イスラム叩きネタ「アーイシャたん9歳(笑)」に関する考察と奇妙な結託について
イスラム叩きネタ「アーイシャたん9歳(笑)」に関する考察と奇妙な結託について
ネットの宗教論争で擦られまくっている「預言者ムハンマドの妻・アーイシャは9歳で結婚した幼女である」というイスラム叩きテンプレート。これに対する「身も蓋もない」歴史のリアルを剥ぎ取ると、現代の国際政治と言論空間が抱える最大のバグが見えてくる。
そもそも、この「アーイシャたん9歳(笑)」という設定自体が、後世のファンフィクション、言うなればエロ同人誌的な歴史修正に過ぎない。当時の姉の年齢や聖遷の年代から逆算する現代のまともな歴史学では、結婚当時は普通に10代後半だったという説が主流である。ではなぜ、そんなロリキャラ設定が生まれたのか。そこにはムハンマドの死後に勃発した、アッバース朝(ペルシア系官僚国家)による「アラブ的・部族的バイタリティの去勢プロパガンダ」という陰湿な政治的思惑があった。
本来の実像としてのアーイシャは、守られるだけの箱入り娘などではなく、
作画が『ジョジョの奇妙な冒険』の空条徐倫(ストーン・オーシャン)のようなガチの女傑である。
彼女は最高一流の知識人・法学者であり、第3代カリフが暗殺された際には
「犯人を捕らえろ!」
とブチギレて自ら軍勢を率い、甲冑で補強された輿に乗って最前線で男たちを鼓舞し続けた「武闘派最高司令官」だった。
そして彼女だけではない。初期イスラム社会には、預言者の雇い主であり国際貿易商社を率いた最高経営責任者(CEO)であり、
実質的なイスラム創設者(筆頭エンジェル投資家)とも言える最初の妻ハディージャ
がいた。他にも、戦場で逃げ出す男たちを尻目に身を挺して預言者を守り抜いた肉弾戦のレジェンド・ヌサイバ、単騎でローマ軍の前線を粉砕した黒騎士ハウラ、荒くれ者の市場を鞭一本と法律で支配した財務・治安大臣シファー、世界最古の現存する大学を創設した富豪の娘ファーティマなど、現代の「ポリコレ」や「フェミニズム」の視点から見ても進みすぎていて直視できないレベルの、最高にイカしたアネゴ(オーパーツ)たちがゴロゴロいた。欧米の女性が夫の同意なしに銀行口座すら作れなかった時代に、彼女たちは富と腕力と知力で社会を回していたのである。
しかし、この
「男女平等の先駆者はアラブ社会だった」
というガチの歴史は、
現代の「欧米社会」と「イスラム保守派(原理主義)」の双方にとって都合が悪いという、奇妙な利害の一致を生み出している。
欧米にとっては、「西欧文明こそが女性解放の光であり、イスラムは女性を抑圧する遅れた暗黒社会だから叩いて(あるいは啓蒙して)やる」というマウンティングの大義名分を守るために、彼女たちの存在は邪魔になる。一方、現代のイスラム保守派(家父長制を維持したい男たち)にとっても、「女性は『真珠』だから家の中に隠し、夫に従順であるべき」という身内の女性を支配する免罪符が欲しいため、かつて男どもを顎で使ってオラついていた女傑たちの記憶は消し去りたいわけだ。
結果として、本来なら不倶戴天の敵であるはずの「欧米」と「イスラム保守派」が裏でガッチリと握手し、プロパガンダが作った「アーイシャたん9歳(笑)」や「女の子は真珠❤️(キモ)」という無害化されたエロ同人誌の設定を、嬉々として公式設定(正史)として採用し合っているという滑稽な喜劇が完成している。敵対しているように見えて、その実、両者で「最強の女たちのオーパーツ的な歴史」を闇に葬り去り、都合のいいファンフィクションを消費し続けているのが、現代のイスラム叩きと保守化の身も蓋もない構造なのである。
事実は、歴史の彼方に忘れ去られてしまったが当時のメッカという最も非人道的空間に現れた人類の希望を背負った女傑たちの物語でもあったのだ。
決して男に都合が良いだけのエロ同人誌のネタキャラなどではない。
