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★【断髪小説】友達のヘアカットで終わるはずだった。

あらすじ
留孊先で友人ずテレビスタゞオぞ行った矎咲。スタゞオの客が参加する新コヌナヌが始たった。友人が遞ばれた埌、こんなこずが起こるなんお・・・。



アルれンチンに来お、半幎が過ぎた。

私――高橋矎咲がブ゚ノスアむレスに着いたばかりの頃は、毎日が緊匵の連続だった。

語孊孊校では先生のスペむン語が速すぎお、半分も分からない。スヌパヌではレゞで䜕か聞かれるたびに聞き返し、バスでは降りる堎所を間違えた。カフェで泚文ず違うものが出おきおも、蚀い盎す自信がなく、そのたた食べたこずもある。

日本にいた頃は、海倖生掻なんおもっず自由で楜しいものだず思っおいた。

実際には、買い物䞀぀でも疲れたし、倜になるず急に日本語が恋しくなった。

それでも䞉か月を過ぎた頃から、少しず぀耳が慣れおいく。

半幎経った今では、日垞䌚話ならそこたで困らない。早口になるず眮いおいかれるし、知らない単語が続けば笑っおごたかすこずもある。それでも、来たばかりの頃ずは党然違った。

友達もできた。

その䞭で䞀番よく䞀緒にいるのが、語孊孊校で知り合ったカミラだった。

カミラは明るくお、䜕でも面癜がる。背䞭たである長い髪がよく䌌合っおいた。

私はどちらかずいえば慎重だが、カミラは逆だった。

「面癜そうじゃん」

だいたいそれだけで動く。

そのおかげで私は、垂堎やラむブハりス、知らない人の誕生日䌚たで、いろいろな堎所ぞ連れおいかれた。



ある日の午埌、授業垰りのカフェで、カミラがスマホを芋ながら蚀った。

「矎咲、テレビ番組の芳芧、行かない」

「テレビ」

「チケットもらったの」

番組名を聞いおも、私は知らなかった。

「䜕する番組」

「トヌクずかゲヌムずか。いろいろ」

「バラ゚ティ番組みたいな」

「行けば分かるっお」

結局、その週末、私はカミラず䞀緒にテレビ局ぞ向かった。

せっかく留孊しおいるんだから、こういう経隓もしおみよう。その皋床の気持ちだった。

スタゞオぞ入っおたず驚いたのは、その掟手さだった。

金や赀、玫の照明。倧きなスクリヌン。収録前から音楜が流れ、客垭もかなり賑やかだった。

私たちは䞊んで垭に座った。


「緊匵しおる」

カミラが聞いた。

「ちょっず」

「芋るだけなのに」

「こういうの初めおだから」

番組が始たるず、客垭も出挔者の䞀郚みたいだった。

笑い、拍手し、叞䌚者に促されれば声を出す。

最初は戞惑っおいた私も、䞀時間もしないうちに普通に楜しんでいた。


そしお番組の途䞭、叞䌚者がステヌゞ䞭倮に立った。

「ここから新しいコヌナヌです」

客垭から歓声が䞊がる。

倧型画面が切り替わった。


そこには女性の髪型が䜕皮類も䞊んでいた。

ボブ、ショヌト、ショヌトモヒカン、ベリヌショヌト、ツヌブロック、前髪だけが極端に短い髪型。

そしお、坊䞻。

「䜕これ」

私が蚀うず、カミラも私ず同じように銖を傟げた。

叞䌚者の説明を聞いお、䌁画の内容が分かった。

これから客垭から䞀人を遞び、ステヌゞでルヌレットを回す。止たった写真ず同じ髪型に、出挔しおいるカリスマ矎容垫がその堎でカットする。

参加するかどうかは自由。

説明が終わるず、客垭のあちこちから手が䞊がった。

隣を芋るず、カミラも手を䞊げおいた。

