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「日産らしさ」をより引き上げる、「ファミリー企画」って何だ?

再建真っ只中の日産自動車。「魅力ある商品」がそのキーである事は言わずもながですが、これまでの開発体制は良くも悪くも無駄が多かったのも事実です。そこで新たなに導入を進めているのが「ファミリー企画」です。その目的と本質について解説。質疑の内容もまとめております。

ファミリー戦略の全体像と詳細解説

商品事業本部の佐々木英王氏が説明
  • 基本理念とVision: 「より魅力ある商品を、より納得できる価格で、よりタイムリーに」顧客へ届けるための事業基盤であり、モビリティの知能化を通じて最先端テクノロジーを安全・直感的に届けるビジョン実現を支えます。

  • 導入の背景(5つの課題):

    1. ライフサイクルの長期化: 個別最適化によるプロセス非効率と競争力低下。

    2. 市場環境の急激な変化: EV化、規制、補助金政策、顧客ニーズの加速。

    3. 長いリードタイムによる事業リスク: 従来の長期開発が商品企画の不確実性を増幅。

    4. コスト構造の悪化: 部品費・開発費の増加傾向。

    5. 業界スピード競争の激化: 2年前後で開発を進める中国・EV新興勢の台頭。

  • 開発体制の変革(従来の「個車最適」から「ファミリー一括」へ):

    • 従来(個車ごとの計画): 各モデルで約50か月の開発期間を要し、プラットフォームを共用しても各車・各地域で個別に最適化(A, A', A''...と派生)。流共用が難しく、1車種の設計変更が他車種へ波及して手戻りや少量ユニーク部品が増大していました。

    • 新プロセス(ファミリー企画): 複数車種をひとつの「ファミリー」として初期段階で前提条件を一括定義。リードモデルを37か月で開発し、後続モデルは30か月へと約40%短縮します。

次期エクストレイル
  • 2軸のマトリクス構造:

    • 車種ファミリー軸: 車両サイズやセグメント(「フレーム」「ミドル」「コンパクト」など)ごとに群化し、量販モデルの約8割をカバー。残りの2割はGT-RやフェアレディZなどのハートビートモデル、更にキャラバンなどの特殊なモデル。

    • コンポーネント軸(アーキテクチャー): 統合プラットフォーム、パワートレイン(ICE、e-POWER等)、共通ソフトウェア基盤、主要コンポーネント(ナビ、AD/ADAS、シート、ランプ、ブレーキ等)を棚揃えして共通化。

第3世代e-POWER
  • バリエーション抑制と差別化のメリハリ:

    • コンポーネントのバリエーションを意図的に集約(例:ランプ・バンパーは2種類、ホイール・ブレーキは3種類などに抑制)。

    • 共通化で浮いたリソースや時間を、デザインや乗り味といった各車の「ウリ(個性・日産らしさ)」の磨き上げに集中させます。

すでにプロジェクトは動いている
  • バリューチェーン全体への事業効果:

    • 開発: 期間を約40%短縮し、投資回収の早期化と戦略的流共用を実現。

    • 調達: 台数集約によるスケールメリット、部品種類を70%削減、新技術への早期投資判断。

    • 生産: ファミリー単位での生産拠点最適化、工場・設備の重複投資削減。

  • 推進・ガバナンス体制:

    • アーキテクチャ戦略部門がアーキテクチャーを決定し、CFS(チーフ・ファミリー・ストラテジスト)が主導して「台数・販売価格・収益目標」「流用・共用部品」「車両デザイン」の前提条件を初期段階(PCS-Tフェーズ)で一括決定します。


質疑応答(Q&A)

Q1.(フリーランス)

  • なぜ今になってこのファミリー戦略が可能になったのか(以前はできなかった理由)?

  • 複数モデルを平行開発することで、最初の計画を誤った場合に全てが狂ってしまうような欠点やリスクはないのか?

A1.

  • 可能になった理由: これまで日産には全社視点でサプライヤーや生産も含めて一括合意・決定する組織とプロセスがありませんでした。今回は全社プロセスと組織構造を刷新し、CFS(チーフ・ファミリー・ストラテジスト)を中心に意思決定の権限と人材を集める仕組みを構築したことで実現しました。

  • リスクと対策: 一括決定によって投資や意思決定のサイズ・重みが非常に大きくなる点が副作用(リスク)です。そのため、事前のリソース確保やガバナンスの厳格化を徹底します。また、市場変化に対してはコンポーネント軸の棚揃えと変動ルールをあらかじめ定義しておくことで、大船団でも軌道修正できる体制を整えています。

Q2.(フリーランス)

  • リソース短縮やリードタイム短縮によって、開発現場の個々の負荷が増えたり、人が減らされたりするのではないか?

A2.

  • 初期の企画段階(赤い箱のフェーズ)に仕事のピークや負荷が集中するのは事実ですが、特定の1人に背負わせるのではなく、会社として能力のある人材やリソースをそこに集中的に配置します。

  • 後工程での仕様変更や手戻り(「後から言われて梯子を外される」ような状況)をなくし、あらかじめ上限・下限(カバー範囲)を合意しておくことで、現場の不安を減らし安心して開発に専念できるようにします。また、先行車種で作り込んだ設計を後続車種へ流用することで、設計や品確の重複工数を大幅に削減します。

NISMOもつくりやすくなる⁉

Q3.(自動車メディア)

  • 他社の一括企画との違いや日産ならではの強みは何か?

