ベトナム人に見る、仕事=人生の全てではない。
■職場のストレス度、ベトナム13%で東南アジア最低。
・最近のニュース、「世界の職場・従業員意識調査より、職場のストレス度、ベトナム13%で東南アジア最低、日本39%」。
・米国の世論調査・コンサルティング会社ギャラップ発表した「『世界の職場の従業員意識調査』の2026年版によると、調査前日に1日の大半でストレスを感じたベトナムの労働者の割合は13%にとどまり、東南アジア地域で最も低い水準となった」。
・同レポートによると「ベトナムの労働者がストレスを感じる割合は直近の調査で13%まで低下し、2010年以降で最も低い数値となった。東南アジア全体の平均は25%で、旧ソ連諸国(21%)に次いで世界で2番目に低い水準だ」。
・同地域内で最もストレスレベルが高いのは「フィリピン(50%)で、次いでミャンマー(47%)、シンガポール(43%)と続く一方、ベトナムに次いで低いのはインドネシア(14%)だった」。ギャラップは「ベトナムのストレスレベルの低さについて、企業文化や労働者の期待水準、仕事のプレッシャーに対する受け止め方の違いが反映されている可能性があると分析している」。
■エンゲージメント(会社への愛着や仕事への熱意)が高い労働者の割合9%。
・生活の質に関しては「ベトナムの労働者の59%が現在の生活が『良い状態』にあると回答し、東南アジア平均(36%)を上回った。さらに、同地域では、新たな働き口を見つける好機だと考える労働者の割合が64%に達し、労働市場に対する信頼感で世界首位となっている」。一方で「ベトナムにおいて仕事に対するエンゲージメントが高い労働者の割合はわずか9%にとどまり、地域平均の25%を大きく下回る結果となった」。
・ギャラップは「一般にストレスが長期化すれば労働者の燃え尽き症候群や満足度の低下、生産性の悪化を招きやすいと指摘している。企業に対しては、リーダーシップの育成や前向きな職場環境の構築、従業員のメンタルヘルスを支援する施策の拡充などに投資するよう提言している」。
・なお日本の調査結果を見てみると「労働者のエンゲージメントは世界平均の20%を大きく下回る8%にとどまる。調査前日に1日の大半でストレスを感じた割合は39%で、生活が「良い状態」と答えた割合も31%にすぎず、特に仕事へのエンゲージメントや生活評価の低さが課題として浮き彫りとなっている」。
■暖色のグラデーションに身をおいて。
・余談、本報道にベトナムビギナーの頃の記憶が甦っていた、そして現在でもその感覚は私の中に息づいている。夕暮れ時、東南アジアの陽射しも和らぎ、暖色のグラデーションに染まる頃・マジックアワーのなか定時を迎え退社したことを想い出す。当初「上司より先に帰れない」という日本の謎ルールが染み付き縛られていた私、それを覆す上司の「もう定時だよ」の一言。私は思わず彼に対して、「えっ、もう帰っても良いのですか」と聞き返してしまった。
・定時に帰路につける喜びと幸せを私は噛みしめた。真っすぐ帰宅しないときは、ベトナム人の同僚とローカル酒場で乾杯する、言葉が通じ難くても、嬉しそうに楽しそう笑う彼らを見て、私も自然と笑顔になり、生きていることを実感したものだ。顧客との会食すら重たい気分はなく、スキップしたい気持ちで会場へ伺った記憶も懐かしい。
・ベトナム改正労働法、第105条において通常労働時間は「1日8時間・週48時間以内」と規定され、さらに同条第2項で「週40時間への短縮を推進(奨励)」している点。また同法第107条により残業上限規制が厳格化されている背景がある。そう、ベトナムにおいて「定時退社」は怠慢ではなく、家族や自己投資のための当然の権利として認識された文化が根付いているのだ。
・ある時、会社のベトナム人から「日本人は時間を守らない」と言われたことがある。時間を守る、約束を守ることに心血を注いで日々励む日本人全体が言われているようで、私は憤りを感じた。平静を纏い私は彼に「どうしてそう思うのか」を問うと、「だって日本人は、定時という約束を守らず、いつまでも帰らず、21時、22時過ぎても働いているじゃないか、日本人は時間を守っていない」と言い放たれた。また会社の別のベトナム人仲間からは「なぜ遅くまで仕事をしているのか」、「あなたの人生のプライオリティは何か」、「仕事は定時で切り上げて、家族や仲間、そして自分の時間を大切にしなきゃ。人生はバランスだよ」と一回り以上年下の仲間に人生を指南いただく事もあった。
・どこの国だろうが誰しもが人間社会で生きていくことにストレスを感じるはずだ。しかしベトナムのストレスは、日本で感じていたようなプレッシャーとは本質的に異なる気がしている。日本のストレスは「完璧を求められ、失敗が許されない重圧(責任追及・他罰的・減点主義)」から精神的に追いつめられる。一方、ベトナムは「間違えても笑ってリセットできる(Cứ từ từ=まあまあ、焦らず / 許容と柔軟性)」寛容さから来る開放感が確かに在る。ベトナムの熱意ある社員の割合(熱意度)は9%(日本は8%)と低い。一見ネガティブに見えるが、これは「仕事=人生の全てではない」と割り切れている証左でもあり、仕事への依存度が低いからこそストレスが長期的な燃え尽きや絶望に直結しにくい構造があることと察するーーー職場でのストレス度が現在の13%を超えて、さらに上がったとしても、ベトナムがもっと経済発展を遂げたとしても、かつての仲間が言った「人生はバランスが大切なんだよ」という言葉を、私はこの先も聞き続けたい。
