見出し画像

空想映画館・別館|『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』――すべては"れな子が悪いんだよ"に帰結する

れな子が悪いんだよ。

この作品について何千文字語ろうとも、最終的にはたぶんここへ帰ってきます。

真唯さんが重くなった。

紗月さんが陥落した。

紫陽花さんが天使の仮面を脱いで本気を出した。

香穂ちんまで特別なポジションへ入り込んできた。

そして最終的には――

恋人が増えた。

なぜでしょう。

れな子が悪いんだよ。

今回取り上げるのは、

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』

通称『わたなれ』。

タイトルでは「恋人なんてムリムリ!」と全力で拒絶しています。

ところが全17話を観終わった我々は知っています。

ムリじゃなかった。

どころではない。

一人に絞ることすらムリだった。

どうしてこうなった。

れな子が悪いんだよ。


第一章 友達が欲しかっただけなのに、どうしてこうなった

主人公・甘織れな子の願いは、実はかなり慎ましいものでした。

中学時代のぼっちな自分から脱却したい。

高校では陽キャグループに入りたい。

友達を作りたい。

楽しい青春を送りたい。

ただそれだけ。

ところが高校デビューに成功したれな子の前に現れたのが、学園のスーパースター・王塚真唯。

容姿端麗。

現役モデル。

コミュ力最強。

学園カースト頂点。

そんな真唯さんと親友になれた!

やった!

れな子の高校生活、大成功!

……と思ったら。

告白された。

ちょっと待って。

友達どこいった?

