全国水族館の旅【75】東京のミニ水族館5選
東京の水族館と言えば、池袋のサンシャイン水族館のように「人だらけの都会にあるビルの中の施設」というイメージが強いかもしれません。ですが、郊外に目を向けると、様々な発見に満ちた学習施設がいくつも存在しているとわかります。
今回は「東京都内のミニ水族館」「水族展示のある学術施設」を紹介させていただきます。大都市から少し離れた郊外での自然学習は、地球を感じられる素晴らしい体験となります。
多摩川自然情報館 ~生命豊かな多摩川を探究する環境教育基地~
多くの人々のイメージとは裏腹に、東京都内には生物観察・自然学習スポットがたくさんあります。中でも水棲生物の観察場所の筆頭にあがるのは、山梨県から東京湾へと流れる一級河川・多摩川です。山梨県や神奈川県の流域はもちろん、東京都内の流域においても、多様な生き物たちが暮らしています。



調布市の多摩川流域にて、さっそく生物観察を開始。水辺はとにかく生き物が集まりやすく、流れの緩やかな場所・倒木や石の隙間・岸辺の草地などを中心に探していれば、高確率で生き物と出会えます。また、岸に繁茂している植物の種類を同定し、当地の植生を分析してみるのも生態系の理解へとつながります。




多摩川の生態系への理解をさらに深めるため、筆者は川沿いに位置する自然情報館へと向かいました。
本館は、多摩川の水域環境を中心に、調布市内の自然と生命を学べる環境学習施設! 定期的に一般向けの環境教育イベントも開かれており、まさに調布市民の自然学習基地となっています。


本館では、展示室・学習室・通路にわたって解説資料や生体展示コーナーが設置されています。超間近で水棲生物を観察できて、水族館ファンの方々も大歓喜すると思います。当地の施設ならではの専門的な多摩川の生態系学習、本当に楽しみです。





本館の生体展示の種類は多岐にわたります。水域と陸域における無脊椎動物と脊椎動物を、展示室内で観察できます。彼らの美しい姿を拝みつつ、多摩川流域の生態系をイメージしてみましょう。



展示室内の標本や解説資料も、たくさんの知識を与えてくれます。1つ1つの資料に多摩川の自然の知が秘められており、生態系の秘密を我々に語りかけています。多摩川には底知れぬ神秘が宿っていると改めて感じます。



展示室での学習の後は、通路を戻って「学習室」へと移動しましょう。こちらには多数の生物図鑑や環境学習図書がそろっており、専門書から膨大な知識を身につけられます。
さらに、なんと淡水性の水生植物の生体展示も見ることができます。小型容器で育っている水草の形態を観察しながら、河川で繁茂する姿を想像してみてください。



展示室と学習室だけでなく、通路にも多摩川の生態系の解説資料があります。流域全体の環境を学ぶと、実地での生物観察がさらに充実します。知れば知るほど、河川環境や淡水生態系への関心が爆上がりして、多摩川の生き物に会いたい気持ちが強くなりますね!


自然情報館での学習を通して、多摩川をもっともっと探究してみたいという気持ちが強まりました。私たちの愛する多摩川は何ものにも代えがたいほど尊く、生命を育む偉大な環境なのです。
流域の自然がいつまでも美しく在り続けられるように、私たちで多摩川を守っていきましょう!

所在地:東京都調布市染地3-8-26
アクセス面:施設内に一般向けの駐車場はなく、公式HPでも公共交通機関の利用が推奨されていますので、JR調布駅より路線バスもしくはタクシーを利用しましょう。どうしても車で来訪しなくてはならない場合、事前に施設にご連絡すれば、車を停めさせていただけます。近隣にコインパーキングもありますが、土日は満車になっている場合がありますのでご注意ください。

水元かわせみの里 ~23区屈指の大水郷公園で生物観察へ繰り出そう!~
「東京23区はビルばかりでまったく自然がない?」と思われがちですが、郊外に目を向ければ野生動植物の生息に好適な環境があるとわかります。葛飾区が有する大型水郷公園ーー水元公園もその例の1つであり、園内にはカワセミをはじめとする多くの美しい生き物たちが棲んでいます。
生物観察に適した好天の日に、筆者は水元公園に出かけてみました。23区内の公園としては珍しく、水元公園には大型駐車場が設けられていますので、東京都内・他県の方々も安心して車でアクセスできます。



