連載企画 AIOをハックしてみよう その2
前回から始まった、AIO(AI Optimization。生成AIの回答に自社を露出させる最適化)の研究レポート。
SEOをほとんど手つかずのまま10年近くやってきた中小開発会社が、AI経由のインバウンドを取りにいけるのか、という実験企画です。
前回のおさらい
第一回でやったのは、現在地の測定でした。
「企業のWeb担当者が、予算300万円で会員管理システムの開発会社を探している」というペルソナを設定し、ChatGPT・Claude・Geminiの3つに「おすすめのシステム開発会社を教えてください」と聞いてみました。
結果は惨敗。
どのAIの回答にも、弊社ShareDanの提示はありませんでした。
そして前回、宿題を2つ残しています。
ひとつは「なぜ弊社はどのAIにも引っかからなかったのか」。
各AIに「この結果を出すにあたって参考にしたリソースを教えてください」と追い打ちをかけて情報ソースを吐かせているので、今回はそれを解剖します。
もうひとつは、Claudeがこちらの文脈を把握した状態での回答になっていた問題。素の状態での再検証です。
今回はこの2つを片付けつつ、地域を絞ったプロンプトも試してみます。
まずは目標(KPI)を決めておく
その前に、ひとつ大事なことをやっておきます。目標設定です。
前回「現在地を測定した」と言っておきながら、どこを目指すのかを決めていませんでした。 ダイエットで体重計に乗ったのに、目標体重を決めていないのと同じ状態です。
これでは何をもって成功と呼ぶのかがわからず、施策を打っても打ちっぱなしになります。
というわけで、この連載で追いかけるKPI(目標指標)を3つ設定します。
ひとつめは、前回と同じプロンプトで弊社ShareDanが表示されること。
これがAIOの直接的な成果指標です。
前回さっぱりだったので、まずは一番わかりやすい指標として設定します。
ふたつめは、「AIで探して見つけたので問い合わせました」という連絡が来ること。
これが最終的なゴールです。AIの回答に出てくること自体は手段でしかなく、案件につながらなければ意味がありません。
この連絡が1本でも来たら、私はその日、小躍りして喜びます。
みっつめは、SEO側の指標として、社名を除いた非指名クエリの表示回数とクリック数を2倍にすること。
ここで「非指名クエリ」とわざわざ限定しているのには理由があります。
前回のデータでは、クリック上位が「sharedan」「シェアダン」「株式会社sharedan」と社名ばかりで、この3つだけで合計205クリックありました。
ただ、社名検索は弊社を既に知っている人の行動なので、いくら増えても新しい出会いにはなりません。
増やしたいのは「web制作会社」「ホームページ 相見積もり」のような、弊社を知らない人が使うキーワードの方です。
そこで社名を除いて合計してみると、直近3ヶ月で表示回数が約840回、クリック数が18クリック。これが基準線(ベースライン)になります。
目標は、これを表示1,700回・36クリックまで持っていくこと。
個別のキーワードごとに追うと、1クリックが2クリックになっただけで「2倍達成」になってしまうので、あくまで合計値で見ていきます。
ちなみに、この840回の中には弊社とまったく関係のない社名での表示が混じっています。
一番多いものは183回も表示されていました。
なぜ弊社のサイトがその検索結果に出てくるのか私にもわからないので、これは別途調査案件です。
そのあたりを除いて、実際に見込み客につながりそうなキーワードだけに絞ると、表示回数は半分程度になります。
基準線の実態はもっと厳しい、ということですね。
3つめだけSEOの指標を混ぜているのも意図があります。
AIが参照している情報源は、結局のところWeb上のコンテンツです。
検索で見つけられる状態を作ることと、AIに拾われる状態を作ることは、根っこの部分で地続きなのではないかという仮説を持っているからです。
この仮説が正しいかどうかも、連載の中で検証できればと思っています。
なお、正直に書いておくと、ひとつめのKPIには測定上の弱点があります。 生成AIの回答は毎回変わりますし、同じプロンプトでも聞くタイミングや履歴によって結果がぶれます。