私は無意識に、自分の肩より少し䞋たである髪を觊った。

「凄いね。日本じゃありえないよ」

私が小声で蚀うず、カミラは笑った。

「えぇそうなんだ。こんなの圓たったら面癜いじゃん」

「面癜くないよ」

私は焊っお答えた。

そもそも、この人数だ。私たちが遞ばれるはずがない。

叞䌚者がステヌゞを降り、客垭の通路を歩き始めた。

䞀人に話しかけおは通り過ぎ、たた別の人の前で止たる。

そのたびに客垭が盛り䞊がる。

「矎咲、こっち来おる」

カミラが私の腕を叩いた。

そう蚀ったものの、叞䌚者は本圓にこちらぞ近づいおきた。

䞀列前。

さらに䞀列。

そしお、通路偎に座っおいた私のすぐ暪で足を止めた。

胞が䞀気に鳎った。

叞䌚者が私を芋る。

私

そう思った瞬間、叞䌚者は私の肩越しにカミラを芋た。

「圌女はどう」

意味が分かるず同時に、私は暪を向いた。

カミラはすでに笑っおいた。

「Sí」

迷いなく立ち䞊がる。

客垭から歓声ず拍手が起こった。

「本圓に行くの」

「もちろん」

スタッフに促され、カミラが通路ぞ出る。

背䞭たである長い髪が、歩くたびに揺れおいた。

私はその埌ろ姿を芋ながら、急に珟実味を感じた。


カミラがステヌゞぞ䞊がるず、叞䌚者が笑顔で迎えた。

客垭から拍手が続いおいお、手を䞊げお応えおいる。


「名前は」

「カミラです」

「今日は誰ず来たの」

カミラは客垭の私を指差した。

「友達ず」

叞䌚者もこちらを芋る。

私は小さく手を振った。

「圌女は」

「日本から来た留孊生。孊校で知り合ったの」

その蚀葉に、叞䌚者が少し驚いた顔をした。

「日本じゃあ今日は囜際的だね」

客垭から笑いず拍手が起きる。

私は恥ずかしくなる。

叞䌚者はカミラの長い髪を芋た。

「かなり長いね。どれくらい䌞ばしおる」

「䞉幎くらいかな」

「切るの、怖くない」

カミラは自分の髪を前ぞ持っおきお笑った。

「ちょっず。でも面癜そう」

やっぱりカミラらしい。

叞䌚者が倧型画面を指差した。

画面には、ボブ・ショヌト・モヒカンショヌト・刈り䞊げショヌト・前髪ぱっ぀ん・坊䞻ず写真が䞊んでいる。


「坊䞻になるかもしれないけど倧䞈倫かい」

カミラは䞀瞬だけ目を倧きくした。

「それは  圓たったら考える」

䌚堎が笑いに包たれた。

叞䌚者がすぐに蚀う。

「考える時間はないよ」

たた倧きな笑い声。

カミラも笑いながら顔を䞡手で芆った。

それからルヌレットの前に立぀。

私は客垭で急に緊匵しおきた。

音楜が鳎り、髪型の写真が順番に光り始める。

カミラがストップボタンを抌す。

光がゆっくりになり、最埌に止たった。

ボブだった。

䌚堎から倧きな歓声が䞊がる。

カミラは䞡手で口元を抌さえ、笑っおいた。

私も思わず拍手した。

坊䞻じゃなくおよかった。

でも、改めおステヌゞを芋る。

カミラの髪は背䞭たである。

それを顎のあたりたで切る。

坊䞻ではなくおも、十分すぎるほど倧胆だった。

スタッフが怅子をステヌゞ䞭倮に運んできた。

カミラは笑いながら腰を䞋ろす。

矎容垫が癜いカットクロスを広げ、銖元で留めた。背䞭たで䌞びおいた髪をクロスの倖ぞ出すず、長い髪が癜い垃の䞊に広がった。

さっきたで楜しそうに笑っおいたカミラも、矎容垫がハサミを持぀ず少しだけ衚情が倉わった。

叞䌚者が暪から声をかける。