目的地の「水元かわせみの里」は、水元公園の北西部に位置しています。駐車場からでも少し長めの距離を歩くことになりますので、公園内の自然を観察しながらのんびり目指しましょう。たくさんの生き物たちと出会いたいのであれば、春~初秋の暖かい時期の散策がオススメです(もちろん冬でも探し方によっては多くの生き物を見つけられます)。



北へ歩み進めていくと、植生豊かな池に面した学習観察施設「水元かわせみの里」に到着します。ここは水元公園の生物の保全と調査を担う学びの基地であり、私たちに素晴らしい環境教育の機会を提供してくださっています。我々が園内でカワセミを観察できるのは、たくさんの人々の保全活動のおかげなのです。



水郷公園である水元公園には、多種多様な水棲生物が息づいています。よって、かわせみの里の生体展示は水の生き物たちがメインであり、水域環境を感じながら観察学習できます。水元公園を流れる水域の中の世界、本館の展示を見ながらイメージしてみましょう。





本館では、淡水魚の他にも、実に様々な水棲生物たちと対面できます。非常に多くの生命が密接に関り合って、水元公園には豊かな生態系が築かれているのです。動植物に恵みをもらたす環境が東京23区内に存在するーーその事実に改めて感動しました!





本施設では、水元公園の生き物たちの学術標本も多数展示。解説資料と共に学習することにより、生態学の知識が一気に高まります。水元公園は素晴らしい環境教育のフィールドであると強く思いました。




陸と水に多くの生命が暮らす水元公園は、身近な自然と生態系を学べる葛飾区の聖域です。多くの人々が力を合わせて環境保全に取り組み、生き物たちが営々と命をつないでいくーーその奇跡が葛飾区に存在しています!
ぜひとも観察道具を持って、カワセミの舞う水元公園に出かけてみてください。

所在地:東京都葛飾区水元公園8-3(水元公園内)
アクセス面:レンタカー・自家用車・公共交通機関のどれを選んでも、スムーズにアクセスできます。水元公園には大きな駐車場がありますので、他見の方もぜひ車で来訪していただきたいと思います。ただ、花火大会などのイベント開催日は駐車場が満車になる可能性もありますのでお気をつけください。公共交通機関をご利用の方は、JR金町駅から路線バスやタクシーに乗って向かいましょう。金町駅から水元公園まではそれほど遠い距離ではありませんので、猛暑日や悪天候の日でなければ徒歩で向かうことも十分可能です。

板橋区立熱帯環境植物館 ~板橋区には最大級の淡水エイがいる?~
ミニ水族館を擁する、板橋区高島平の熱帯環境植物館。生物マニアの間では有名な学術施設であり、麗しい熱帯性の植物だけでなく、多種多様な水棲生物とも出会えます。というわけで、筆者は都営三田線に乗って、熱帯環境植物館の最寄りの高島平駅にやってきました。
高島平は駅前の大型団地の中にスーパーやクリーニング屋やドラッグストアが入ってるうえに、公共施設や病院が団地の近くに集中しています。さらに、自然観察のできる赤塚公園もありますので、個人的には「東京都23区内でもトップクラスに住みよい街」だと思います。



熱帯環境植物館は高島平駅から徒歩およそ5分ほどの距離であり、アクセスは環境はとても良好です。北口から出て高島平八丁目交差点を通り、川の方へ向かって北方向に歩いていけばすぐに到着します。なお、施設内に駐車場はありませんので、車でお越しの方は周辺の有料駐車場を利用してください。


本館の広大な温室空間では、熱帯地域の様々な自然環境が表現されています。潮間帯・低地林・集落地域・高山地帯ーー個々の環境で植生がどのように異なっているのかを見てみましょう。はるか遠くの熱帯の国々の生態系を、全身の感覚で学べることが植物園ならではの強みと言えます。



それでは、お待ちかねの水族展示を観覧してまいります。本館のミニ水族館は地下1階に位置しており、東南アジアの水域生態系の生き物たちを観察できます。熱帯の海に舞う生命の姿は、我々に強烈な感動を与えてくれます。





そして、熱帯地域と言えば淡水環境も魅力的! ミニ水族館には多様な淡水生物が飼育展示されていて、ミステリアスでかっこいい魚類や爬虫類の姿を拝めます。熱帯のジャングルとつながる河川や湖沼には、想像を超える生命の楽園があるのだと実感します。