検索順位のように「今日は何位」と確定できる世界ではないのです。 なので1回表示されただけで「AIO成功!」と胸を張るのは、正直フェアではありません。
このあたりは複数回試すなり、時期をずらして確認するなり、なるべく誠実に扱っていくつもりです。
まっさらな状態で、もう一度聞いてみた
さて、宿題のひとつめです。
前回の記事を書いたあと、私はひとつ致命的なことに気づきました。
普段からChatGPTを経営分析の壁打ち相手に使っていて、弊社の情報をさんざん食わせていたのです。
決算資料もミッションも中期計画も渡しています。
つまり前回のChatGPTの回答は、弊社をよく知っている状態のAIが出したものだった可能性が高い。これでは公平な現在地測定になりません。
Claudeの汚染を告白しておきながら、自分の足元がもっと汚染されていたわけです。お恥ずかしい限りですね。
そこで今回は、弊社の情報を一切与えていないまっさらな状態で、あらためて聞き直しました。
結果、前回とは違う4社が挙がってきましたが、弊社がいないという点は変わりませんでした。
汚染されていようがいまいが、出てこないものは出てこない。それはそれで、データとしては安心材料です。
そして参照リソースを聞いてみると、興味深い回答が返ってきました。
挙げてきたのは提示した1社の公式サイトのみで、「最新の比較サイトや調査レポートを横断的に調査したわけではなく、一般的なシステム開発の知識と各社の公開情報をもとに例示した」と正直に説明してきたのです。
つまり全国区で漠然と聞いた場合、ChatGPTはまとめサイトをほとんど見ずに、一般知識と個別企業の公式サイトで組み立てていた、ということになります。
「台東区で探してください」と絞ってみた
ここで、プロンプトに一手間加えてみます。 前回の質問に続けて「台東区で探してください」と地域を限定してみました。
弊社の所在地は浅草橋、つまり台東区です。
全国の開発会社と戦うのは荷が重いですが、地元縛りのハンデ戦なら、さすがに引っかかってくれるんじゃないかという淡い期待を込めて。
ChatGPTの場合
まず、まっさらな状態のChatGPTに台東区限定で聞き直してみました。
株式会社エン・PCサービス、合同会社FIRE、株式会社レイグローブ、株式会社アイエムシー、フェアシステム株式会社の5社を、おすすめ度(星の数)つきで提示。
そのうえで「新しいサービス+会員管理システム」ならエン・PCサービス、レイグローブ、FIREの3社が候補になりやすい、と絞り込んでくれました。
さらに、聞いてもいないのに「会員管理システムの開発実績を明確に打ち出している会社は台東区内ではそれほど多くない。
上野・秋葉原・浅草橋を含む周辺(千代田区・中央区・文京区)まで広げれば、候補が10〜20社ほど増える」とアドバイスまでしてきます。
浅草橋という地名まで出てきているのに、その浅草橋にいる弊社は登場しません。惜しい。実に惜しいです。
参照リソースを聞くと、今度は各社の公式サイトに加えて、比較ビズのエン・PCサービス紹介ページと、発注ナビの「台東区(上野・浅草)でおすすめのシステム開発会社」という特集記事を挙げてきました。
全国版では公式サイト中心だったのに、地域を絞った瞬間、比較サイトを見に行き始めたわけです。
同じAIでも、質問の粒度ひとつで参照先が変わる。これは予想以上でした。
Geminiの場合
続いてGeminiです。
「蔵前・浅草・上野周辺には柔軟な中小開発会社が集まっている」という前置きから入り、株式会社エン・PCサービス(蔵前)、株式会社スプリングボード(上野)、株式会社ケイツー・インタラクティブ(浅草)、株式会社LIG(小島)の4社を、所在地つきで提示してきました。
「対面で要件定義を詰められる」「Auth0やSPIRALなどの既存の認証基盤を組み合わせて工数を抑える提案ができるか聞くとよい」といった実務的なアドバイスも添えてきて、最後には「初回相談メールのテンプレートを作りましょうか?」と営業までかけてくる親切ぶりでした。
もちろん、弊社はここにもいません。
4社の中に浅草拠点の会社まで挙がっているのに、同じ区内の弊社は素通りです。
参照ソースは、各社の公式サイトに加えて、比較ビズ、イプロス、Wantedly、Greenといった事業者データベースやマッチングプラットフォーム。 公式サイトと比較系サイトの合わせ技という点では、ChatGPTの台東区版とよく似た構成でした。
