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中川・小川・大川 ~リバーズ・オブ・インフィニティ~

世の中には説明のつくことと、説明のつかないことがある。

たとえば重力。

たとえば恋。

たとえば「なぜ中川、小川、大川は定期的に争うのか」という問題である。

物理学者は首をかしげた。

哲学者は煙草をふかした。

数学者は行列式を書いた。

だが誰一人として答えには辿り着けなかった。

なぜならその戦いは、理屈ではなく川だからである。


ある春の日。

桜の花びらが風に舞い、

カフェラテの泡が宇宙背景放射のように揺れていた頃。

中川は静かに河川敷を歩いていた。

ミント色の風が吹いている。

遠くで犬があくびをしている。

どこかの高校生が失恋している。

そういう午後だった。

中川は考えていた。

「私は中なのだろうか。」

実に深刻な問題だった。

川として生まれた以上、

いつかは向き合わなければならない。

中とは何か。

上でも下でもない。

大でも小でもない。

ちょうどいい。

しかし本当にちょうどいいとは何なのだろう。


そのとき。

空が開いた。

いや正確には、

空のファスナーが開いた。

中から巨大な鯉が現れた。

全長およそ800メートル。

体重は思い出三年分。

尾びれにはジャズが宿っていた。

鯉は静かに告げた。

「集え、川たちよ。」


小川が現れた。

小川はおしゃれだった。

ベレー帽を被っている。

川なのに。

首にはスカーフ。

川なのに。

左手には文庫本。

川なのに。

彼は村上春樹を読んでいる風だったが、

よく見ると昆布の栽培マニュアルだった。


「ふっ。」

小川は微笑む。

「サイズで語る時代は終わった。」

彼の背後では小魚たちが拍手していた。

川なのかインフルエンサーなのか分からない。


その直後。

地面が揺れた。

雲が割れた。

コンビニのおでんが微妙に傾いた。

そして現れた。

大川。


巨大だった。

圧倒的だった。

スーツを着ていた。

川なのに。

肩幅が四国くらいある。

歩くたびに潮騒が聞こえる。

彼がスターバックスに入店すると店員が潮の満ち引きを確認するという。


大川は低い声で言った。

「川とはスケールだ。」

その瞬間、

海鳥たちが勝手にBGMを担当した。

予算の潤沢な映画みたいだった。


こうして三者は対峙した。

中川。

小川。

大川。

三つの流れ。

三つの思想。

三つのラテアート。


「川は繊細さだ。」

小川が言う。

「小さな流れが世界を潤す。」

すると大川が笑う。

「笑止。」

その声で波が立つ。

「流域面積こそ正義。」


中川は黙っていた。

なぜならまだ自分のキャラが定まっていなかったからである。

中間管理職みたいな悩みだった。


やがて戦いが始まった。

小川は必殺技

ストリーム・オブ・エスプレッソ

を放つ。

大量のコーヒー豆が銀河を横断する。

香りだけで三人ほど人生観が変わった。


大川は対抗して

グランド・デルタ・アポカリプス

を発動。

巨大な河口が出現する。

なぜかクラシック音楽が流れ始める。

ベートーヴェンも困惑していた。


中川も負けじと

ミドル・フロー・エヴァーラスティング

を発動。

すると絶妙な温度の麦茶が全宇宙へ配布された。

暑くもない。

冷たすぎもしない。

ちょうどいい。

実に中川らしかった。


しかし。

その時だった。

遥か彼方。

川銀河団の向こうから、

恐るべき存在が姿を現した。


その名は。

旧江戸川。


場が凍った。

川たちは知っていた。

あの存在だけは別格だと。

歴史。

文化。

漁業。

橋。

散歩コース。

すべてを背負っている。


旧江戸川は静かに言った。

「まだ争っているのか。」

その声には夕暮れの匂いがした。


「小さいとか。」

「大きいとか。」

「真ん中とか。」


「そんなものは名前だ。」


風が吹く。

菜の花が揺れる。

どこかでランドセルが跳ねる。

夕焼けが水面をオレンジ色に染める。


「川とは流れることだ。」


その一言で、

戦いは終わった。


小川は気づいた。

小さいからこそ見える景色がある。


大川は気づいた。

大きいからこそ抱えられるものがある。


中川は気づいた。

真ん中だからこそ繋げられるものがある。


三人は静かに笑った。

誰が勝ったわけでもない。

誰が負けたわけでもない。

ただ流れ続けるだけだ。


その帰り道。

三人は河川敷のベンチで缶コーヒーを飲んだ。

沈む夕日。

飛んでいく鳥。

遠くの野球少年。

意味のない会話。

意味のある沈黙。


「そういえば。」

小川が言った。

「大川さん。」

「なんだ。」

「川なのにスーツ着てますよね。」


大川は少し考えてから答えた。


「海に会う時は礼儀だからな。」


その言葉に、

なぜだか全員少しだけ感動した。

そしてその瞬間、

遠くの地平線から新たな脅威が現れる。

荒川・利根川・信濃川アベンジャーズ。

川たちは再び立ち上がる。

だがその話はまた別の日。

流れる水のように、

人生もまた続いていくのだから。🌊✨☕🌸

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