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路上珈琲と東南アジアのファジー。

■チュングエンコーヒーが路上市場に進出。
・最近のニュース、「チュングエンコーヒーが路上市場に進出、ホーチミンで移動式『スピードコーヒー』店舗展開を開始」。
・地場大手コーヒーメーカーのチュングエングループ傘下のチュングエン・レジェンドが「ホーチミン市内でテイクアウト専門の移動式キオスク『スピードコーヒー(Speed Coffee)』のテスト展開を開始した」。
・同キオスクは「白と緑に塗装された軽トラック仕様で、テイクアウト顧客をターゲットとしている。現在は、ホアフン街区(旧10区)のホアビン劇場の敷地内のほか、ベンタイン街区(旧1区)やビンフン村(旧ビンチャイン郡)など計3か所でテスト運営を行っており、8月末までに10か所へ拡大する計画だ」。

■中国・上海への海外展開も強化。
・主なメニューには「ブラックコーヒー(約150円)やミルクコーヒー(約170円)などがあり、手頃な価格帯に設定されている」。
・チュングエングループは「国内で約1000店舗を展開し、コーヒー市場で売上高シェア首位を誇る。同社は、南中部地方ダクラク省で投資総額約132億5000万円のコーヒー深加工工場の建設を進めるほか、中国・上海への出店など海外展開も強化している」。
・今回の路上市場への参入は「外食頻度を減らして支出を抑えようとするベトナムの消費傾向の変化に対応し、日常的なリピート消費を取り込む狙いがあるとみられる」。

■路上を主戦場に、彼らの法的な立ち位置。
・余談、今回のチュングエンによる移動式店舗『Speed Coffee』の展開は、言わば大手資本による「洗練された路上市場への進出」である。だが、ベトナムの路上を眺めれば、軽トラックのみならず、リヤカーの屋台やバイク一台で忽然と現れる路上軽食屋やカフェが日常の至る所に根を張っている。
・この路上を主戦場とする彼らの法的な立ち位置はどうなっているのだろうか。ベトナムの法律(政令39)では、小規模な行商や路上での簡易飲食販売は「事業登記を免除する対象」と規定されている。つまり、路上で商売を始めること自体のハードルは極めて低い。一方で、食品衛生管理や道路占有に関しては別だ。本来であれば、衛生基準の遵守や特定の禁止区域外での営業が求められ、違反には行政罰金も定められている。
・しかし実態は、多くの店主が厳格な許認可やルールを気にする風でもなく、実に自由気ままに商売を営んでいる。当局の一斉摘発があればサッと姿を消し、去ればまた何事もなかったかのように同じ場所で店を開く。あるべき姿と実態の乖離は大きいが、この「ファジーな共存」こそがベトナムの都市を動かす不可視の経済システムであることが見え隠れする。
・私自身、外出時に冷たいカフェを買い求めたり、時間調整で歩道に置かれた小さなプラスチック椅子に腰を掛けチャダー(氷入りの冷たいお茶)を頂いたり、スポーツの後に新鮮なココナッツを飲み干す等、この路上店舗の存在には日々どれほど助けられているか分からない。
・夕暮れ時、学校帰りの学生たちが弾むような声を響かせ、近所の子どもたちがはしゃぎ回り、お金を握りしめてやってくる。思い思いの飲み物や軽食を買い、歩道や路地にそのまま座り込んで、楽しそうにお喋りをしながら頬張る。そんなありふれた光景を目にするたび「なんて幸せな国なんだろう」と胸が温かくなるのだ。近代化や衛生面の観点から、路上販売への規制や管理が一定程度進むのは時代の必然かもしれないーーーしかし、ルールでガチガチに縛りすぎれば、私が愛してやまないこの街の表情はいずれ失われていくだろう。東南アジア特有の陽気さと強かさ、そして心地よいファジーさを程よく残しながら、愛おしい日常がこれからも街のあちこちで息吹き続けてほしい。路上で飲む、強烈に濃く苦い中に微かな甘みを残すアイス珈琲を味わいながら、私はそんなことを考えている。

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