  • 最初の企画で複数車種分を検討することで初動が遅れ、単独開発ならもっと早く出せたはずの車種が遅れてしまう懸念はないか?

A3.

  • 他社との差別化: プロセスそのものは他社も取り入れていますが、日産としては「ブランドのポジショニング」や「日産らしさ」という意思をしっかり込めた企画を事業リクエストとして提示する点に強みを出します。

  • 初動とスピード感: 全体の開発期間が30〜37か月程度に短縮されるため、市場投入から次期型・後続型の企画までの間隔が短くなり、市場の生の反応をタイムリーに取り込んで商品に反映できるようになります。また、大物コンポーネントを前倒しで開発・共用化しつつ、後から変更しやすいデザイン等は市場トレンドに合わせて直前に決められる柔軟性を持たせています。

Q4.(フリーランス:筆者)

  • ヒップポイントやタイヤ位置など、固定と変動のバランス(自由度)はどの程度持たせられるのか?

  • 工場や生産拠点・物流との連携はどのように考えているか?

A4.

  • 生産拠点との連携: 車両企画の前に、事業計画の段階でどの工場でどのサプライヤーとどの程度の規模を生産するかを事前に合意(アサンプション)して進めます。これにより、後から工場変更やソーシング変更による手戻りが発生するのを防ぎます。

  • 変動の自由度: どこまで共用化し、どこを個性(変動部)として変えるかは企画段階で定義します。例えばSUVとピックアップのように用途が異なる場合は、フロントフェイスを共用しつつ荷室や使い勝手などの個性を優先して変動させるなど、あらかじめルールを決めてメリハリをつけることで無駄な非効率を防ぎます。

キャシュカイはエクストレイルと
コンポーネントを共用する

Q5.(フリーランス)

  • マツダの一括企画(ノウハウやロジックの共通化・コモンアーキテクチャ)との違いは何か?日産は物理的な部品共通化に重心があるように見えるがどうか?

  • 企画の責任者はCFSなのか、CVE(チーフ・ビークル・エンジニア)等は入るのか?

A5.

  • マツダとのアプローチ比較: マツダの知見も参考にし、ノウハウの共通化・横展開は当然行いますが、日産はグローバルに多くの工場を展開しているため、物理的な部品の共通化も並行して進めます。部品の種類が増えすぎて管理工数が限界に達していた反省から、バリエーションを統合・整理してサプライヤーと安定した事業を築くことを目指しています。

  • 体制と責任: 最終的なディシジョン(決定)責任はCFSが持ちますが、CVEやプログラムダイレクター、CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)らと初期段階から共同作業(乗り代を持った連携)を行い、スムーズに後工程へ引き継げる体制にしています。

Q6.(テック系ビジネス誌)

  • 従来の「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」との関係性はどうなるのか?

  • このファミリー企画による利益貢献の時期や規模感はどの程度か?

  • 部品削減7割は流用によって達成するのか、それとも新技術へ刷新するのか?

A6.

  • CMFとの関係: CMFを破棄するのではなく、その進化形です。従来のプラットフォーム・パワートレイン中心から、ソフトウェアや大型電装コンポーネントまで含めて前倒しで棚揃え・共用化します。ルノー等のアライアンスとも必要に応じて連携します。

  • 利益貢献の規模: 具体的な時期・数値は開示できないものの、5車種独立で開発する場合と比較して投資規模を数割単位で効率化できる大きな効果を見込んでいます。

  • 部品削減7割の考え方: 古い部品を単に使い続けるだけでなく、新技術への刷新によってコスト・競争力が上がる場合は積極的に切り替えます。重要なのは、個別最適による無駄な寸法違いやブラケット厚み違いなどの「無駄なバリエーション」を初期段階で抑え込むことです。

Q7.(自動車ビジネス誌)

  • 複数車種を同時に検討することで業務が複雑化する中、それを担う人材の育成やリソース確保はどう進めるのか?

A7.

  • 現場が部品管理や個別対応に追われていた時間を、共通化によって削減・創出します。

  • 企画力や判断力のある優秀な若手・中堅を育成し、重要拠点に配置します。また、過去のように手作業で比較するのではなく、DXツールやデジタル技術を活用して検討業務を省力化・高速化する取り組みも進めています。

Q8.(自動車メディア)

  • 企画期間自体は以前より長くなるのか?

  • 全体の約8割をカバーするにあたり、ファミリーの数はどの程度を想定しているのか?

A8.

  • 企画期間の長さ: 1車種単体で見ると初期の企画期間は多少長くなりますが、後続車種の設計期間が大幅に短縮されるため、ファミリー全体(トータル工数・期間)で見れば大幅な短縮となります。

  • ファミリー数: 現在事業計画・ポートフォリオを精査中であり確定数は未定ですが、極端に細分化(20個など)せず、3〜5個程度などの現実的な括りで検討しています。なお、GT-RやフェアレディZのような特化型モデル(全体の約2割)はファミリー企画の枠外として個別に扱います。

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