水族館で幻想的なMVを撮影した話
こんにちは。作曲家の櫻木咲子です。
水族館で撮影した新作のミュージックビデオを公開しました。今回は貸し切りの水族館で撮影した体験談を記録していこうと思います。
とても幻想的で綺麗な映像となりましたので、まずはぜひ動画をご覧ください!!
🐟【MV】Memories -あわのきおく-
きっかけ
前回、高原でのMVの撮影を成功させてから、さすがに「もう大型のMV撮影はしばらくいいや」と思っていました。今回の楽曲は二年ほど前にメロディを思いついていたので、次はこれを出そうと制作を進めていたところ……思いついてしまったんですね、水族館が合いそうだと。
試しに、水族館の貸し切り撮影調べてみたところ、相場は数十万。そんな中、個人でも手が届く料金で借りられる水族館を見つけました。それが今回お世話になったしながわ水族館さんでした。
準備とロケハン
まずは一人で現地へ行って、どんな水槽や生き物がいるかどうか見て回りました。その後サイトからお問い合わせし、ロケハンをさせていただくことになりました。
今回の撮影について、クリエイティブ・プロデューサーの中村滉基(Lunasis)さんに相談したところ、水族館で撮影するなら照明も入れたほうが狙った映像が撮れると提案をいただき、カメラマンの西村信哉さん、照明技師の中元タカさんと四人でロケハンに行くことになりました。
特に照明に関しては何の知識もなかったのですが、ロケハンの時に「ここはこうしたほうがいいね……」などと撮影班で打ち合わせをしながら進めていただきました。ロケハンは水族館の担当の方にご案内いただき、照明を使用しても良い水槽などしっかりと確認しながら進めました。
あとは撮影日を決めるだけ、という段階だったのですが、その日に自由に回って撮れるというわけではありません。基本的に休館日に撮影を行うので、水槽の清掃などの予定と被らないようにスケジュールを組む必要があります。今回は細かい絵コンテは作成せず、楽曲のブロックごとに、こういう絵がほしいというメモを書いたシートを作成しました。そこにイメージに合う撮影場所を書き足していき、それぞれの水槽にどれくらいの撮影時間がかかるかを事前に見積もらなければなりませんでした。

照明の準備時間や水槽の状態など不明な点が多く、勘を頼りに香盤表を作成し、このスケジュールで問題ないかどうか水族館に確認しました。
直前にならないと清掃のスケジュールがわからないとのことだったのでヒヤヒヤしましたが、この香盤表で進めてOKと確認をいただけました。

休館日の水族館で撮影!
いよいよ撮影です。まず私は水族館が大好きなので、休館日の水族館に入れることが楽しみでもありました。当日は水族館のスタッフの方に立ち合いいただきながら、生き物の安全に配慮して撮影が行われました。




特にイルカ水槽は、イルカが映像に入ってくれないと、ただの何もいない大きな水槽になってしまいます。始めこそ興味津々でこちらに来てくれたイルカたちでしたが、撮影準備をしている間に飽きてしまったのか、画面から外れていってしまいました。
しかし各水槽で撮影が許されているのは香盤表に書かれている時間のみ。ひとまず時間も限られていたので撮影を始めました。曲を流しながら、私は水槽の前で口パクのパフォーマンスを行います。
少し不安でしたが、中村さんからはなんと一発OK。水槽に背を向けていた私はイルカの様子が見えていませんでしたが、奇跡的にイルカが音楽に合わせてスイスイ画面に入り込んできてくれていたのです。アシスタントで来てもらったしゅんひろ君が、「あのイルカ、絶対音楽聞こえてますよ……!」と驚いていました。

