緑の黄金、アレッポ石鹸の知られざる秘密とシリア旅行記

2010年、シリア内戦勃発の前年、私はシリア経済の状況調査とダマスカス証券取引所の訪問のため、シリアを訪れました。
シリアでのもうひとつの目的は、ダマスカスにあるバクダーシュ(بكداش)というお店のピスタチオアイスクリームを食べること。そしてアレッポでは、アレッポ石鹸を大量に購入することでした。
ちなみに、シリアに行って「アレッポ」と言っても全く通じません。アラビア語でحلب(ハラブ)と言うとやっと伝わります。

本日は、私が大量仕入れした、「緑の黄金」とも呼ばれるアレッポ石鹸について、私が現地で撮影した写真とともにお伝えしたいと思います。




第1章 アレッポという街と「緑の黄金」
世界で最も贅沢な石鹸は、パリやミラノ、東京にある洗練されたショップから生まれるのではありません。それはヨーロッパとアジアの狭間で長い歴史を積み重ねてきた街、シリア北部の古都アレッポから届けられます。

文明発祥の地のひとつであり、幾多の帝国が行き交ったこの街には、記憶よりもずっと古い製法が、今も生きています。
石鹸は「洗剤」ではなく「一族の遺産」
アレッポにおいて、石鹸は単なる洗浄用品ではありません。職人の一族が代々受け継いできた誇りであり、厳密な工程を守ることで初めて完成する、時間をかけた産物です。
その起源は8世紀まで遡ります。シリア北部の職人たちが独自の品質と薬効を磨き続け、やがてその名は世界に知られるようになりました。歴史上、クレオパトラやゼノビアといった女王たちも、この石鹸を愛用したと言い伝えられています。

人々はアレッポ石鹸を「緑の黄金」と呼びました。その名の通り、作りたての石鹸は鮮やかな緑色をしており、時間とともにその色が変化していく様子もまた、この石鹸の特徴のひとつです。

アレッポ石鹸は、8世紀から続く職人の技と、シリア北部の自然環境が組み合わさって生まれた、世界でも類を見ない手工業品です。
第2章 石鹸を支える原料の秘密
食用には向かない「二番搾り」のオイル
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