ほんとうに発達障害なのか?グレーゾーンの人ほど読んでほしい「発達障害ではなく愛着障害」
ASDやADHDなど、発達障害への関心が高まっているように見える。
私自身、このテーマには自分ごととして関心がある。だから、情報や書籍に触れている。そして、noteでも何回か記事を書いてきた。
そんな中、出会った問いが、「近年、発達障害が急増しているのはなぜか」というものだ。
この問いは、すべての人の人生と幸せに関わる、とてもとても大事な問いだった。
今回は、この問いを扱った本を紹介する。『発達障害と呼ばないで』という本だ。
(この記事ではAmazonアソシエイトリンクを利用しています。)
要約
本書のメインメッセージ
著者によるまとめをまずは紹介する。
発達障害が増えているように見えるのは、「愛着障害」まで発達障害であると診断されているからだ、というのが著者の仮説である。そして、遺伝子の影響が大きい発達障害とは違って、愛着障害は、幼い頃の環境によって発症してしまう。
歴史の振り子はとかく両極端に振れがちである。遺伝子がもてはやされる時代には、何でも遺伝子で決まってしまうような話になる。かと思うと、精神分析が隆盛だった時代のように、すべてが親の育て方や幼児期の体験によって決まるような言い方がなされたりすることもある。だが大抵、真実はどちらか一方ではなく、両者の真ん中辺りにあるものだ。
この二、三十年の間、遺伝要因によってほぼ決定されるものと考えられてきた発達障害は、実は少なからず養育要因など環境要因の影響を受けていることが明らかになってきた。スタンフォード大学の研究でみたように、自閉症スペクトラムでさえも、遺伝要因は四割以下であり、双生児間で共有される環境要因が五五%を占めるという報告さえ現れている。ADHDにいたっては、もはや「発達障害」と呼び続けるべきかどうかさえ怪しくなっている。養育要因によって引き起こされる愛着障害でも、発達障害とそっくりの状態を引き起こし得るだけでなく、両者は生物学的基盤においても、かなり共通しているのである。
結局、遺伝子レベルで決定される特性も重要であるが、それだけで決まるわけではなく、幼い頃から与えられた刺激の積み重ねも、その子の発達を左右するのである。そして、中でも重要なファクターが、養育者との愛着が安定したものとして培われるかどうかなのである。
p262
愛着障害とは
愛着障害は、乳幼児期からの環境や気質・経験の積み重ねにより人との信頼関係が不安定になる状態。とくに、乳幼児期の子どもと養育者との間で築かれるべき心理的な結びつき(アタッチメント)が、何らかの理由で十分に形成されないことが主要因である。
「甘える」や「誰かを信頼する」などの経験値が極端に低いため、自分に向けられる愛情や好意に対して、怒りや無関心で応答してしまう状態になる。主な原因は養育者によるネグレクト、無視、無関心、あるいは養育者との離別・死別など。
大人になっても苦しむ人が少なくなく、対人関係の不安や親密さを避ける傾向がある。
発達障害ではなく愛着障害
・発達障害も統合失調症も、遺伝的要因の程度としては同じ。しかし、発達障害のみ、患者数が増え続けている。なぜか?