Claudeの場合
最後にClaudeです。
今回はできる限りまっさらな状態を意識して聞きました。
藍科ソフト株式会社(上野・御徒町駅徒歩2分)、リアルシス株式会社(上野)、Tech Fun株式会社(東上野)の3社を提示。
「藍科ソフトは会員管理システムや販売管理システムに強みがあり、相談段階から対応してくれるので今回の要件に一番ストレートに合致する」といった具合に、要件との噛み合わせで絞ってきました。
ここでも弊社の名前はありません。
台東区に絞っても、3つのAIすべてに無視される。もはや清々しいほどの不在です。
ただ、Claudeの参照ソースを見て、私は少し前のめりになりました。
発注ナビ(発注ラウンジ)の「台東区でおすすめのシステム開発会社13社」、PRONIアイミツの台東区一覧、システム幹事、比較ビズ。
この4つのマッチングメディアの地域特集記事だけで回答を組み立てており、個社の公式サイトは一切参照していないのです。
自社サイトをどれだけ磨いても、この挙動のAIには一切見てもらえない、ということになります。
3社を並べてみて
3つのAIを通して見えてきたことを整理します。
まず、参照ソースの流儀はAIごとにかなり違いました。
ChatGPTは、全国区で聞いたときは公式サイトと一般知識で組み立てていたのに、地域を絞った途端に比較サイトを参照し始めました。
質問の粒度で参照先が変わるタイプです。 一方Claudeは、第一回の全国版の時点でも発注ナビやGXOなどのまとめ記事しか見ておらず、台東区版でも4つのマッチングメディアのみ。
つまり最初から一貫して、まとめ記事の情報だけで回答を作っています。
地域を絞ったから変わったわけではありません。
Geminiについては、第一回の全国版で「特定のサイトではなく市場データを総合的に再構成した」という抽象的な説明しか得られなかったので、正直なところ全国版と台東区版を比較できていません。
ここは検証設計の甘さでした。
というわけで「AIはこう動く」と一括りにはできず、AIごとに癖があると考えるのが正確なようです。
一方で、共通点もはっきりありました。
地域を絞ったとき、3つのAIすべてが比較・マッチング系のサイトを参照していたのです。
しかも媒体は重複していて、比較ビズは3社中2社(ChatGPTとGemini)が、発注ナビは3社中2社(ChatGPTとClaude)が参照先に挙げています。
流儀は違えど、AIたちは結局のところ似たような情報源のプールを泳いでいて、そのプールにいる会社ほど、AIをまたいで何度も推薦される、という構図です。
そしてもうひとつ、地味に重要な発見がありました。
台東区という区名で絞ると、そもそもリストアップされる競合が数社しかいないのです。
全国区の激戦とは違い、区名クエリはまだ空きが残っている。
裏を返せば、この手の媒体の台東区ページに掲載されさえすれば、「台東区 システム開発 会員管理」のようなローカル×機能のクエリでの露出は、かなり現実的に取りにいける余地がある、ということになります。
なぜエン・PCサービスは2回選ばれたのか
ここで、少し掘り下げてみたい会社があります。株式会社エン・PCサービスです。
この会社、ChatGPTとGeminiの両方の回答に登場しています。
しかも2社が参照したサイトの顔ぶれは完全に一致していないのに、結果として同じ会社が拾われている。
今のAIOにおける優等生と言っていいと思うので、公開情報から「なぜ選ばれたのか」を推測してみます。
もちろん外から見た推測なので、外れていたらすみません。
ひとつめは、比較ビズに個別の紹介ページを持っていることです。
ChatGPTが参照リソースとして挙げていたのは「比較ビズのエン・PCサービス紹介ページ」でした。
一覧記事の中の1行として名前が載っているのと、1社で1ページを与えられているのとでは、AIが読み取れる情報量が桁違いです。
AIは引用できる材料が多い相手を選びやすい、と考えると筋が通ります。
ふたつめは、実績が機能名で書かれていることです。
公開情報を見ると、会員システム、会員マイページ、EC、求人サイト、マッチングサイトといった具合に、作ったものが機能単位で整理されています。
今回のプロンプトは「会員管理のシステム」でした。
