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飛べません。少し不便です。



「飛べないの?」

「飛べません」

同じ種族には、空を飛ぶ個体もいる。

ガルンには、それができない。

だから少し不便で、それでも今日の仕事はある。


「同じ種類なのに?」

来館者の子供が聞いた。

ゴン。

ガルンは答えた。

「はい」

頭上をハネ型のフェルが横切った。

リィィン――。

風を拾い、そのまま丘の向こうへ消える。

ガルンはカネ型だった。

風鈴に似た殻を持つ知的生命体、リュネラ種。その中で、カネ型だけはまったく飛べない。

ガルンは仕事へ戻った。


目的地は丘の向こうの資材庫だった。

フェルなら、もう着いている。

ガルンはカネ型用の道を歩く。

重い身体でも通れるよう、坂は緩く、幅は広い。

そのぶん遠回りだった。

途中でオモリ型のロガとすれ違った。

風が吹く。

カラン。

ロガの身体が少し浮き、一メートルほど先へ降りた。

ガルンは浮かなかった。

オモリ型には、わずかに飛行能力が残っている。

カネ型にはない。

「今日は風がありますね」

ロガが言った。

「あります」

二体は、そのまま別々の方向へ歩いた。


資材庫では、新しく配属された職員が待っていた。

大きな容器が置かれている。

「これを運んでもらって大丈夫ですか」

「はい」

「六十二キロあります」

「知っています」

職員は少し迷った。

そこへ、長くリュネラ種を担当している職員が来た。

「ガルンなら大丈夫です。ただ、二つだと通路が狭いので、一つずつで」

「分かりました」

ガルンは容器を固定し、持ち上げた。

新人職員が少し目を見開く。

ガルンには、いつもの重さだった。


昼前。

近道の高架通路が点検で閉じていた。

フェルは横を飛んでいった。

スズ型のリネルも風に乗って向こう側へ渡る。

ガルンの端末には、

《迂回路 十二分》

と表示された。

食事棟へ着くと、ウス型のニリはもう食べていた。

「遅かったですね」

「道が閉まっていました」

「飛べば早かったです」

「飛べません」

ニリは一拍置いた。

チリ。

「そうでした」

それで終わった。

昼食はまだ残っていた。


午後、風が強くなった。

屋外の資材を早めに倉庫へ戻す。

フェルは地上へ降りていた。

軽いハネ型には、強すぎる風だった。

リネルも今日は歩いている。

ロガは風除け設備を固定していた。

ガルンは荷台を引いた。

朝の子供が見つけた。

「あ、飛べないやつ」

質問が届く。

「飛べなくて、困らないの?」

ガルンは少し考えた。

「困ることはあります」

子供が黙る。

「遠い場所へ行くと、時間がかかります。高い場所にも、自分では行けません」

「じゃあ、不便?」

「はい。少し」

ガルンは荷台を倉庫まで引いた。

百キロを超える資材が載っている。

「でも、これは運べます」

「重くないの?」

「重いです」

「でも運べる?」

「はい」

ガルンは資材を倉庫へ入れた。


帰り道。

風が少し弱くなった。

頭上をフェルが飛んでいく。

リィィン――。

速かった。

飛べれば、丘の向こうへは早い。

それは本当だった。

ガルンは飛べない。

だから、歩いた。

少し時間がかかる。

今日も重い荷物をいくつか運んだ。

頭上をフェルが飛んでいった。

ガルンは、その下を歩いた。

どちらも、次の仕事へ向かっていた。


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