・とくに、自閉症スペクトラム(ASD)が激増している。日本だけではない。診断率の増加だけでは説明できない。
・発展途上国では少なく、先進国の生活環境で増えている。
・養育環境が遺伝子の発現を左右する。
・愛着障害は養育環境起因の障害だが症状が発達障害に似ている。とくに、軽症のケースほど、愛着障害の影響が大きい可能性が高い。ADHDの場合は、とくに、生まれつきなのか、愛着障害の影響なのか、判別が難しい。
「発達障害」を、本来の定義に戻すことが必要に思える。心理社会的要因の強い、二次的に生じた「発達障害」については、本来の発達障害とは切り離して考えるべきではないだろうか。
養育要因やその他の環境要因が明白なものは、愛着障害」や「二次性発達障害」といった診断名を用い、遺伝子レベルの異常や器質的障害によって生じたものと分けて考えていく必要があるだろう。DSM-Vでは、発達障害は「神経発達障害」と名称も変わる予定である。それは、広がり過ぎた発達障害を、本来の定義に引き戻す一つのきっかけとなるかもしれない。
p79
愛着の仕組み
・愛着は生理的なしくみ。とくに、オキシトシンシステムが関わる。
・愛着には臨界期がある。生後一歳半頃までの養育者との関わりが決定的に重要。母親などの特定の対象との間にのみ、愛着が形成される。
・オキシトシン・システム
オキシトシンは社会性、攻撃性、不安感のコントロールにかかわる。オキシトシン受容体がどの脳領域にどれくらい存在するか、ごく幼いころの愛情環境によって左右される。この形成がその人の生涯にわたる「基本的安心感」や性格を決定してしまう。つまり、幼い頃の環境が第二の遺伝子のように、決定的に重要なのだ。つまり、性格へ大きな影響を与える。
・オキシトシンシステムによって左右される愛着スタイルは、生涯に影響を与える。社会性や共感性、ストレス耐性、恋愛スタイルなど、性格の基盤
・発達障害と愛着障害は、同じ生物学的基盤に問題が生じている。ゆえに、症状が似る。
愛着障害を診断しづらい理由
・そもそも、原因が生物学的基盤レベルで同じなので、症状の区別がとても難しい。
・専門家も、育て方のせいとは言いづらい。ゆえに、愛着障害ではなく、発達障害と診断してしまいやすいバイアスがかかる。診断する側にとっても、親にとっても、辛い問題から目を背けることができる。
科学研究の世界も不思議なもので、ある方向に流れが向かい出すと、それと辻復が合う研究結果が次々と出て、それを"定説”にまつり上げるということが起きる。明らかにブームやトレンドがあるのだ。研究者といえども人の子で、定説に沿った研究結果なら安心して発表できるが、それと矛盾するような結果が出れば、よほど自信がないと、出てきた結果の方を疑ってしまう。先行の研究に、知らずしらず左右されるということも否定できない現実である。
p48
今日使われている発達障害の診断基準は無論のこと、その概念自体も、もう十年もすればすつかり変わってしまっている可能性が高い。発達障害という言葉自体が、廃れ始めているかもしれない。
しかし、その診断を下された子どもの方は、そうはいかない。子ども時代にそうした診断を背負わされたことは、その子の成育史に永久に刻まれたままであろうし、その子の発達や自己観や人生に何らかの影響を与えずにはすまないだろう。だとしても、子どもはただ言われるまま、されるままになるしかない。
p242
親ができること
・診断基準は時代によってコロコロ変わる。
・診断基準に振り回されすぎず、目の前にいる我が子の可能性を信じる。
著者の関連本
本書のアップデート版が↓のようです。読むなら、こちらからどうぞ。
「発達障害」と診断されるケースが急増している。一方で「発達障害」や「グレーゾーン」と診断されながら、実際は「愛着障害」であるケースが数多く見過ごされている。根本的な手当てがなされないため、症状をこじらせることも少なくない。なぜ「愛着障害」なのに「発達障害」と間違えられるのか? 本当に必要な対処とは何か? 豊富な事例とともに「発達障害」と誤診されやすい人たちの可能性を開花させるための方法も解説。「発達障害」の急増が意味する真のメッセージを明らかにする“衝撃と希望”の書。
※本書は2012年に刊行された『発達障害と呼ばないで』のデータや内容を最新のものにアップデートするとともに、大幅に加筆修正を行ったものである。
「人に気をつかいすぎる」「親しい関係が苦手」「依存してしまいやすい」「発達障害と似たところがある」「意地っ張りで損をする」――その裏側には、愛着の問題がひそんでいる! 3分の1の大人が「愛着」に問題を抱えていると言われる今、人格形成の土台ともいうべきこの「愛着」を軸に、生きづらさやうつ、依存症などの問題を克服するうえで、新しい知見を提供する。
一般にも広く認識されるようになった愛着障害。中でも身近なのが、比較的軽度な愛着障害である「愛着スタイル」だ。その中心を占める「不安型愛着スタイル」は、人の顔色や気持ちへの敏感さ、傷つきやすさ、安心感・自己肯定感の乏しさ等を特徴とする。男性の一割五分、女性の二割が該当すると推測され、理解と知識なしには職場や家庭で良好な関係を維持することは難しい。豊富な事例を交え、対応の仕方や克服・治療法を詳述する。
