1~100までの数字はビジネス書のタイトルに全て存在しているのか
どうも……

シャカ夫です。
シンプルかつインテリチックな装丁に、どこかで聞いたことのある煽り文……。
ビジネス書や教養書は、どれも似たようなものに見えがちだ。
だからこそ、これらの本にとってはタイトルこそが我々に最も雄弁に語りかける要素のひとつである。
読者が手に取るか否かは、いかに魅力的で内容が気になるタイトルであるかにかかっているといってもいい。
完璧な訴求力を目指すからこそ、出版社はタイトルの精査に心血を注ぐのだ。
特に、タイトルにあしらわれた「数字」はきわめて重要だ。
『7つの習慣』とくれば、人生に重要な7つの習慣を説いてくれるんだ、とひと目でわかる。
そして、たった7つの習慣を守るだけで成功者に近づけるなら、と手に取って読んでみたくなるだろう。

『成功の法則100ヶ条』というタイトルでは、100という数の大きさが説得力を増している。
100個は決して少なくはない。だが、それさえ覚えきれば本当に成功することができるのでないか、という心理がこの本のページをめくらせるだろう。

大小によらず、書籍のタイトルに使われる「数字」たちは、我々が本の中身を読む前から強い訴求力を発揮しているのである。
所在なく書店をうろつくタイプの私のような人間ですら、タイトルだけで思わず手に取ってしまうほどに。
そこで、私は考えた。
それぞれのビジネス書が、それぞれの魅力を最大限に伝えるための数字をタイトルに冠しているのなら、その数字の種類も本によって多岐にわたるはず。
つまり……

この疑問を抱いてから約1時間、私は池袋駅の改札をくぐっていた。

「ジュンク堂書店 池袋本店」。
売り場面積は2001坪、私の実家の畑の約50倍の面積である。
これは毎年300人にししとうとナス、キュウリ、じゃがいもを振る舞える計算になる。今年の夏が楽しみというものだ。
ジュンク堂池袋店ではワンフロアが丸々ビジネスコーナーになっており、そこには人の一生では読み切ることができないであろう量の実用書がズラっと並んでいる。


フロアについたらすぐさま「タイトル数字」が目に飛び込んでくる。
『20代からの仕事の教科書』『40代からの仕事の壁を越える』『人生は28歳までに決まる!』etc……

話題書エリアだけでこの充実具合。ここなら、1~100までの数字を見つけるなど、ものの2時間ほどで可能だろう。
さっそく、検証開始だ。
ちなみに、今回の企画では書籍のタイトルをネットで検索したり、書店内での索引機能を使うような姑息な真似はしない。
タイトルとは、そしてそれに入れ込まれる数字とは、棚に並んでいるときに輝いてこそ。逆引きのような本末転倒を犯すわけにはいかないのだ。
それでは、奥のコーナーから順に物色していくことにしよう。

こうして背表紙を見渡すと、1つの棚の書籍から複数の数字が見つかるなんてのもザラにある。

意外と中途半端な数字がポコポコ見つかるのは興味深い。
基本的にはキリの良い数字の方がシンプルな訴求力が高くなるため、端数がついたタイトルはレアになるはずである。
10以下の小さい数字や、逆に90以上の大きな数字もわかりやすくもてはやされるだろう。課題は常に「間の数字」に潜むのだ。

しかし当初の不安も、こういった中途半端な数たちが出てくるたびにやわらいでいく。


「利益率29%」、これをちょっと盛って30%にしないところに著者様の誠実さが垣間見えるというものだ。実にありがたい。
そして、開始30分で見つけた数字タイトルは以下のようになった。

ここまでで、すでに34冊。1分に1冊以上は見つかっている計算だ。まさしくトントン拍子。
(被った数字に関しては、印象的なものではない限り基本的に網羅せずに省略しております)
この時点ですでに、ビジネス書や教養書の「タイトル数字」の多様性が読み取れる。
『コーチ52選』みたいな、「え、そんなんでいいの?」という感じのドストレートタイトルまであるのだから、世界は広い。

