役に立たないことをしよう
自己啓発本に逆らってみる
本屋に行くと、自己啓発本がものすごい数売られている。
つまり、それだけ「今の自分をなんとかしたい人」が多いということなんだろう。
並んでいるのはたいてい、
「今日できる、やりたいことの見つけ方」とか、
「60歳を過ぎたら、めんどくさいことはやらない」とか、
「自分を思い通りに動かすコントロール術」とか、そういう感じだ。
(全部勝手に考えたタイトルです)
共通しているのは、
今すぐ役に立つ。ラクしてなんとかなる。劇的に解決する。
たぶんみんな、今がしんどい。
そして、できれば今すぐ、できればラクに解決したい。
タイパとかコスパとか、最近はとにかくそういうことになっている。
その気持ちは、わかる。
時間もないし、お金もない。偉そうなことは言えない。
でも、たぶん本当に大変なことは、そんなにすぐ解決しない。
しないから、また新しい啓発本が売り出されるのだ。
だからむしろ、逆のことをしてみてもいいんじゃないか。
すぐ役に立たないことを、あえてやる。
たとえば、意味のわからない映画を観る。
気になって観てみたものの、何が言いたいのかさっぱりわからない。
最後まで観ても、結局よくわからない。
モヤモヤだけが残る。
たとえば、思い切ってちょっと高いワインを買ってみる。
なんとなく「深みがある気がする」けど、正直、いつもの980円と何が違うかはよくわからない。
わからないものは、わからないまま通り過ぎていく。
つまり、その瞬間には、何も役に立たない。
でも、そういう「よくわからなかったもの」が、後になって突然、自分の中で繋がることがある。
昔はなんとも思わなかった絵が、ある日の夕焼けで急にわかったり、
若い頃には意味不明だった小説が、歳をとって沁みたりする。
きっと、あのころ説明できなかった何かが、ずっと自分のどこかに沈んでいたのだ。
自己啓発本は、悩みを言語化して、解決法を説明してくれる。
わかりやすいし、便利だ。
でも、わかることと、変わることは、たぶん少し違う。
説明できない感情や、意味不明だった体験は、すぐには活かせない。
だけど、そういうものほど、自分の深いところに残っている。
それがいつ役に立つのかは、わからない。
もしかしたら、一生役に立たないかもしれない。
近道は、早く目的地には着く。
だけど、遠回りでしか拾えないものも、たぶんある。
だから、役に立たないことをしよう。
しょうがないからやるんではない。わざとそっちを選びたい。
くだらないものがいっぱい溜まって、その中に砂金レベルの確率だけど、光る何かが見つかるはずだ。
そっちの方が、きっと面白い。