ミニ水族館の奥の扉を開けて大温室に入ると、目の前に大きな淡水生物の飼育水槽が出現! マングローブやニッパヤシが生える河口域をイメージした、「潮間帯植生」エリアの水棲生物の展示です。
この水槽では、世界最大の淡水エイであるヒマンチュラ・チャオプラヤが飼育されています。成体の全長は4 mに達する例もあり、熱帯環境植物館の個体(愛称チャオちゃん)は全長およそ2.7 mに及びます。初めてチャオちゃんに会う方は、彼女の大きさと美しさに圧倒されることでしょう。



そして、土曜日に公開給餌タイムが実施されており、チャオちゃんをはじめとする多くの飼育生物の食事に立ち会えます。世界最大の淡水エイの食べっぷりは、とても優雅でダイナミック! 生物の摂食行動を観察できる機会はとっても貴重ですので、日程が会えばぜひとも生き物たちの食事をご覧になってください。


水族展示が超魅力的な熱帯専門の植物園。神秘的な動植物との出会いに、生物マニアなら誰もが大興奮することでしょう。この感動を味わい、熱帯の生態系への理解を深めるために、生き物好きの方々はぜひとも高島平に足を運んでみましょう!

所在地:東京都板橋区⾼島平8-29-2
アクセス面:本館に駐車場はありませんので、公共交通機関の利用を推奨します。最寄り駅は都営三田線の高島平駅であり、北口から徒歩5分ほどで熱帯環境植物館に到着します。ただ、他にも板橋区の名所を観光するならレンタカーや自家用車を使う方が断然楽ですので、その場合は付近のコインパーキングに車を停めて熱帯環境植物館へ歩いて向かいましょう。

足立区生物園 ~ミニどころではない! 足立区が誇る生命のオアシス~
この度ご紹介する足立区生物園は、水域・陸域問わず数多くの生物を飼育展示する学術施設。昆虫などの無脊椎動物から大型脊椎動物まで多種多様な生き物たちが育てられているうえに、チョウ類や熱帯植物を飼育する大温室までも備わっています。総合的な生物展示を見ると、かなりの規模と超濃密な学習内容を誇っており、まさに「足立区の生命のオアシス」と呼ぶにふさわしいと思います。
生き物好きならば、誰もが絶対に行ってみたい施設! さっそく筆者は、生物園を擁する足立区の元渕江公園へ向かいました。


目の前に生命のオアシスがありますで、筆者は即行で突撃。入館すると、さっそく立派なオオサンショウウオがお迎えしてくれました。エントランスホールの生体展示からすぐに、生物マニアの心は生物園に引き込まれていきます。



生物展示のメインとなるのは、エントランスからまっすぐ進んですぐの位置にある「観察展示室」。こちらでは、水棲生物を含めて、多種多様な分類群・生息環境の生き物たちと対面できます。徹底的に観察学習して、足立区生物園での学びを最高の時間にしましょう!





本館には、チョウ類や熱帯植物が育てられている大温室があります。温暖な大空間の奥の水槽には、大型淡水魚のピラルクーやジャウーが来館者を待っています。彼らのように強く麗しい巨大魚がアマゾンの大河を泳ぎ回っていると想像すれば、自然環境のスケールに改めて圧倒されますね。





足立区の自然学習施設に来たのなら、足立区の自然環境についてもっと知りたいと思うのが生物マニアの性。もちろん、足立区生物園は当地の生物探究のプロフェッショナルです。
正面エントランスからして右手の展示室「あだちの生きもの観察室」では、水棲生物を中心に足立区の地域自然に棲む生き物たちが飼育展示されています。いくつもの河川を有し、豊かな水辺環境を擁する足立区には、どのような生命が息づいているのでしょうか。





さて、本記事の趣旨は「ミニ水族館」ですので、水棲生物を中心にピックアップさせていただきましたが、せっかくですので水族展示以外の区画の生き物たちも紹介させていただきます!
ただ、足立区生物園の飼育生物の種数はとても多く、この記事だけで生物園のスターたちを全て紹介するのは不可能です。本施設から最大限の知識を得るには、ぜひとも直接この素晴らしい「足立区の生命のオアシス」を訪れてみてください。




最後に皆様に知っていただきたいのは、「足立区生物園では希少なチョウ類の域外保全(生息地の外での保護・繁殖)が実施されており、絶滅危惧種を救うための飼育研究が行われている」ということです。
人々の環境と生命の大切さを伝える学術教育施設であり、絶滅の危機から生き物を救う希望の基地でもある生物園。地球の尊さを強く理解できる素晴らしい施設ですので、筆者は心から足立区生物園をオススメします!


