母は今日も「大丈夫ですよー」と言ってデイサービスに行く
認知症の母は自宅で暮らしている。
週に何日か、デイサービスへ通う。
朝、迎えに来てくださる職員さんは、
玄関でいつも優しく声をかける。
「おはようございます! 今日も、大丈夫ですか?」
母は少し笑って答える。
「大丈夫ですよー」
私は、このやり取りが好きだ。
正直に言えば、
いろいろ大丈夫ではない。
職員さんも、それを知っている。
母も、それを知っている。
それでも、
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよー」
という言葉が交わされる。
あの二人は、
何をやり取りしているのだろう。
先日、医療関係の方のSNSで、
「『大丈夫です』と言われても困る」
という投稿を見かけた。
本当はつらくても、
「大丈夫です」と答えてしまう人がいる。
心配をかけたくない。
迷惑をかけたくない。
だから、
本当のことを飲み込んでしまう。
医療の現場では、
「大丈夫です」という言葉を、
そのまま受け取れないことがある。
「大丈夫」は、
思っていたよりずっと難しい言葉だ。
では、なぜ私は、
母の「大丈夫ですよー」に
ほっとするのだろう。
「大丈夫」と言われれば、
それ以上、聞かなくても済む。
「そうか、大丈夫なんだ」
そう思うことができる。
でも、本当はわかっている。
いろいろ大丈夫ではないことを。
それでも、
「大丈夫」と言われると、
信じたくなる。
そのほうが、楽だから。
それくらい、
いいじゃないか。
そう思う自分もいる。
「大丈夫なんだ」
そういうことにしてしまう。
その先に踏み込むのが、怖いのだ。
相手を安心させたい。
でも、
自分も安心したい。
「大丈夫」の中に、
自分の身勝手さと弱さが見える。
見ないふりをしてきたのに。
今日も迎えの車が来た。
「大丈夫ですか?」
母は笑って答える。
「大丈夫ですよー」
いろいろ、
大丈夫ではない。
それでも、
私は、自分のためにほっとする。
🪸 礁屋塾りんたろう
研究者 × 教育者として、「学びを社会につなぐ」活動をしています。
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