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『トイ・ストーリー5』|「君はともだち」の、その先へ

『トイ・ストーリー5』では、『君はともだち』が流れなかった。

あの歌は、私にとって『トイ・ストーリー』そのものだった。
シリーズを思い返すたび、自然と頭の中に流れてくる一曲でもある。

だからこそ、流れなかったことが少しだけ意外だった。

けれど映画を観終えて、その理由がわかったような気がした。

『トイ・ストーリー』のはじまりで、おもちゃは子どもの友達だった。

しかし今回は、おもちゃが子ども同士をつなぐ存在として描かれていた。

タブレット「リリーパッド」で遊ぶ子どもたち。その光景は、今では特別なものではない。
大人でさえ画面を前にすると無言になってしまうのだから、欲望に正直な子どもはなおさらだろう。

本やごっこ遊びが好きなボニーは、周囲の子どもたちの輪に入り込めず、少しだけ取り残されてしまう。

そんな彼女のために動くのが、おもちゃ達だった。

終盤では、アナログなおもちゃのジェシーと、デジタルのリリーパッドが協力しながら、ボニーを友達との出会いへ導いていく。

この映画は、アナログとデジタルの優劣を描いてはいない。

子どものために力を合わせる。その姿が、とても現代的で、そしてあたたかかった。

子どもたちのごっこ遊びが始まると、世界は一気に色づく。

子どもの目線で描かれたおもちゃたちの世界はパステルカラーで生き生きとしていた。
おもちゃたち自身もその物語に入り込み、心から楽しんでいるように見えた。

その一方で、ごっこ遊びの内容が思いがけず現実的で、不倫のような大人の世界まで取り込んでしまうところには思わず笑ってしまった。
子どもは大人が思う以上によく見ていて、その断片を自分たちの世界へ自然に持ち込んでしまう。そのリアルさも、この作品らしい魅力だった。

おもちゃの役割が広がったことを、もう一つ象徴していたのが、50体のバズだった。

無人島に流れ着いた50体のバズは、兵隊のように隊列を組み、草むらを警戒しながら「スターコマンド」を目指して歩き続ける。

何のために進むのか、自分たちでもよくわからない。

あらかじめ内蔵された言葉を話し、与えられた目的へ向かう姿は、大量生産された人工的なおもちゃらしくもあった。

ジェシーが胸につけた星を「スター」だと信じ、彼女を保安官として補佐していく姿は微笑ましい。

けれど、その純粋さは、導く存在によってはいくらでも利用されてしまう危うさも感じさせた。

子ども向けの映画を観ながら、こんなことまで考えてしまうとは思わなかった。
それでも、だからこそ『トイ・ストーリー』は子どもだけの物語ではないのだとも感じた。

さらに、バズがネットワークにつながれ、一斉にアップデートされる場面は頼もしくある一方で、現代社会を映すような不思議な怖さもあった。

アップデートされたバズはドローンになり、空を飛ぶ。

ドローンという言葉を聞くと、私は人を楽しませる映像や配送だけでなく、戦争で使われる映像も思い浮かべてしまう。

技術そのものに善悪はない。

けれど、その力は何のために使われるのか。

子どものために、平和のために。

そんな願いも、この映画には込められているように思えた。

そして、かつて「飛んでいるんじゃない。落ちているだけだ」と言われていたバズが、本当に空を飛ぶ。

ウッディと並んで空を駆ける姿を見られたことは、シリーズを見続けてきたファンとして素直にうれしかった。

物語の終盤で、50体のバズはそれぞれ一人の人間のもとへ渡されていく。

集団だった彼らは、最後に一対一の関係へ戻っていく。

五十という数字で始まった物語が、最後には「ひとり」と「ひとり」の物語になる。その構図が、とても『トイ・ストーリー』らしいと思った。

大量生産されたおもちゃであっても、その役割は、たった一人の誰かを喜ばせることにある。

子どもの頃に遊んでいたであろう一人のおじさんが、バズを受け取った瞬間だけうれしそうな顔をして、すぐに照れ隠しをする。

ほんの数秒の表情から、おもちゃが世代を超えて人の記憶の中に生き続けていることが伝わってきた。

ジェシーもまた、大切なことを学ぶ。

かつて自分を捨てたと思っていたエミリーが、自分の子どもに「ジェシー」と名付けていた。

一緒に過ごした時間は終わっていても、その思い出は消えていなかった。

『トイ・ストーリー2』で、エミリーに置いていかれたジェシーの姿を思い出すと、この場面はシリーズを見続けてきた人ほど胸に迫るものがある。

たとえわずかな時間であっても、おもちゃは人の記憶や成長の中に生き続ける。

そして、それはおもちゃだけの話ではないのだと思う。

私たちも、その時々で出会う人が変わる。

友達も、先生も、本も、趣味も、好きな音楽も。

ずっと同じものだけを抱えて生きていくわけではない。

その時々に必要な人や経験と出会い、別れ、その積み重ねが今の自分をつくっている。

『トイ・ストーリー5』は、おもちゃの役割が変わった物語ではなかった。

子どもの友達だったおもちゃは、人と人をつなぎ、誰かの成長を支える存在へと、その役割を少しずつ広げていった。

けれど、その根底にある願いは、シリーズの最初から変わっていない。

誰かの成長に寄り添うこと。

『トイ・ストーリー5』は、その願いを、今という時代に合わせて静かに描き直した作品だった。

だから『君はともだち』は流れなかったのかもしれない。

あの歌がなくても。

『トイ・ストーリー』はちゃんと、「ともだち」の、その先を描いていた。


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『トイ・ストーリー5』

2026年7月3日〜

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