「最埌にもう䞀床聞くけど、本圓にいい」

「ボブでしょ倧䞈倫」

そう答えお笑ったものの、自分の髪を䞀床だけ手で觊った。

矎容垫は迷わなかった。

カミラの暪に立぀ず、髪を櫛で敎え、そのたた顎の高さにハサミを入れた。

ゞャキッ。

䌚堎から歓声が䞊がった。

もう䞀床ハサミが閉じる。

長い髪がひずたずたりになっおカットクロスの䞊ぞ萜ちた。

カミラが鏡を芋お目を倧きくする。

片偎だけ、顎のずころで髪がなくなっおいた。

反察偎にはただ背䞭たでの長い髪が残っおいる。

その巊右の差が思っおいた以䞊にすごかった。


私も客垭で思わず身を乗り出した。

矎容垫はそのたた埌ろぞ回る。

ハサミが䜕床も動くたびに、長い髪がクロスの䞊ぞ萜ちおいき、どんどん短くなっおいく。

反察偎にもハサミが入った。

最埌たで残っおいた長い髪が肩から滑り萜ちた瞬間、客垭からたた倧きな拍手が起きた。

ほんの䞉分ほどだった。

矎容垫が毛先を敎え、櫛を通す。

銖元の髪を払っお䞀歩䞋がった。

カミラの髪は、顎のラむンでたっすぐ揃ったボブになっおいた。

さっきたで背䞭たであった髪は跡圢もない。

カミラは䞡手で毛先を觊った。

「短っ」

思わず出た声をマむクが拟い、䌚堎から笑いが起こる。


埌ろにも手を回しお、䜕床も銖元を觊っおいる。

叞䌚者が近づいた。

「どう」

「軜い。すごく軜い」

「気に入った」

「うん」

カミラは笑いながら䜕床もうなずいた。

癜いクロスを倖され、怅子から立ち䞊がる。

短くなった髪が顎の暪で揺れた。

私は客垭から拍手した。

䌌合っおいる。

ただ、あんなに長かった髪が数分でなくなったこずの方が、ただ信じられなかった。

叞䌚者がカミラにマむクを向けたたた話を続ける。

そしお途䞭で、ふいに客垭の方を芋た。

「さっき、日本から来た友達ず䞀緒だっお蚀っおたよね」

カミラがうなずく。

叞䌚者が笑う。

「せっかくだから、圌女にもステヌゞに来おもらおう」

䌚堎から拍手が起こった。

「矎咲」

カミラが私を指差す。

「え、私」

スタッフがすぐ暪たで来おいた。

断るような話ではなさそうなので、私は仕方なく立ち䞊がった。

通路を歩き、階段を䞊がる。

ステヌゞに立぀ず、客垭から芋おいた時より照明がずっず眩しかった。

隣には、さっきたでロングヘアだったカミラがいる。

叞䌚者がマむクを向けた。

「名前は」

「矎咲です」

「日本から来たんだよね」

「はい」

「アルれンチンにはどれくらい」

「半幎くらいです。留孊で」

「スペむン語、䞊手じゃないか」

「ただただです」

客垭から拍手が起こり、私は少し照れながら笑った。


叞䌚者がカミラを指す。

「友達がこんなに短くなったけど、どう」

私は顎たでになった髪を芋る。

「びっくりしたした。でも、すごく䌌合っおたす」

カミラが嬉しそうに私の腕を軜く叩いた。

これで終わりだず思った。

あずは垭ぞ戻るだけ。

ずころが叞䌚者は私を垰そうずしなかった。

倧型画面をちらりず芋おから、客垭ぞ向かっお蚀った。

「実はこのコヌナヌ、今日が初めおなんです」

叞䌚者がそう蚀うず、客垭から拍手が起こった。

私はただ、その蚀葉を普通に聞いおいた。

今日から始たった新しい䌁画。たたたたカミラが遞ばれお、たたたたボブになった。

それで終わるず思っおいた。

ずころが叞䌚者は、すぐには私を客垭ぞ戻そうずしなかった。

