【本】周囲の意見に聞く耳を持つ~橋上秀樹著『野村の「監督ミーティング」』⑧
今回も橋上秀樹さんの著書『野村の「監督ミーティング」~選手を変える、組織を伸ばす「野村克也の教え」』から、野村監督のリーダーシップ論、中でも「参謀の役割」「考えさせる指導」「聞く耳を持つリーダー」について学び直した点をまとめてみました。
野村監督が必要とした名参謀
野村監督が一番評価していたのは、「質問したことに対して、遠慮なく自分の意見を発言できる」こと。自分の考えをちゃんと発言できる人間を、特に参謀役のコーチには求めていた。
また、監督に対して発言できるということは、「それなりのデータ収集や、自信があるから言えることだ。」とも言っており、そういった意味からも「自分の考えを発言できる人間」を、参謀として高く評価していたのである。
これは非常に難しいところですね・・・どうしても人間ですから好き嫌いが出てしまいがち。かくいう私も感情9割の人間なので、やっぱり気の合った面々と仕事をやりたいと思ってしまいます。
野村監督はご自身の著書で、そういう監督と一緒に仕事をしてきて、仲間に入れて貰えなかったときの経験が強く心に刻まれている、ということを仰っていました。確かに仲間意識が強いと、その輪には入れない人たちは疎外感、それだけでなく、場違いな印象を持ち、実力を発揮できないことも考えられますよね。
ですから、そうした「情」を一切排除し、「データ重視」「数字重視」でコーチを集め、強いチームを作ろうと考えたのかもしれませんね。
ただ、繰り返しますが、これはなかなか難しいと思います。やっぱり自分のやりやすいメンバーでチームを作る方が楽だし、成功体験もあるから、どうしてもその経験をなぞりたくなってしまうんですよね。私もそれで痛い経験があります。
メンバーが違えば、やり方も接し方も工夫しなければいけなかったのに、前と同じ事をしようと固執してしまい、なかなかできずに一人で勝手にヒートアップしてしまう・・・リーダー失格です。
教えるのがうまいコーチとは、「技術を教えるのがうまい」わけではない
野村監督に出会って、「考え方」が変わったことが一番大きかった。極論を言ってしまえば、プロの指導者であれば、技術ではなく「考え方」を教えられる指導者が、名監督、名コーチと呼ばれるのにふさわしいのである。
コーチは、選手に手取り足とり指導するなどと言うことはせず、選手が自分で考えて取り組めるように正しい方向に導いてやるくらいでちょうどいい。
名作映画「スターウォーズ」で指導者ヨーダが主人公のルーク・スカイウォーカーに「ルーク、フォースを使え」と声を掛ける名シーンがありますが、まさにこれこそ理想の指導のひとつかもしれません。
一見すると「フォース?なんだそれ?」となりますが、手取り足取り教えるのではなく、「考えさせる」。精神統一をしてライトセーバーに念を込めることで剣が光り、戦いに臨む状態になるわけですが、これも一つの「自分で考える」好例。
どうしても相手のために(私たちの場合は「生徒のために」)と手取り足取り、何でもかんでも面倒を見がちですが、それでは結局、相手が自分で考えることを止めてしまうこともあるわけですよね。
ここはグッとこらえて、「考えさせる」。そういえば、以前も触れましたが、私の初の上司の口癖がまさに「考えなさい」。もう年がら年中、朝から晩まで言われていました。当時はなにくそーと思っていました、上司もまた「面倒なヤツだな、こいつは」と思っていたと思います。
自分でやればすぐに済むことを、この口の達者な面倒くさい新人の成長のためにグッと堪えて対応して下さったのですから。でもその甲斐あって、一年で相当力が付いたことは確かなので、私は職を代えてしまいましたが、今でも感謝しています。
部下の意見に聞く耳を持つのが真のリーダー
野村監督はコーチである私たちに対し、ミーティングなどで、「気になる点があったら、遠慮せずにどんどん意見を言ってくれ」と話していた。
何の根拠もない、ただ単に感覚や気分だけで言った意見であれば、即座に却下されてしまうが、きちんとした裏付けや、データを示すことが出来れば、監督も「ああそうか」と柔軟に聞く耳を持ってくれたのである。
まあ、とはいえ、往年のギラギラしていた当時の野村監督に「何でも言ってくれ」と言われてからと言って、なかなか、手を挙げて物申すのは大変勇気のいることだったように思います。
ただ、ノムさんは「ID野球」を標榜し、データを非常に重視していましたので、「データによると・・・」という枕詞の下、話をすると、耳を傾けてくれたのかもしれませんね。
一方、橋上監督代行も書かれていますが、「なんとなく・・・」とか「個人の感想」レベルで何の気なしに発言してしまったら・・・ブチ切れられること必至ですね(笑)。
こういうと上司に阿るように聞こえてしまうかもしれませんが、そのときの上司の「クセ」を掴む、つまりは上司の「好みを知る」というのはアリだと思います。例えば、まず「いい話」をしてから、言いにくい話をする、とか。
一方、単刀直入に、ずばっと「悪い話をさせてください!」ということで「すみません」モードで入る。
電話の場合は前者でしたね、私は(笑)。一方、報告を貰う際には、「いい話?悪い話?」と先に聞いて、腹を括って「じゃ、悪い方からお願い!」と言って、報告を受けたりしていました。これは私自身の気の弱さもあり、最初にある程度覚悟してからでないと、メンタルに来るということも大きかったです。
やっぱりいつになっても「悪い話」を聞くのはしんどいですからね。今の現職では一介の平社員なので、こうした厄介話で頭を下げる機会が減ったという点では、メンタルが良好に保てているように思います。
私も意見を聞くのは非常に大事だと思っています。特に自分が考えてもいないアイデアを提案されると、本当に嬉しくて、メチャクチャ喜んだことを覚えています。
一方で、心が狭いので、満座の前で自分の案を否定されるのは、なかなか悔しかったですね・・・こちらも「良かれ」と思って考えた案を否定される訳なので・・・(涙)。若干のプライドもありますし。
そういう意味では批判とかはミーティングなどの満座の前ではなく、個別に欲しかったタイプでした。こういう方は結構いらっしゃるんじゃないでしょうかね。誰でも大勢の前で恥をかかされるのは、あんまり気持ちのいいものではないしょうからね。
ということで今回も橋上監督代行による野村監督のチーム作りやリーダーシップについて考えてきました。今の時代にも通用する事柄も多いですし、きっと参考になったこともあるのではないでしょうか。
私自身は現在、リーダー的役割ではないですが、私よりも年齢の若い方がチーム(といっても3名ですが)をまとめています。彼からすると年上の部下、ということで恐らく気を遣っていらっしゃる、というか率直に言うと、面倒なヤツだと思うので、なんとかご迷惑を掛けないよう、足を引っ張らないよう、こうして読み直すことで、我が振りを直していきたいと改めて襟を正したいと思った次第です。
リーダーの立場でなくても、組織の一員としてできることは多い。そんな気づきを改めて得られた一冊でした。皆さんの職場でも、何かヒントになれば幸いです。
