シロクマ文芸部「星を見る」
星を見ることが、随分となくなったものだと思う。
田舎育ちの私にとって、夜空を見上げれば満天の星があるという光景は、
ごく当たり前のものだった。
小学生の頃、理科の宿題で「星の観察」が出たことがある。
けれど近眼だった私は、星がよく見えなかった。
隣の席の子も目が悪く、
「星、見えねぇ!」
と笑い合った。
今思えば、なんとも贅沢な「星の観察」だった。
東京に引っ越してきてから、夜空を見上げることがなくなった。
夜になっても、星はほとんど見えない。
東京の子どもたちには、「星の観察」という宿題は出るのだろうか。
夜景を楽しむカップルを見かけると、
「夜景って、残業している人たちの汗と苦労の結晶なんだけどな……」
なんて思ってしまう私は、少しロマンチックさに欠けるだろうか。
それでも、ときどき思う。
人工的な灯りがなく、暗さと静けさに包まれた場所には、
東京にはないものがある。
星が見えるというだけではない。
暗くて、静かで、何もない。
そんな場所にいると、心も体も少しずつ力を取り戻していくような気がする。
星が見える夜は、空がきれいなのではなく、自分自身が少し生きやすくなる夜なのかもしれない。
