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マーガレット・ミラー『殺す風』佐々木広治の読書随想

 マーガレット・ミラー『殺す風』。

 卓越した心理描写と詩的な美しい描写が特徴の著者の高みに到達した作品。津村記久子に最も大きな影響をあたえた作品。ロス・マクドナルドの伴侶。そういう前情報があり楽しみにして手にとったもののの、期待が大きすぎたのだろうか、そう賞賛するほどのものでもないのではというのが正直な感想。詩的な美しい描写といわれるが、そうなのだろうか。原文ではそうなのかもしれないが、訳文ではまったくそれは、少なくとも私には感じられず。会話が多くを占めているわけで、そこに美を見出だすことも私にはできなかった。アメリカのものらしいウィット、機知はあるがそれも飛び抜けて巧いとも思われない。
 女性にしか目の行き届かない、いや、女性でも一部の人にし行き届かず、気づけず、表現できないであろう部分が随所にあり、たしかにすごいと目を見張る部分はあったし、意外な真相、そこへの自然な流れ、そして幕引きも見事だとは思うものの。
 あまり書見をされていない方だとか、推理小説だとかその辺りのものしか読まない方にであれば響くものなのだろうか。津村記久子は読書量がすくなく、もっとも彼女に限らず最近の書き手は読書量がすくなく質も高くないものしか読まない(読めない)ようだが、日本文学の質の低下について思いを巡らせることにもなった。
 もとより、合う合わないということ、相性というものはあるもので、私にはあまりしっくり来なかったというだけのことなのかもしれない。その上であえて言えば、著者よりも遡る時代のおなじく閏秀の書き手のダフニ・デュ・モーリエ(ダフネ・デュ・モーリア)の作品こそ、詩的で美しい描写、卓越した心理描写だと思うし、語りの妙は同日の論ではない、と思うものだが。もっとも、ダフニ・デュ・モーリエ(ダフネ・デュ・モーリア)を読む人が少なくなり、こういっても話が通じなくなっているのが現状なのだが。嗚呼。

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