北海道の地名は、当て字ではなく先人の地図だった
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北海道の地名は、覚えられない暗号だと思っていた
北海道を旅していると、稚内、長万部、然別、糠平といった地名に何度も行く手を阻まれます。読み方がわからず、意味もわからず、ただ看板を通り過ぎるだけ。私自身、そうした地名を「アイヌ語由来の、覚えにくい呼び名」としてひとくくりにし、深く考えることをやめていました。同じ北海道でも、内地から来た地名と現地の地名とでは手触りがまるで違う。その違和感を抱えたまま何度も北海道を訪れ、結局どの町がどんな土地なのか、実感を持てないまま帰る旅を繰り返していました。
そんな認識が根底から崩れたのは、合田一道著『北海道 地名の謎と歴史を訪ねて』を読んでからです。
合田一道著『北海道 地名の謎と歴史を訪ねて』はこちらから読めます。
「ナイ」と「ベツ」に隠された、先人たちの土地の記録
本書によると、道内に無数にある「〜内」「〜別」という地名は、当て字ではなく、アイヌ語の「ナイ」(沢)と「ペッ」(川)にそのまま漢字を当てたものだといいます。地形そのものが名前になっている、ということです。さらに「北海道」という名称自体、幕末に蝦夷地を六度にわたり探査した探検家・松浦武四郎が、天塩川流域でアイヌの長老アエトモから教わった「加伊(カイ)」という言葉をもとに考案したという説があります。「加伊」は「この地に生まれた者」を意味するアイヌの古い言葉とされ、武四郎はこれに「北加伊道」の名を与え、後に「加伊」の音に「海」の字が当てられて「北海道」となったといわれています。
本書にはさらに、坂本龍馬の甥にあたる坂本直寛が高知から入植者を率いて北見の開拓に挑んだ話や、尾張徳川家の旧藩士たちが生活の糧を求めて八雲へ移り住んだ経緯まで、地名の裏にある人々の足跡が丁寧に描かれています。義経伝説の残る土地や、珍しい読み方の地名についても、ぜひ本書で確かめてみてください。
知ってから、地名を検索する自分が変わった
先週、友人と道東への旅行を計画していたとき、地図アプリに映る「然別」や「糠平」という地名を見て、友人が「これ、なんて読むの」と尋ねてきました。以前の自分なら「読み方だけ調べて終わり」にしていたはずです。ところが気づけば、「多分、川か沢を表す言葉が入っているはずだよ」と地形の話を始めていました。友人は驚いた顔をして、そこから二人で地名の由来を検索しながら旅程を組み直すことになりました。
知る前は、地名は覚える対象でしかありませんでした。知った後は、地名が土地の説明書に変わりました。同じ看板を見ても、そこに書かれているのが記号ではなく、かつてその土地に暮らした人々が残した言葉だとわかるようになったのです。
この地名の意味を知らないまま北海道を歩くのは、もったいない
この本を読むまで、私は北海道の地名をただの記号として通り過ぎていました。もし読んでいなければ、これからも同じように、意味を知らないまま地名の前を素通りする旅を続けていたはずです。著者の合田一道は、元北海道新聞記者としてノンフィクション作品を数多く手がけ、単著は100冊を超えます。北海道ノンフィクション集団の代表も務め、道内の歴史を長年にわたって取材してきた書き手だからこそ描ける、地名の奥にある物語があります。北海道を訪れる予定がある方も、ない方も、自分が知らないまま通り過ぎている言葉があるかもしれないと感じたら、一度手に取ってみてください。
合田一道著『北海道 地名の謎と歴史を訪ねて』はこちらから読めます。
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