所在地:東京都足立区保木間2-17-1(元渕江公園内)
アクセス面:鉄道路線から少し離れた立地にありますので、車での来館をオススメします。第1駐車場と第2駐車場がありますので、あらかじめ公式ホームページなどで駐車場の位置を確認していただくとスムーズにご来館できると思います。公共交通機関をご利用の方は、綾瀬駅・北千住駅・竹ノ塚駅・六町駅のいずれかの駅から路線バスに乗ってください。ただ、いずれも直通ではなく、最寄りのバス停から少々歩きますので、行き帰りの行程をスムーズにしたい方はレンタカーか自家用車の利用がベストだと思います。

多摩川ふれあい水族館 ~河川の自然観察の合間に水再生センターへ?~
生物観察・環境教育において多摩川はとっておきのフィールドです。生き物好きが多摩川に来たら、真っ先に水棲生物を探しに行くのが自然な流れです。
今回は、昭島市の「くじら運動公園」近くの流域を訪れました。さっそく、多摩川の水棲生物たちを探していきたいと思います。



誰でも手軽にできる生物探しは、「流れの緩やかな水域で石や木片を引っくり返してみること」です。多くの生き物は、天敵から身を守るために、岩の割れ目などの隙間を好みます。特に、カゲロウ類・トビケラ類の幼虫といった昆虫が見つかりやすいと思います。





水域で思いきり自然観察したら、くじら運動公園の河川敷を歩いて、多摩川上流水再生センターへ向かいましょう。本施設の無料開放エリア(平日限定)こそ多摩川ふれあい水族館なのです。
なお、この記事で紹介している施設の中では最もミニ水族館であり、観覧後かなり時間的な余裕が生まれると思います。ですので、東京西部の他の学術施設(トップにご紹介した多摩川自然情報館など)とセットで観覧することをオススメします。




多摩川ふれあい水族館の水槽には、センターの処理水と清水が用いられています。水族展示内容は多摩川の流域環境をイメージした構成となっており、最上流域から下流域までの水棲生物が飼育展示されています。愛しい多摩川に生きる彼らの生命を感じながら、ゆったりと生物観察に浸ってください。





改めて申しますが、ミニ水族館ということで、ふれあい水族館での学習後も、他の学術施設の観覧やフィールドでの生物観察の時間を十分捻出できると思います。
ぜひとも、本施設で学び得た知識を活かして、今後の自然探究や環境保全を充実させてください。上流水再生センターは、多摩川の水環境と生命を保全するため、今日も水を浄め続けているのです!

所在地:東京都昭島市宮沢町3-15-1(多摩川上流水再生センター内)
アクセス面:車の利用を強く推奨します。東京西部の昭島市に位置する施設であり、都心から向かうならば高速道路の中央自動車道を通りましょう。そして多摩川上流水再生センターへ向かって下道を走って行き、くじら運動公園の近くの有料駐車場に停めるのがベストだと思います。公共交通機関をご利用の場合、JRの立川駅から路線バスに乗って「宮沢」で降りてください。本館の観覧後は、野外での自然観察や他の自然学習施設に向かう時間が十分とれると思いますので、ぜひ機動力に優れる車を活用しましょう。施設学習のみならず、東京西部の自然探究には車があると圧倒的に有利ですので、改めてレンタカーや自家用車の利用をオススメします。

東京都内での生命との出会い、いかがでしたでしょうか?
大自然の中で本格的な自然観察を楽しみたい方は他県に向かわれると思いますが、東京にも生物と自然を学べる場所はたくさんあるのです。他の地方の超壮大な海洋や大森林に飛び込むとき、必ず学術施設での学びが活きてきます。
都内の自然環境を守るため、他の地域の絶滅危惧種の生物を域外保全するため、生命と環境の尊さを教育指導するため、多くの生物研究・生物飼育のプロの方々が活躍されています。全ての自然学習は、地球全体の環境とつながっていると改めて実感しました。
