する機会も増えてきました。最初は教えてもらうばかりでしたが、最近では少しずつ息が合うようになり、仕事の楽しさも増えてきました。
休憩時間には、仕事以外の話もします。最初の頃、インドネシア出身のスタッフの方に、「日本の夏とインドネシアでは、どちらが暑いですか?」と尋ねると、
「インドネシアの村より暑いよ。」
と、ニヤッとしながら答えてくれました。
他にも故郷での生活、小さい頃に毎日のようにしていた釣りの話になった時などは、とても嬉しそうな表情を見せてくれました。そうした時間を重ねるうちに、「外国人技能実習生」などという一括りの言葉ではなく、一緒に働く一人一人の仲間だと自然に思えるようになっていることに気付きました。
◾️人に任せられる組織の強さ
実習前の私は、「外国人技能実習生」という言葉に対し、その先にある一人一人の働く姿にまで想いが至っていませんでした。しかし大切なのは、国籍など表面上のことではなく、仕事に向き合う姿勢。その積み重ねが信頼となり、新たな仕事を任されるようになっていくこと。
実際に実習先では、この体制が機能し始めたここ数年、毎年のようにハウスを増設し、販路開拓も進めていると伺いました。
人に任せられる組織は強い。
私はそのことを、農業の現場で改めて実感しました。
◾️いつか、自分たちの農場でも
来年4月からの新規就農を目指し、今は栽培技術を学びながら、農地を探す日々です。ただ、実習先で学んだのは栽培技術だけではありません。いつか人を雇う立場になった時、「ここで働いて良かった」と思ってもらえる農場をつくりたいという目標も出来ました。
人を見て、教え、信頼し、任せる。
その積み重ねが、人を育てる。
人が育つから、組織が強くなる。
この実習で見た景色を、いつか自分たちの農場でも実現したいと思います。
※来年春の新規就農に向けて、研修期間中の学び、会社員時代の振り返り、暮らしの変化をこのnoteに記録しています。良ければフォローして、いちご農家になるまでの過程を見守っていただけると嬉しいです。
