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その「平均年収」は、都合よく作られた数字だった

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「平均」は動かない事実だと思っていた

求人票に書かれた「平均年収350万円」や、ニュースが伝える「平均世帯収入」を、ずっとそのまま額面通りの事実として受け止めていました。数字である以上、そこに嘘の入り込む余地はないはずだと思っていたからです。ただ、同じ「平均年収」という言葉なのに、媒体によって数字が微妙に食い違うことに気づくたび、なんとなく釈然としない気分のままスクロールを続けていました。ダレル・ハフ著『統計でウソをつく法』を読んで、その違和感の正体がようやくわかりました。ダレル・ハフ, 高木秀玄著『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』はこちらから読めます。

平均年収2万5111ドルの裏にあった不都合な真実

本書で紹介されている例のひとつに、アメリカの雑誌が報じた「エール大学1924年卒業生の平均年収は2万5111ドル」という数字があります。当時としては破格の金額で、名門大学の価値を裏付ける数字として広まりました。しかしハフは、この数字が卒業生全員から集めたものではないと指摘します。回答したのは、卒業後も住所がわかっていて、なおかつ自分の年収をすすんで教えてくれた一部の人たちだけ。住所を追跡できるのは社会的な繋がりを保てている人が多く、年収を答えたがるのは、その額に自信がある人が多いのです。母集団そのものが、最初から裕福な側に偏っていたわけです。本書ではこのほかにも、平均値・中央値・最頻値という三種類の「平均」を都合よく使い分ける手口や、グラフの縦軸をわずかに切り取るだけで数字を何倍にも見せる「びっくりグラフ」、相関関係をそのまま因果関係にすり替える論法など、9つの章にわたって具体的な手口が並びます。ぜひ本書で、身の回りの数字にどんな細工がされているか確かめてみてください。

求人票の「平均年収」を、鵜呑みにしなくなった

この本を読む前は、求人票に「平均年収400万円」と書かれていれば、それをそのまま他社比較の目安にしていました。読んだあとは、まず「これは中央値なのか、それとも一部の高年収社員が引き上げた平均値なのか」と考える癖がつきました。先日、転職を考えている友人と話していたとき、彼が「あの会社、平均年収が高いから狙い目だ」と言ったので、「それ、役員クラスも含めた数字じゃない。若手だけの中央値も聞いてみたら」と返しました。友人は少し驚いた顔をしていましたが、後日の会社説明会で実際にその点を質問したそうです。数字の作られ方まで一歩踏み込んで見るようになったことで、同じ求人票やニュースを見ても、以前とは違う景色が見えるようになりました。

知らずに数字を鵜呑みにするのは、もったいない

この本を読んでいなければ、私はこれからも「平均」という言葉を無条件に信じ続けていたはずです。ダレル・ハフは雑誌編集者として文章力を鍛えたのち、フリーランスの書き手として60冊以上の著作を残した人物で、1954年に本書の原著をアメリカで発表して以来、半世紀以上にわたり世界中で読み継がれてきました。日本語版もブルーバックスの中で100刷を超えるロングセラーとなっています。統計の専門家ではなく、読者に近い書き手だったからこそ、数式を一切使わず、身近な具体例だけで統計の落とし穴を説き明かせたのだと思います。数字そのものを疑うのではなく、その数字がどう作られたのかを問う視点を教えてくれる一冊です。ふだん何気なく受け取っているニュースや広告の数字にも、同じ仕掛けが隠れているかもしれません。ダレル・ハフ, 高木秀玄著『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』はこちらから読めます。

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