アザラシの水槽では寝転がっての撮影でしたが、こちらもタイミングよく画面に入り込んでくれて、一発OKでした。

メインはトンネル水槽での撮影でした。ここでは奥から歩いてきたり、異なる画角で何度かパフォーマンスした映像を記録しました。


撮影はトラブルもなく、思ったよりもスムーズに進み、時間にも余裕があるくらいでした。


途中、アシカとイルカのパフォーマンス練習が行われる時間帯を事前に確認していました。今回はあえて8ミリカメラのようなカットをインサートしたく、スマホのアプリを使って撮影を行いました。休館日の生き物たちの練習の様子が見られるなんて、貴重……!私も衣装のまましばらく眺めていました。
そんなこんなで撮影は無事終了。予定していたカットも全て撮り終え、大成功となりました。スケジュールを組んでいる時は、時間内に撮り終えられなかったらどうしようと心配していましたが、結果的に想定していた時間はどれもちょうどぴったりの采配となりました。それも、スムーズに準備してくださった撮影班のおかげです!
いただいた素材を自分で編集してみましたが、「なるほど、こういう演出を想定していたのか……!」と後からわかることも多くありました。今回は現場での映像演出の指揮を中村さんにお願いしましたが、プロの撮影班にお願いして良かったと思いました。
楽曲、そして衣装
いい感じに撮影は終わりましたが、楽曲と衣装の準備も大変だったんですよ……。
まず衣装はネットで購入した既製品を改造しました。上半身の露出を抑えるため、別で購入した色の近いオフショルダートップスを縫い付けています。上半身についている白い(オーロラに光る)装飾も一つひとつ手縫いしています。これが非常に面倒なのですが、ボリュームを出したくて前日まで調整していました。
腕のグローブのようなものは元はタイツとして売られていたものなのですが、泡のイメージに近かったので、これも適度に穴を空けてドレスに縫い付けました。
頭飾りは水槽の装飾として売られていたものを、何とかゴムなどを駆使してコームをつけ、頭に差しました。イヤリングは本物のヒトデです。もともとインテリアとして家に飾ってあったものにイヤリングパーツをつけました。(これが今回唯一簡単な作業だった。)
私、作曲家だよな…?ここまでくると自分が何屋さんなのかわからなくなります。延々ドレスに装飾を縫い付けている時には、「もうやめたい……」が頭をぐるぐるしていました(笑)

そして楽曲。私、商業作品では曲を作るのが早い方なんです。だけど自分のアーティスト曲は別。気に入らなくて何度も修正したり期間が空いたりするうちに二~三年経っているなんていうことがザラにあります。今回も撮影した映像に合わせて修正を繰り返していました。
大変だったのは、やはり多重コーラスです。私の自前コーラスは作曲家としての特徴の一つなのですが、何トラックもレイヤーすることがあるため、エディットが非常に面倒です(笑)特に今回は水中を表現したかったので、メインボーカルも常に3トラックレイヤーしています。

これも、「もう無理やめたい……」と何回も思いますが、結果的に狙った効果を出すことができて良かったです。(完成したら大体過程を忘れてしまう)
一生に一度くらい、水族館を貸切ってみてもいいじゃない
まとめとなりますが、見出しの通りです。もともとお客さんとして水族館に行くのが好きな私ですが、人生に一度くらい水族館を貸切って撮影してみてもいいじゃない。これが今回のMVを撮影する大きな動機だった気がします。
今回も一つも妥協せずに満足のいく仕上がりとなりました。この作品の実現にお付き合いくださった撮影班としながわ水族館の皆さまには感謝でございます!!
それからこの楽曲を作るきっかけにもなった、私が飼っていた小さい相棒のお魚ちゃん。MVの最後の最後におまけ映像として登場します。ちょうどこのMVを公開した二年前に虹の橋を渡りましたが、このお魚ちゃんがこの楽曲とMVの公開をずっと後押ししてくれた気がします。ありがとうを込めて最後に登場してもらいました。
標高2,612mの雪山で撮影したことのある私にとって、管理された室内での撮影はずいぶん気が楽でした。しかしやってみるとスケジュール作成など大変なことも多々ありました。それでも出来上がった映像を見ると、やってよかったな……という思いがします。皆さんもぜひ、一生に一度の水族館の貸し切りはいかがでしょうか?(笑)
今回のMVで、本当に(?)ロケ撮影はしばらくお休みすると思います。その代わりに他のやりたいプロジェクトが悶々と頭にあるので、何年かかるかわかりませんが、悔いなく形にできるように頑張りたいと思います。
お読みくださりどうもありがとうございました!