現在までの分布を色で可視化すると以下のようになった。

前半とキリ番が多いのは予想通り。一方で、訴求力が高そうな90番台が出てきていないのは少々不穏といったところか。
とはいえ、オセロならすでにほぼ勝ち確定の盤面、かなり健闘している。
この調子でいけば日が暮れるまでには撤収することができそうだ。
本日取材にかけることができる時間は残り3時間30分。気を抜かずに頑張っていこう。
物色すべき棚はまだまだあるのだが、次々に現れるタイトルの数字が私の背中を押してくれる。

『図解 インド経済大全全11産業分野73産業』――1冊で今まで出てきていない端数を2つ獲得できるファインプレーだ。
73産業を解説している割にはちょっと薄そうなのは少々気になるが、中身を精査するほどの時間的余裕は今の私にはない。

全体的にごちゃごちゃしている表紙だが、今の私は隠された83を見逃さない。
レア数字は一期一会、1冊たりとも気を抜いてはいけないのだ。

めちゃくちゃ上から目線のタイトルだが、「34」はかなりありがたい。
筆者が出会ったアメリカ人がめちゃくちゃあつかいにくかったおかげで、レア数字獲得だ。

「36協定」など、法令の条数も今回の企画では大きな恵みとなる。
年齢、金額、年数……数字が語るものは実に様々だ。

こういった数字タイトルの連打も珍しくない。
さしずめ、ビジネス書コーナーという巨大な砂漠に点在するオアシスと言ったところか。

豊作も豊作、当初かすかに抱いていた不安も霧消する成果だ。
そして、開始から2時間、これだけの数字が集まった。


ここまでで68の数字が集まった。
スタート時と比べると失速こそしているが、着実に進んでおり、前半部の残りはすでに数えるほどしかなくなってきている。
本日の撤収までにまだ2時間あるので、終わりが見えてきたとすら言えるだろう。
実に気分がいい。
このあとは映画でも観てから帰ることにしようか。

しかし急転直下、2時間を越えたあたりから、数々の苦難が私に重くのしかかる。
まず、シンプルに新規数字の減少。
ここまで調子が良かったのは、まっさらな空欄を埋めていたからに過ぎなかったのである。
そして、それに伴う既存数字の増加。被りが増えれば増えるほど、徒労感が心を支配していく。
極めつけは数字への過剰反応だ。
数字を見つけよう見つけようとすると、数字に対する神経が過敏になり、明らかに既存の数字にも反応してがっかりする機会が多くなってしまうのだ。

上のような「〇〇部突破!」といった数字にも体が反応してしまうようになった。これ、治るんでしょうかね……?
肉体的負荷も馬鹿にできない。
本棚の上から一番下まで眺める際に立ったり座ったりを繰り返し、その数は1日で100回あまり。
これ、実は一番キツいタイプのスクワットと全く同じ動きなのである。太ももはすっかりパンパンになり、その疲労がさらに作業を遅らせる。


この時間帯の唯一の成果は「〇〇を知るための~~章」シリーズの鉱脈を掘り当てたことだろうか。
このシリーズ、世界の国や地域ごとに出版されているうえ、50~70ぐらいのちょうどいい章数になっているおかげで、残っていた数字がかなり埋まったのだ。

とはいえそれだけでは後半の大失速をカバーすることはできず、4時間丸々使っての進捗は以下のようになった。


ここまで見つけたタイトル数字は84個。
総数だけ見るとかなり探し当てたように見えるが、ここ2時間で新たに発見されたのがわずか16個であると考えると、残り全てを見つけきるのに相当な時間をかける必要があるのは火を見るよりも明らかだろう。
というか、本当に100個見つけきることができるのか……?
ここで初めて、根源的な不安が胸をよぎる。
次の日も本屋で半日を過ごす覚悟を決め、私は重い足取りで帰路についた。
1週間後の池袋も、実に過ごしやすい春の日だった。カフェで一息つきたい陽気だが、残り16タイトルを見つけるには寄り道などしている暇なんてない。

最後は向かい風で1日目を終えたわけだが、まだ希望がなくなったわけではない。
1日目で探索できた棚はビジネス書コーナーの4分の1に過ぎないため、昨日の「〇〇を知るための~~章」シリーズのような鉱脈がまだ隠されているかもしれないのだ。

そして、しばらくタイトル数字から離れたことで脳がリフレッシュされたのか、既出の数字にいちいち反応しなくなっていた。
これで、過剰なストレスに悩まされることはないだろう。
よし、気を取り直して、今日で残りの16冊を見つけてやるぞ!