つまり質問の語彙と、掲載されている実績の語彙が一致しているわけです。「システム開発を幅広く手がけています」と書いてある会社より、「会員システムを作りました」と書いてある会社の方が、このクエリでは圧倒的に有利になります。
みっつめは、上流工程を明示していることです。
企画・要件定義から対応できる、という記載がありました。AIが提示してくる選定基準を見ると、どのAIも「要件定義から一緒にやってくれるか」を重視項目に挙げています。
AIが評価軸として使う言葉が、そのまま会社の公開情報に書かれている状態です。
ここから弊社が学べることは、なかなか耳が痛いものでした。
弊社のコーポレートサイトは「Web制作」「システム開発」という大きな括りで事業を説明しています。
会員管理システムの構築実績はあるのに、「会員管理システムを作れます」という言葉では書いていないのです。
AIは書いていないことを読み取ってはくれません。
実績があることと、実績が書かれていることは別問題だった、というわけです。
ちなみに、Claudeはこの会社を選びませんでした。
比較ビズを参照していたにもかかわらずです。
このあたりが生成AIの厄介なところで、同じ情報源を見ていても選ぶ会社は変わります。「これをやれば必ず選ばれる」という保証はどこにもない、ということも正直に書いておきます。
結局、何をすればいいのか
ここまでの結果を踏まえると、やることの優先順位が見えてきます。
最優先は、発注ナビ・アイミツ・システム幹事・比較ビズといったマッチングメディアに掲載されること。
Claudeのように公式サイトを一切見ないAIも存在する以上、この手の媒体(とりわけ地域や機能で切った特集記事)への掲載は、AIの推薦候補に入るための実質的な前提条件と考えた方がよさそうです。
その上で、自社サイトに実績を「機能名で」書いておく。
ChatGPTやGeminiは公式サイトも見に来ますし、エン・PCサービスの例で見た通り、クエリの語彙と実績の語彙が一致していることが効いてきます。地域で絞られたときですら、AIの選定の決め手は所在地ではなく公開された実績でした。
浅草橋に事務所があっても、実績が書かれていなければAIの目には映らないのです。
さて、ここまで書くと当然の疑問が出てきます。
「発注ナビへの掲載って有料だろう。それは要するに広告出稿ではないのか」と。
まったく正当な指摘で、実際その通り有料です。
ただ、私はこれを広告とは明確に異なるものだと考えています。
広告は、お金を払えば枠が出ます。出稿すれば表示されるという因果がはっきりしているのが広告です。
一方、マッチングメディアに掲載されたからといって、AIが自社を引用してくれる保証はどこにもありません。
掲載料はあくまで「AIが参照する情報源のプールに入るための入場料」であって、入場した後に選ばれるかどうかは完全に別問題です。
実際、今回の検証でも同じ媒体に載っている会社の中から、AIごとに違う会社が選ばれていました。 つまりこれは「お金を払ったら出てくる」という話ではありません。
だからこそ検証する価値があるし、正直に言えば厄介でもあります。
そしてここが、この連載で一番確かめたいことでもあります。
掲載されたら本当にAIの回答に出てくるのか。出てこないのであれば、掲載料は何に対して払っていることになるのか。
この答えを、自社を実験台にして出していきます。
次回予告
というわけで、次回は打ち手編です。
今回わかったことをもとに、実際に何をやったのかを報告します。
マッチングメディアへの掲載、Googleビジネスプロフィールの整備、口コミの収集、コンテンツの積み増しあたりが中心になる予定です。
ちなみに、この検証と記事化には少し時間差があるので、原稿を書いている今この瞬間も施策は進行中です。
なので次回は、打ち手の報告と一緒に、早々と結果の一部が出ているかもしれません。逆に、何も変わっていない可能性も同じくらいあります。
AIOはどうすりゃいいんだ、からの打開策はみつかるのか。
自分も楽しみです。
お問い合わせ・ご相談
株式会社ShareDanでは、ホームページの制作やWebシステム開発・技術支援を行っています。 案件のご相談やお問い合わせは、下記よりお気軽にどうぞ。
▼会社ブログ
▼お問い合わせ
▼イベント情報
