実写版マリオカート
マリオカートというゲームをしたことのある人は多いと思うの。レースのゲームだけど、走りながらライバルを亀とかバナナの皮だとかのアイテムで蹴落として遊ぶの。バナナの皮を踏むと、カートはスリップしてくるくる回る。ただ走るのが早いだけでは勝てなくて、アイテムの上手い使い方とか運の要素もある。本当によくできたゲームだと思う。他人を蹴落として勝つことばかり考えるようになるから、熟練すると性格が悪くなる可能性はある。昔の人が言ったように、夢見る少女じゃいられない。善人のままじゃ、まず勝てない。
二十年くらい昔、ニューヨークで暮らしていた頃、ミッドタウンイーストのアパートメントに住んでいた友達がいた。彼女がある日なんとはなしに言ったのは、
この前家を出たら、家の前にバナナの皮が大量に散乱してた。どうやら、近所でマラソン大会があったんだけど、途中でバナナが配られたかららしい。
ということだったの。
咄嗟にマリオカート、連想したよね。なにそれ、怖い。油断も隙もあったもんじゃない。罠だらけの恐ろしい世界……

でも、現実にはバナナの皮で車はスリップしないわよね? そもそも、バナナの皮で人が転ぶなんて最初に言い出したのはどこの誰よ。タンタンの冒険のコミックにバナナの皮で滑るシーンがあったから、相当古いわよね。もとは海外のネタなの? チャップリンが元祖? でも、どういう発想?
転ぶわけないじゃーん。
そう、思っていたのよ。
でもね、その話を聞いてからしばらくして、ある小雨が降ってる冬の初めの午後、ニューヨークのブライアントパークのゴミ箱のそばで、私、バナナの皮を踏んで滑って転んだの。
マラソン大会ではないから、バナナの皮は一つだけだった。たぶん、誰かがバナナを食べたあと、皮をゴミ箱に投げて、狙いが外れたんだろね。それにしても、そんなんで転ぶ?
小雨で注意は散漫になってたし、濡れた歩道と、履いていたおろしたてのブーツの相性が悪かったのかもしれない。それでも私に尻餅をつかせたのは、紛れもなくバナナの皮だったの。ものの見事につるっといったわ。
通常日本の道にバナナの皮は落ちていないから、日本人は踏んだ経験もなしにバナナの皮の威力をバカにしてるんだろうね。
バナナの皮で、本当に人は転ぶ。
そしてニューヨーカー、外でバナナ食べがち。代々木公園や日比谷公園だと外でバナナ食べてる人あんまりいないと思うけど、ブライアントパークにはアウトドア派のバナナ愛好家がおそらくたくさんやってくる。
お尻の痛みよりも何よりも、バナナの皮なんぞで転んでしまった自分のベタさ加減が恥ずかしかった。なに私、昔の漫画みたいなことやってんのよ……そっちのダメージがすごかった。
みなさんも摩天楼を歩く際には犬のフンとバナナの皮にお気をつけてくださいませ。
高いビルに気を取られて上ばかり見ていると、足元を掬われますぜ。
あ、でも私、まだ亀の甲羅はぶつけられたことない。赤甲羅でも緑甲羅でも青甲羅でも何でもいいので、経験者がいたら、ぜひコメントしてほしいです!!

私が思っているよりこの世には破天荒な人が多いのだと思う。業務用って、職場は竜宮城?