『わたなれ』は、ここから始まります。

れな子は友達でいたい。

真唯は恋人になりたい。

だったら友達と恋人、どちらの関係が素晴らしいのか勝負しましょう。

なぜそうなる。

しかも初回から距離が近い。

肌色も多い。

お風呂もある。

水着もある。

「友達と恋人の境界とは何か」というテーマを扱う青春ラブコメなのに、視聴者へ向けたサービス精神だけは初回から一切ムリムリしていません。

ありがとうございます。


第二章 真唯さんが重い? いや、れな子が悪いんだよ

まず最初にれな子へ落ちるのが真唯さん。

真唯さん、強いです。

美人。

人気者。

自信満々。

そしてれな子への好意が巨大。

最初だけ見ていると、

「真唯さん、ちょっと重くない?」

と思うかもしれません。

でも話が進むにつれて分かってきます。

れな子も相当悪い。

真唯さんの弱さに気づく。

寂しさに触れる。

自分だけが知っている顔を見る。

そして本当に辛い時には、ちゃんと真唯さんのそばにいる。

そんなことをしておいて、

「でも恋人はムリ!」

と言う。

そりゃ真唯さんも狂います。

れな子本人は相手を弄んでいるつもりなんて一切ありません。

むしろ誠実であろうとしている。

だからこそ質が悪い。

無自覚です。

れな子が悪いんだよ。


第三章 紗月さんまで攻略してしまう女

続いて琴紗月。

クール。

黒髪。

理知的。

感情をあまり表へ出さない文学少女。

こういうキャラを見ると安心します。

少なくともこの人は、真唯さんみたいにれな子へ振り回されることは――

あります。

普通にあります。

れな子と関わる。

れな子に踏み込まれる。

れな子に特別な顔を見せられる。

赤面する。

はい。

攻略完了。

怖い。

しかもれな子本人は攻略している自覚ゼロです。

紗月さんの意外な一面を引き出し、普段は見せない感情まで引っ張り出しておいて、

「え? なんでそんな反応するの?」

みたいな顔をしている。

お前だよ。

原因、お前だよ。

れな子が悪いんだよ。


第四章 真唯VS紗月――修羅場はご褒美です

そして当然のように訪れる、

真唯VS紗月。

れな子を巡る大激突。

百合ラブコメにおける修羅場。

ありがとうございます。

待っていました。

しかも面白いのが、当のれな子が微妙に被害者ポジションへ逃げ込もうとするところです。

「二人の喧嘩に巻き込まれちゃった!」

みたいな雰囲気を出していますが、

違います。

あなたを巡って争っているんです。

れな子の自業自得です。

ただ、『わたなれ』が巧いのはこの修羅場をヒロイン争奪戦だけで終わらせないところ。

真唯と紗月が本気で衝突したことによって、逆に二人自身の関係も変わっていく。

恋敵。

ライバル。

でも同じ相手を見ているから分かることもある。

そして気がつけば、れな子を巡る三角関係が、真唯と紗月の友情の物語にもなっている。

れな子を中心として、

真唯→れな子。

紗月→れな子。

だけではなく、

真唯↔紗月。

という横の関係まで育っていく。

ここが本作の上手いところです。

百合ハーレムなのに、ヒロイン同士の関係まで濃い。

大変よろしい。


第五章 紫陽花さん、天使が本気を出してきた

そして後半。

ついに満を持して瀬名紫陽花さんのターンがやって来ます。

紫陽花さん。

天使です。

優しい。

柔らかい。

包容力がある。

れな子が疲れた時には癒やしてくれる。

我々も癒やされる。

ここまでは良かった。

しかし『わたなれ』はやってしまいます。

天使に欲を持たせた。

これは駄目です。

強すぎます。

いつも他人を受け止めている紫陽花さん。

でも彼女だって、いつでも誰かを受け止められるわけではない。

弱くなる時もある。

甘えたい時もある。

誰かに選ばれたい時もある。

そして、

れな子に特別な存在として見てもらいたい。

普段の紫陽花さんとは違う顔が少しずつ見えてくる。

その瞬間。

「癒しキャラ」だった紫陽花さんが、一気に「最強ヒロイン」へ変わります。

これはずるい。


第六章 二人きりの温泉旅行。何も起きないわけがない

そして始まる紫陽花さんとの家出旅行。

二人きり。

温泉。

お泊まり。

この単語を並べて、

「何も起きませんでした!」

だったら、そちらの方が問題です。

もちろん起きます。

いつもは天使のような紫陽花さんが、れな子の前で弱さを見せる。

甘える。

自分の気持ちを出す。

普段なら絶対に見せない部分まで見せてくる。

しかもこの関係が素晴らしいのは、一方的な攻略ではないこと。

れな子はずっと紫陽花さんに救われてきた。

でも紫陽花さんもまた、れな子に救われている。

相互救済なんですよ。

そりゃ強い。

ここまで来たら、

「もうれな子ちゃんは紫陽花さんのモノになっちゃえばいいのでは?」

くらいに思えてきます。

そしてTV放送第12話までの物語は、紫陽花さんとの関係へしっかり焦点を当てて一区切り。

完全無欠の紫陽花さんEND。

ありがとうございます。

もう思い残すことはありません。

……と思っていました。

12話までは。


第七章 まだ終わってない!? 第13〜17話『ネクストシャイン!』

TVシリーズ第12話で満足して帰ろうとした視聴者へ、スタッフは言います。

待て。

まだ帰るな。

香穂ちんがいる。

第12話から直接続く第13〜17話。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)~ネクストシャイン!~』として描かれた追加エピソードです。

ここから物語の中心へ出てくるのが、

小柳香穂。

それまでの香穂ちんは、クインテットのムードメーカーという印象が強いキャラクターでした。

明るい。

小柄。

ノリがいい。

真唯さん大好き。

いわゆる賑やかし枠かな?

……なんて思っていたら。

とんでもない隠し玉でした。


第八章 香穂ちん、お前まで重要ヒロインだったのか

香穂編で明かされるのが、

れな子と香穂の過去。

実は二人には子供時代から接点があった。

しかも面白いのが、二人が似ていることです。

れな子は「ぼっちだった自分」を隠し、陽キャとして高校デビューした。

香穂もまた、明るい自分を演じながら周囲へ合わせてきたところがある。

つまり、

二人とも“なりたい自分”を演じながら生きている。

ここで香穂ちんが単なる追加ヒロインではなくなります。

れな子の過去を知り、

れな子の弱さを理解し、

しかも自分自身も似たものを抱えている。

強い。

なんだこの作品。

攻略対象がどんどん増える。

れな子が悪いんだよ。


第九章 『わたなれ』、突然コスプレアニメになる

そして香穂ちん編ではコスプレが重要になります。

香穂ちんが心から好きなもの。

それがコスプレ。

そこへれな子も巻き込まれていく。

撮影。

衣装。

謎のれな子魔改造計画。

さらに、

二人きりのラブホ女子会。

そして、

またお風呂。

このアニメ、何か大事な感情を語る前には一度ヒロインを風呂へ入れないと気が済まないのでしょうか。

真唯。

紫陽花さん。

香穂ちん。

人間関係が進展する場所に、妙に湯気が多い。

嫌いじゃないです。

むしろもっとやってください。


第十章 香穂ちんの「好き」が、れな子を変える

でも香穂編の本当の意味は、単なる新ヒロイン攻略ではありません。

この時のれな子は、

真唯さん。

紫陽花さん。

二人から向けられる好意の間で完全に立ち往生しています。

どちらかを選べば、どちらかを傷つける。

グループの関係だって壊れるかもしれない。

だったら決めない。

逃げたい。

れな子らしい。

そんなれな子が触れるのが、香穂ちんの「好き」です。

香穂ちんは、自分の好きなものに向き合う。

怖くてもやる。

自信がなくても踏み出す。

他人からどう見られるかより、

自分が好きだからやる。

その姿を間近で見ることで、れな子もまた自分自身の「好き」から逃げ続けることができなくなります。

つまり香穂編は寄り道ではない。

最終回答へたどり着くための物語だった。

ここが実に上手い。


第十一章 究極の二択。れな子の答えは――両方

さて。

問題です。

真唯さんが好きです。

紫陽花さんも好きです。

どちらか一人を選ばなければなりません。

あなたならどうしますか?

