見出し画像

その判断、本当に自分で決めましたか? ― MBTI、占い、AIの話

「MBTI、なんですか?」
ときどき仕事の場でも聞かれるこの話題。

「ISFJ、ですかね。たしか」
と答えると、
「あー、やっぱり!」
と返ってくる。

やっぱり、ってなんだろう。

エンタメとしては嫌いじゃない。
気になるのは、MBTIが人を見立てる“ものさし”みたいに使われていることだ。

私は仕事柄、初めての業界や、初対面の経営者と向き合うことが多い。
当然、最初は相手のことなんて何もわからない。
わからないと、不安になる。

そんなとき、この人はこういう人とわかるものがあれば、たしかに便利だ。

「MBTIは何なんだろう」
「生年月日を調べて、相性でも見てみる?」

わかる。すごくわかる。
新しいことに挑むときほど、人は“正解っぽいもの”が欲しくなる。
でも今日は、その手を一回止める話をしたい。

「当たってる」の正体

MBTIの診断結果を読むと、「わかるー!」となる。でも、本当にあなた自身を言い当ててるのだろうか。

たとえばISFJの解説をみるとこう書いてあった。

ISFJ型は、多彩な才能を持ち合わせた、何事も成し遂げる実行力のある性格タイプです。繊細で思いやりのある性格でありながら、優れた分析力と細部への目配りも備えています。

16personalities「IFJ 擁護者」の性格より

これ、否定できる人います?

「多彩な才能があり、実行力もあるタイプです」

そんなことを言われたら、ちょっと嬉しい。私ってそうなのかも、と思う。当たってるじゃん!と。

でもこれ、本当に「自分だけ」をピシャリと当てているんだろうか。
人間には、誰にでもある程度当てはまりそうな説明でも、「これは自分のことだ」と感じやすい性質がある。心理学ではバーナム効果と呼ばれる。

「大雑把な面もあるけど繊細なところもあります」「計画的に物事を進める人です」と言われれば、そのときの自分を思い出して「たしかに」となる。

当たりは拾う。外れはスルーする。

これは、確証バイアス

要するに、診断が自分を映しているというより、診断の中に自分を探している。

ちなみにMBTIは、自分で質問に答える自己評価だ。
受け直せばタイプが変わる人もいる。

その診断結果を鵜呑みにして、目の前の人の本音や、自分との仕事の相性を信じてもいいのだろうか。

占い、信じますか?

私の中では、この話の延長線上に占いもある。

「今年は大殺界だから、入籍やめとこうと思って」

そんな話を聞くと、

いや、あなたと相手の人生やん。と思う。

仮に大殺界だとして、次の大殺界はどうすんねん、とも。

MBTIと占いは全然違う。でも、

「私はINFPだから、この仕事は向いていない」
「今年は運気が悪いから、動かない」

となった瞬間、「それで良いのかな?」と思う。構造は同じじゃないですか?

自分で考えて決めることを、外の何かに明け渡している。

もちろん、MBTIも占いも、楽しむのは個人の自由だ。

「INFPだから無理」
「大殺界だからやらない」

は、便利だ。やらない理由の言い訳として。
ただ、それだと思考停止している気がしてしまうのは私だけだろうか。

で、それって一速ギアが入るんですか

新しい挑戦は、不安だ。
新しい業界。新しい人。初めてのプロジェクト。

「失敗したくない。」だから、何かに「大丈夫」と言ってほしくなる。

でも、MBTIの結果は、そのプロジェクトの“一速”を入れてはくれない。

星回りがいいからって、商談は決まらない。
MBTIの相性が良いからって、段取りが悪ければ炎上は免れない。

結局、商談を進めるのも、プロジェクトを前に進めるのも、自分たちの判断と行動だ。

商談なら、
「この人ENTJだから、結論から話そう」
なんて計算するより、
「さっき数字の話をした瞬間、前のめりになった」
の方がよほど重要だ。

MBTIより、その場で拾った一次情報。今日のその人の声、目線、間。

ひとつだけ大事にしたいのは、「なんか違うな」という感覚。オカルトじゃなく、自分が実際に見て、聞いて、経験したことから生まれた勘だ。
これだけは簡単に無視しない方がいい。

MBTIの4つの記号に現実を合わせにいくより、

「目の前の相手は、何に引っかかっているんだろう」
と考える方が、たぶん次に進める。

自分の足で動く。自分の目で確かめる。
そして、最後は自分で決める。

新しいことの一速ギアって、結局そこからしか入らない気がしている。

ISFJじゃありません

ちなみに、冒頭で「ISFJ」と書いたが、たぶん違う。というか、一度もその結果が出たことはない。
私自身、MBTIに当てはめられたくないので、本当の診断結果は伏せておく。

「このタイプでしょ」とわかる人がいたら、ぜひコメントで教えてほしい。

そして最近、これとよく似た怖さを別のところでも感じている。

AIだ。

仕事でも日常でも、誰もがなんでもAIに聞くようになった。

「この企画、どう思う?」
「転職した方がいい?」
「この人とは相性がいい?」
「AとB、どっちを選ぶべき?」

AIは答えてくれる。

しかも、文章はきれい。理由もある。こちらの状況まで踏まえて、「あなたの場合はこちらがいいでしょう」と言ってくる。

ものすごーーく、もっともらしい。

だからこそ、MBTIや占いより厄介かもしれない。

占いは統計と言いつつ科学の顔をしていないから、まだ疑う余地があった。MBTIも「本当にそう?」と考えられる。

でもAIは、だいたい合っている。だから、混じっている外れに気づきにくい。

そしてもっと怖いのは、間違っているかどうか以前に、自分で考えて決めるはずだったことまで、AIに決めてもらえてしまうことだと思う。

MBTI、占い、AI。

全然違うものだけど、不安なときに「外の何かに判断を預けたくなる」という、人間側の問題は同じだ。

しかも最後のやつは、もう毎日横にいる。
あなたも、仕事の相棒として、プロジェクトメンバーよりも密にコミュニケーションをとっていない?
もちろん、使えばいい。便利なものは使えばいい。
でも、材料をもらうことと、決めてもらうことは違う。

自分で見て、自分の頭で考えて、最後は自分で決める。
一速ギアは、外にある「正解」を見つけたときじゃない。

「じゃあ、やってみよう」と自分たちで決めた瞬間に入る。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集