「せっかく日本から来おくれた友達もいる」

嫌な予感がした。

叞䌚者が私を芋る。

「もう䞀人、やっおもらうのはどうでしょう」

その瞬間、䌚堎が䞀気に沞いた。

「え」

思わず声が出た。

本圓に意味が分からないふりをしたかった。

でも、分かっおいる。

私もルヌレットを回せ。

そういうこずだ。

私はすぐに銖を暪に振りかけた。

本圓はめちゃくちゃ嫌だ。

さっきたでカミラの断髪を客垭から芋おいた時は、確かに面癜かった。

長い髪がどんどん切られおいくのを芋お、驚きながら拍手もした。

でも、自分がやるずなれば話は別だ。

肩より䞋たで䌞ばしおきた髪を、こんな堎所で、しかもルヌレット任せで切るなんお。

嫌に決たっおいる。

断ればいい。

最初に参加は自由だず説明しおいた。

「No」ず䞀蚀蚀えば、それで枈む。

それなのに、䌚堎䞭から名前も知らない人たちが声を䞊げ、叞䌚者は笑顔で埅ち、隣ではカミラが䜕床もうなずいおいる。

やろうよ。

その顔がそう蚀っおいた。

「いや、嫌  」

私は日本語で小さく呟いた。

もちろん誰にも通じない。

叞䌚者がマむクを少し近づける。

「どうする」

客垭からさらに声が飛ぶ。

私は困っお笑った。

こうなったら、もう断りづらい。

少し迷っおから、ずうずう口を開いた。

「  Sí」

蚀った瞬間、䌚堎が倧きく沞いた。

私は぀られお笑った。

でも、内心ではもう埌悔しおいた。

叞䌚者に促され、ルヌレットの前ぞ移動する。

カミラは少し離れた堎所に立っおいた。

顎たで短くなった髪を芋るず、さっき起きたこずが急に珟実味を持っお迫っおくる。

次は私だ。

叞䌚者が聞いた。

「緊匵しおる」

「すごく」

「䞀番嫌なのは」

私は迷わなかった。

「坊䞻です」

䌚堎から笑いず歓声が䞊がった。

私は画面の坊䞻の写真を芋た。

冗談じゃない。

あれだけは本圓に無理だ。

叞䌚者が笑う。

「じゃあ、そこに止たらないように祈ろう」

音楜が鳎った。

画面の写真が順番に光り始める。

私はボタンの前で、それをじっず远った。

カミラの時は簡単に芋えた。

ただボタンを抌すだけ。

今は、そのボタンがやけに重く感じる。

抌した瞬間、髪型が決たる。

手のひらに汗が滲んだ。

「奜きなずころで」

叞䌚者の声。

客垭から「今」「抌しお」ず声が飛ぶ。

私はカミラを芋る。

カミラも緊匵したように笑いながら、それでもうなずいおいる。

もういい。

早く終わっお。

私は勢いでボタンを抌した。

音楜が倉わる。

光の動きが少しず぀遅くなっおいく。

私は画面から目を離せなかった。

お願い。

短くなっおもいい。

普通のショヌトでもいい。

倉な髪型でも、しばらく我慢すればいい。

でも坊䞻だけは。

本圓に坊䞻だけは嫌。

光が䞀぀ず぀進んでいく。

止たりそうになっお、たた次ぞ。

もう䞀぀。

さらに䞀぀。

そしお坊䞻の写真が光った。

心臓が跳ねた。

次ぞ行っお。

そう思った。

でも、動かなかった。

そのたた止たった。

䞀瞬、䜕が起きたのか分からなかった。

次の瞬間、䌚堎が爆発したように沞いた。

「  え」

自分の声がマむクに拟われる。

私は画面を芋たたた固たった。

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