A:真唯さん。

B:紫陽花さん。

C:どちらも選ばない。

普通のラブコメなら、このどれかです。

ところがれな子は違います。

D:両方。

来た。

究極の力技。

真唯さんも好き。

紫陽花さんも好き。

だったら二人とも恋人にすればいい。

……そう来たか。

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!』

から始まった女が、

恋人を二人作りました。

もうタイトル回収の規模がおかしい。

ムリじゃなかった!?

本当にムリじゃなかった。

むしろ想定以上にムリじゃなかった。


第十二章 そしてハーレムENDへ――まだ増える気ですか?

ただし、恐ろしいのはここからです。

真唯。

紫陽花さん。

はい、恋人が二人できました。

めでたしめでたし。

……ではない。

まだいます。

紗月さんがいる。

香穂ちんがいる。

そしてこの二人も、もう明らかに「普通の友達」だけでは片づけられないポジションにいる。

特に紗月さん。

これまで散々れな子を冷静に分析し、ときには容赦なくツッコミを入れてきた彼女まで、最終的には完全に無関係ではいられなくなる。

そして香穂ちんも、ただの友達へ戻るには関係性が深すぎる。

つまり、

真唯。

紫陽花。

紗月。

香穂。

全員いる。

第1話のれな子。

「友達が欲しい!」

第17話のれな子。

百合ハーレムができました。

どうしてそうなった。

れな子が悪いんだよ。


第十三章 れな子は本当に「悪い」のか?

もちろん、本気でれな子を責めているわけではありません。

むしろ、

「れな子が悪いんだよ」

は最大級の褒め言葉です。

れな子は女の子を弄ぶ悪女ではない。

ハーレムを作ろうともしていない。

むしろ毎回、本気で悩んでいる。

真唯を傷つけたくない。

紫陽花さんも傷つけたくない。

紗月さんも大切。

香穂ちんも大切。

全部本心。

問題は、

全員に対して本気で誠実であろうとした結果、全員を特別にしてしまったこと。

そこなのです。

計算ではない。

策略でもない。

天然。

だから強い。

真唯さんの完璧さを壊した。

紗月さんのクールさを壊した。

紫陽花さんの天使の仮面を剥がした。

香穂ちんの素顔にも踏み込んだ。

そして最後には、

「恋人なんてムリ」

と言っていた自分自身まで変えた。

全部の中心に、れな子がいる。

だから、

れな子が悪いんだよ。


第十四章 『わたなれ』は“距離感”のアニメだった

『わたなれ』を単純に説明すれば、百合ラブコメです。

可愛い女の子。

サービス多め。

修羅場あり。

温泉あり。

お風呂あり。

ラブホ女子会まであり。

とても楽しい。

でも、その根底にあるものは一貫しています。

人との距離をどう決めるか。

友達。

親友。

恋人。

好きな人。

大切な人。

本当にそこには、明確な境界線があるのでしょうか。

恋人じゃなければ特別ではないのか。

一人だけを選ばなければ、それは愛ではないのか。

れな子は、その境界線を何度も踏み越えていく。

というより、

最終的には境界線そのものを壊してしまいます。

「友達だからここまで」

「恋人だからここから」

ではなく、

私はあなたが大切。

その感情から関係性を作り直していく。

だから本作のハーレム的な結末も、単なるご都合主義だけではありません。

最初からずっと続いていた「友達と恋人の境界とは何か」というテーマの、ある意味とんでもなく極端な回答なのです。


最終章 ムリムリだった女が、全員幸せにしようとするまで

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』。

タイトル通り、

最初のれな子は「ムリムリ」ばかりでした。

友達を作るのが怖い。

昔の自分を知られるのが怖い。

嫌われるのが怖い。

誰かの特別になるのが怖い。

恋人なんてムリ。

自分なんかムリ。

でも17話かけて、れな子は少しずつ変わっていきます。

そして最後に出した答えが、

「私なんかムリ」

ではなく、

「自分がみんなを幸せにする」

なのだから、ものすごい成長です。

その結果、

恋人が二人できました。

さらに増えそうです。

成長の方向として正しいのかは知りません。

でも本人たちが幸せならいいじゃないですか。

真唯さんが狂うのも。

紗月さんが崩れるのも。

紫陽花さんが本気になるのも。

香穂ちんがもう一度れな子へ近づくのも。

最終的に百合ハーレムへ到達するのも。

全部まとめて、

れな子が悪いんだよ。

でも。

それがいい。

れな子が悪いから面白い。

れな子が悪いから、みんな可愛い。

れな子が悪いから、関係性が動き続ける。

ムリムリ?

いやいや。

全然ムリじゃなかった。

むしろ今となっては、

どこまで増えるのか見届けたい。

そんな作品なのでした。


#アニメ感想文
#わたしが恋人になれるわけないじゃんムリムリ
#わたなれ
#わたなれアニメ
#百合アニメ
#空想映画館
#空想映画館別館


関連記事


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集