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なぜ社会には多様な伝え手がいるのか

社会には、人が自分の生き方を考えるための助言をする人が数多くいる。
住職は法話をし、講演家は経験を語り、人生相談では相談者の悩みに答える。
書籍を通して考え方を伝える著者もいれば、コーチや占い師もいる。
それぞれ立場も方法も違うが、人が自分の状況を整理し、次の行動を考える手助けをしている点には共通するところがある。

その違いは、占いとコーチングを並べると見えやすい。
占いでは、生年月日や星、手相、カードなどを使い、占い師から相談者へ助言が提示される。
「今は環境を変える時期です」「人との縁を大切にしてください」といった形で、相談者は自分について語られた言葉を受け取る。

コーチングでは、問いを重ねながら本人の考えを言葉にしていく。
「本当はどうしたいのか」「何が妨げになっているのか」「次に何ができるのか」と問い、自分で答えを見つけることを促す。
占いでは相手から助言を受け取り、コーチングでは本人が自分の答えを言葉にしていくという違いがある。

方法は対照的でも、相談した人に生じる変化には重なる部分がある。
自分の状況を整理し、曖昧だった気持ちを言葉にし、選択肢を考えながら次の行動を決めていく。
具体的に語られる内容はそれぞれ異なるが、自分の人生について考える機会をつくるという働きには共通するところがある。

医療の診断や法律上の判断では、専門知識と根拠の確かさが重要になる。
転職するか、結婚するか、新しいことを始めるか、今の環境に残るかといった問題では、必要な情報を集めても最後の選択は本人に残る。
こうした場面では、正確な情報に加えて、自分の考えを整理し、決断するための助言も役に立つ。

その助言には、語り手が違っても共通する内容がある。
焦って結論を出さず、周囲との関係を大切にし、一人で抱え込まずに次にできることを考える。
状況によっては、環境を変えることや、しばらく待つことを勧められる場合もある。
こうした話は、住職の法話にも、講演家の経験談にも、人生相談にも、書籍にも、占いにも現れる。

同じような内容が語られていても、その言葉を受け入れやすい相手や方法は人によって違う。
専門家の説明を信頼する人もいれば、経験を積んだ人の話を重く受け取る人もいる。
宗教的な教えを通して考えた方が納得しやすい人も、自分について個別に語られることで初めて考え始められる人もいる。

知人から「もう少し待った方がいい」と言われても受け入れにくかった人が、おみくじに似た言葉を見つけて、少し待ってみようと思うこともある。
そこで変わったのは、助言の内容よりも、その言葉を受け取った方法である。
以前から自分でも分かっていたことを、信頼できる相手から言われたことで行動に移せる場合もある。
人は言葉の内容とともに、誰から、どのような形で伝えられたかも受け取っている。

この違いは、社会に多くの伝え手が存在する理由の一つになる。
住職、講演家、著者、相談員、コーチ、占い師は、扱う知識や考え方によって分かれているだけでなく、人が言葉を受け取る方法の違いにも対応している。

科学的な知識や専門家の助言を得やすくなっても、法話や人生相談、講演、コーチング、占いは残っている。
情報を知ることと、その情報を自分の問題として受け取ることには違いがある。
よく知られた助言でも、自分が受け入れやすい方法で伝えられたときに、初めて考え方や行動が変わることがある。

仮に、人生についての助言を一つの伝え方に統一すれば、語られる知識そのものは残せるかもしれない。
しかし、その方法では受け取りにくい人も生まれる。
社会に複数の伝え方が共存していることで、それぞれの人が自分に合った方法から言葉を受け取ることができる。

人によって言葉の受け取り方は違う。
その違いがあるから、社会には同じような知恵や助言を伝える役割がいくつも存在する。
多様な伝え手が残っていることは、人の考え方の違いだけでなく、人が言葉を受け取る方法の違いにも社会が対応していることを示している。




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