「1/31」ドキュメンタリー&200冊の活字中毒の偏愛日記365|「犬を飼うなら、15年後に看取る覚悟はあるの?
カフェで隣に座っていた親子の、この一言が頭から離れない。
小学生の男の子が「犬飼いたい」と言った瞬間、母親が返したのがこの言葉だった。
私はコーヒーカップを持つ手を止めた。
手に入れた瞬間、失うことを考えないといけない。
深すぎる。
違和感というより、「正しすぎる痛み」だった。
私たちは何かを手に入れるとき、獲得の喜びばかりを想像する。
新しいスマホ
新しい仕事
新しい恋人
新しいペット
でもこの母親は違った。
手に入れた瞬間から始まる「失う準備」を、息子に問うていた。
弱音を吐くなら――
私は今まで、どれだけ「手に入れる決断」を、「失わない前提」でしてきただろう。
森達也監督の『A』。
オウム真理教の信者たちを追ったあのドキュメンタリー。
彼らは「救い」を手に入れた瞬間、同時にこれらを失う覚悟を――本当の意味で――していただろうか?
社会からの信頼
家族との関係
自分の名前
していなかった。
だから崩壊した時、あれほど混乱した。
「得るもの」には楽観的で、「失うもの」には想像力が働かない。
これは、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』で語られる人間の認知バグだ。
犬を飼うことは、15年後に犬を看取ることとセット
人を愛することは、いつか別れることとセット
キャリアを築くことは、それを手放す日を想定することとセット
それでも手に入れるのか?
今、手にしているもの。
それを失う日を、一度でも想像したことがあるだろうか?
もしその日が来ても、それでも手に入れたかったと言えるだろうか?
と。ふと。
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