ジュンク堂池袋本店で2時間格闘した結果がこちら。

そう、2時間かけて進捗は0冊。
心が砕ける音がした。
本棚を漁る速度は格段に上がったため、短時間で残りの棚を全て確認することはできたが、進捗は全くなし。
それらの棚が法律や就活系という比較的数字が出てこないジャンルの書籍が多かったのも不運だったのかも知れない。
ここで私は大きなテコ入れが必要と決断。ジュンク堂池袋本店に深々と礼をしたあと、池袋をあとにした。
そして、たどり着いた先がこちら。

紀伊國屋書店新宿本店だ。
都心のど真ん中に位置する大型書店で、内観は一部ショッピングモールみたいになっている。蔵書の豊富さは言わずもがなだ。

当初はジュンク堂さんだけで100冊を見つけるつもりだったのだが、背に腹は代えられない。店舗を変え、心機一転数字タイトルたちに向き合うのだ。

自己啓発・ビジネス書コーナーの雰囲気自体はジュンク堂さんとあまり変わらないが、その内容には書店ごとに個性があることをすぐさま察知。
ここなら残りの16冊がそろうのでは、と期待を胸に数字タイトルを探し始めると……

ある!

ある!

今まで出てこなかった数字が、サックサク見つかる!
紀伊國屋書店さんは数字タイトルのバリエーションが豊富なのかも知れない。お店を変えるだけでここまで品揃えが一変するとは……。
先ほどまでの停滞は嘘のよう。次々と数字を見つけ出した結果、紀伊國屋入店2時間でリストは次のようになった……


そう、99個の数字タイトルが見つかり、残るは「74」のみとなったのだ。
『図解 インド経済大全全11産業分野73産業』の次の数字と考えると、かなり見つかりそう。
本当に紀伊國屋に来てよかった。
ビジネス書の売り場面積自体はジュンク堂書店とさして変わらないにも関わらず、蔵書の種類にかなり差があったのだ。
そのおかげで、「ジュンク堂にあって紀伊國屋に無い」も「紀伊國屋にあってジュンク堂に無い」もどちらも数多く存在していた。
最初から、複数書店を回るのが想定されていたチャレンジだったわけである。

最後の1冊「74」を探し出すため、紀伊國屋書店を駆けずり回る、私。
最初のビジネス・自己啓発書フロアにないことがわかると、上のフロアに散らばった同ジャンルの教養書を物色していく。
そして、もといた場所から3フロア上がった売り場にたどり着くと、ついにその瞬間は訪れたのだ。



『74の注目判例に学ぶ医療訴訟対策の勘所』、これがタイトル数字を探す旅、最後のピースだった。
少々専門性が高い書籍だが、まぁよしとしよう! ビジネスにも教養にも関係あるしね。
というわけで、記念に購入。

税込み6600円と少々お高くなってはいるが、100個のタイトル数字を見つけた達成感の前では金銭感覚なんて簡単にバカになってしまうものだ。
以下に、書店に並ぶビジネス・教養書のタイトルから見つかった1~100までの数字を示す。

1~100までの全ての数字が、確かに本のタイトルに登場することが実証された。
それぞれの数字が、ベストマッチするビジネス書を1冊はもっているのだ。
そして逆に言えば、タイトルとして訴求すべき内容に見合った数字が、それぞれの本においてきっと存在しているということがわかったのだ。
ここからの目標は、この100冊を全部買って読了することになるだろう。
地道に挑んでいきたい。

ひとまずは、医療訴訟に徹底的に詳しくなるところから、か。










