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飛び込んだ人間だけが知れる電気工事の本当の面白さ|北原社長インタビュー

美容業界の営業マンが、電気工事会社の社長になりました。しかも本人は「興味はなかった」と話しています。

24歳のとき、「稼ぎたい」の気持ちだけで飛び込んだ業界。名刺を目の前で破られ、差し出した缶コーヒーを突き返されながら、それでも楽しさの方が勝ち続けたと話す社長がいます。

電気工事に飛び込んだ人間だけが知れる、本当の面白さとは何か。愛知県名古屋市で55名の社員を率いる株式会社青電社・北原直樹(きたはらなおき)社長に、業界に飛び込むまでの経緯やぶつかった壁、この仕事でしか味わえない瞬間を聞きました。


「稼ぎたい」で踏み出した電気工事の世界

北原社長が新卒で就いたのは、美容業界の営業職でした。まったく業界の違う場所にいた北原社長を誘ったのは、とある親戚だったと話します。

「跡取りがいないから来ないか」
最初は、縁故で入ることを嫌だと感じていた北原社長。
しかし何度か誘いを受けるうちに、電気工事業への一歩を決意します。

2026年現在の社屋外観

「電気工事をやるつもりなんて、さらさらありませんでした。だけどね、幼少期から親を見ていて、『男は稼がなきゃいかん』って気持ちはあって。だったら社長になればいいかと思ったんですよ」

24歳で青電社へ転職。「山をゼロから登るより五合目から登ったほうが、頂上に近いだろう」と先代社長から言われ、納得します。「青電社でやりたいことをやってみよう」と思い、電気工事を学び始めました。

目の前で名刺を破られても缶コーヒーを突き返されても楽しさが勝った

電気工事業界に入った北原社長が驚いたのは、罵声を飛ばす人がいても、それが日常のようになっている現場でした。前職では考えられないような、喧嘩口調の人もよくいたそうです。

「今でこそそんな人はいないけど、30年前はすごかったんですよ。渡した名刺を目の前で破られました。他にも、良かれと思って差し出した缶コーヒーを『俺はこんなの飲まんのよ』ってその場でゴミ箱に捨てられたこともありましたね。『次からは違うやつ持ってきます』って言うしかなかったです」

電気工事で作業する盤内の様子

当時、電気工事は現場の中でも立ち位置が低く、他の工種から不当な扱いを受けるケースも珍しくはありませんでした。土日しか作業できる日がない状態で、工事に入ったこともあったそうです。

しかし北原社長の、青電社を盛り上げようという決意は固く、現場で奮闘します。「跡を継ぐ」という使命感でした。さらに、どんなに土日や深夜に仕事をしても、眠さや疲れよりも楽しさが勝っていたのです。

感電の可能性もあるため、安全確認は欠かせない

「工期が厳しくて、徹夜で仕事したこともありました。会社に仮眠で戻ってきて、A1図面を布団代わりにして寝たんですよ。図面ってペラペラの紙だけど、暖かくて寝心地は最高でしたね。今ではこんなブラックな働き方はできませんが、当時はそれで絆が深まったものですよ」

「電気がついてイラッとする人はいないよね」

電気工事のやりがいは、建物が完成したときだけではありません。その少し前の工程である、電気がついた時が一番のやりがいを感じる瞬間です。

「電気がついたとき、ホッとしますよね。家に帰ったときだって、一番に電気をつけて安心する。まさか電気がついてイラッとする人はいませんよ? これが電気工事の醍醐味。暗闇で作業していたとき、『うわ、電気ついた』って現場の人たちが笑顔になる瞬間、喜びを感じています」

名古屋市科学館鉄道ひろばの電気工事も青電社が携わった

電気工事は、建物を作る工程の中で、終盤が出番です。そのため、建物の電気がつくと、ゴールに近づいた雰囲気が一気に現場に流れると話します。

電気がついて、全員で完工まで走り抜く。トラブルがあって揉めた現場でも、電気がついた後には和解します。そうして繋がった職人・作業員が、数年経って青電社の他の社員と仕事をしている姿もまた、北原社長が嬉しくなる瞬間です。

社員に幸せになってもらうために

青電社では現在、採用に力を入れています。先代社長がゼロから作り上げた会社。北原社長はここから、大きくしていく使命を持っているからです。

社長就任当初は、社員1人あたり毎月5つアイディアをもらっていたと話します。「あそこの荷物が気になる」「暗いので電気をつけたい」のような、小さな課題から着実に取り組みました。オフィスグリコやカフェスペース、マッサージチェアなど、社員が働きやすい環境には支出を惜しみません。

女性社員からの人気が高いカフェスペース

「毎日出社する社員に対して、『今日も来てくれた』と感謝でいっぱいです。私についてきてくれること、そんな当たり前に感謝し続けたい。だから社員のアイディアはすくい上げ、幸せな環境を作りたいですね」

社長の掲げる「幸せな ひとを つくる」の理念です。予算が取れる限り、もっと福利厚生を充実したいと考えています。

ただ、会社を大きくするには課題もあります。それが「そもそも建設業界の魅力が学生に伝わっていない」ということ。業界に興味を持ってもらえるよう、社長自ら広告塔となりSNSで情報発信をし続けます。

社長が学歴よりもコミュ力にこだわる理由

驚くことに、青電社に入社する人のうち、半数は文系学部出身です。北原社長は採用時において、学歴ではなく、笑顔やチャレンジ精神などのフレッシュさを重視しています。

「たくさんの人に接する仕事だからこそ、学歴よりもコミュニケーション能力が大事。バイトリーダーや部活のキャプテンみたいに、社会や人を知る経験をどれだけ積んだかを面接では聞いていますね。コミュ力があれば現場で可愛がられる。知識や能力は、おのずとついてくるものですよ」

50周年を記念して作った青電社オリジナルパーカー

高卒入社の社員を挙げ、協力会社に現場研修を続けている話もありました。1年弱の現場研修の予定でしたが、本人から「職人としてもっと技を身に付けたい」との希望があり、半年間の延長を許可したそうです。北原社長は目を細めながら、「どんな成長をしているか会うのが楽しみで」と期待します。

北原社長自身も、電気を学校で学んだ経験はありません。それでも青電社を、ここまで大きくしてきました。そんな社長が採用で最初に見るのは、学歴ではなくコミュニケーション能力です。

飛び込んだ人間が知れる面白さは、飛び込まないと分かりません。それでもこの話を聞いた後では、その一歩が少し軽くなる気がします。

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