ベトナム出版業界の魂と翼。
■政府は新時代の出版活動を強化。
・最近のニュース、「政府は新時代の出版活動を強化、30年迄に国民の年間読書量7冊以上に、全出版社が電子出版に参加」。
・チャー副首相は「新時代の出版活動におけるベトナム共産党の指導力強化に関する書記局の指示第4号の実行計画を定めた決定第1062号に代行で署名した」。この計画は「出版産業を価値創造エコシステムの中核を担う経済・技術分野として発展させることを目指している」。
・同計画によると「2030年までに1~2つの主要な出版・メディアグループを形成する。また、出版能力を1人当たり年平均6~6.5冊とし、国民の読書量を同7~8冊に引き上げることを目標とする。これに向け、教育訓練省は読書を小学校から中学校までの選択科目とする研究を進める」。
■出版プロセスにDXを応用する。
・全ての出版社が電子出版に参加し「出版プロセスにデジタルトランスフォーメーション(DX)を応用する。電子出版物が年間出版タイトルの13~15%を占めるようにする。これに伴い、文化スポーツ観光省は出版業界のデータベース構築や出版社のDXロードマップ展開を支援する。さらに、科学技術省は電子出版活動に役立つ技術インフラやデジタルプラットフォームの開発を主導する」。
・2045年までのビジョンとして「ベトナムの出版産業を東南アジアおよび国際的に競争力を持つ先進的なデジタルコンテンツ産業へと発展させる。これにより、出版活動を文化生活の重要な柱とし、知識の発展や学習社会の構築に貢献することを目指す」。
・国際協力の強化についても言及されており「ベトナムの出版物150~200タイトルを毎年外国で翻訳・発行し、出版・著作権市場を20~30か国・地域に拡大する計画となっている」。
■肝心のコンテンツ(ソフト面)はどうなのか。
・余談、本報道では、出版業界のDX化などハード面(インフラ・プロセス)の強化を主軸としているが、では肝心のコンテンツ(ソフト面)についての言及が記事構成内容のメインでないようだ。計画には「国際的な競争力」への言及はあるが、どのようなコンテンツがベトナムのアイデンティティを確立し、世界を魅了するのか、という具体的な戦略・手法については、今後の政策実行過程に委ねられるのだろう。
・ソフト面のコンテンツは、「読まれる」、「愛される」、そして「キラー」という要素を持ち合わせる必要があり、そのためには、ベトナム独自の文化資源に加えて、他国との交流による知見の融合が不可欠であることと察している。現在のベトナム出版市場は成長途上にあり、課題として挙げられるのは、以下の3点といわれている。
【ベトナム出版市場、3つの課題】
-ジャンルの偏り/翻訳出版物が依然として市場の大きな割合を占めており、自国発のオリジナルコンテンツ(特に若年層向けのエンターテインメントや文芸)の育成が急務となる。
-収益モデルの不透明さ/電子出版が13~15%を目指すとあるが、著作権保護意識の向上と、デジタル収益モデルの確立が、作家のモチベーション維持の鍵となる。
-国際市場への適合性/輸出対象を20~30ヵ国へ拡大するとありますが、単なる翻訳ではなく、現地の文脈に合わせた「ローカライズ力」が問われる。
・ちなみに日本は、漫画、ライトノベル、あるいは「私小説」のような独自のジャンルを世界的なブランドへと成長させてきた。例えば、ベトナムが日本出版業界と連携することで、以下の可能性があると考えられる。
【日越出版業界が連携すれば】
-共同制作のプロトコル/日本の編集者による「ストーリーテリング研修」などを通じ、読者の感情を動かす構成術を学ぶ。
-インフルエンサーとの連携/日本の「聖地巡礼」文化のように、ベトナムの文学作品と観光資源を結びつけるクロスメディア展開のノウハウ共有。
・世界知的所有権機関(WIPO)の報告や、ベトナム出版局のデータによると、電子書籍市場は年率成長率(CAGR)で二桁成長を見せているが。ハードの成長にソフトの供給が追いつかなければ、その需要は海外コンテンツに吸収されてしまう。そう、要するに「国民の年間読書量を7冊へ」という目標は、コンテンツの質が伴わなければ達成困難なのだ。逆に言えば、「ベトナムの日常を切り取った、心を揺さぶる物語」 が供給されることで、読書は単なる「学習」から「文化的な快楽」へと変容していくだろう。
・ベトナムの出版業界が、政府主導のデジタル化という強力な「翼」を得た今、そこにどのような「魂(ソフト、コンテンツ)」を吹き込むのかが問われているーーー異文化との交流を通じ、ベトナムの伝統や現代の息吹が新しい形で再構築されたとき、それは東南アジア、ひいては世界を熱狂させる「キラーコンテンツ」へと進化していくだろう。私は、そんなベトナム発の心震える物語を手に取り、夢中になって読み耽る日を心から夢見ている。
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