「音はペダルに任せてもいい」—脱力と読譜がつながった瞬間
オンラインレッスンが始まると、いつもの手元の映像に加えて、小さな画面がひとつ。
そこには、ペダルを踏む足元が映っていました。
生徒さんが、1つの画面の中に足元の映像を挿入できるアプリを使って、私がペダルの動きまで確認できるように準備してくださったのです。
「今日は足元も見えます!」
その一言に、この2週間、ペダルを本気で身につけようと取り組んできた気持ちが伝わってきました。
レッスンが始まると、この2週間で試したことや感じたことを次々と話してくださいました。
ペダルの高さを調べたこと。
自分に合う踏み方を試したこと。
踏む位置を変えてみたこと。
試行錯誤を繰り返した末に、こんな言葉が出てきました。
「先生、不思議なんです。ペダルを使うようになったら、楽譜が見えるようになったんです。」
最初は「どういうことだろう?」と思いました。
でも話を聞いていくうちに、その意味がよく分かりました。
以前は、弾くことだけで精一杯だったそうです。
次の音はどこだろう。
次の指は何番だろう。
和音は外さないだろうか。
頭の中はそんなことでいっぱい。
だから、楽譜は見ているようで見えていませんでした。
強弱記号も、スタッカートも、フレーズも、次の小節も、目には入っているはずなのに、脳まで届いていなかったのです。
ところが、ペダルを学び始めてから変化が起きました。
「音はペダルに任せればいい。」
指だけで無理につなげようとしなくても、響きが次の音へ橋を架けてくれる。
そう思えるようになった瞬間、指に余計な力が入らなくなり、次の音を準備する時間が生まれました。
すると不思議なことに、楽譜を見る余裕ができたのです。
「次の小節が見えるんです。」
「強弱記号も目に入るようになりました。」
私はこの言葉を聞いて、とても嬉しくなりました。
ペダルは、ただ音を伸ばすための道具ではありません。
演奏者に「余裕」を作ってくれる道具でもあるのです。
指で全部やろうとすると、頭も体も忙しくなります。
でも、ペダルに任せられる仕事は任せる。
そうすると、耳に余裕が生まれ、目に余裕が生まれ、音楽そのものを味わえるようになっていきます。
ピアノは、頑張ることが大切な場面もたくさんあります。
でも、、時には任せることもありなのです。
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