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ママ、はぐれちゃうよ

「うちって、旅行行ったことないよね」

息子と買い物に行ったある日の車の中。

突然、そんなことを言われました。

「いや、あるっちゃあるよ。
ディズニーとかユニバとかが多いけどね。

でも、大抵パパが怒るからねぇ」

そう話しながら、

あぁ、そういえば。

と、ある旅行のことを思い出しました。

私はもともと人混みが苦手で、
インドア派。

対して夫は、
ディズニーランドが大好きです。

「どこか行こうか」

そうなると、
夫の答えはたいてい、

「ディズニー!」

家から車で6時間ほど。

小さい頃の息子は、
目を離すとすぐどこかへ行ってしまう子だったので、
電車で行くという選択肢は、
最初からありませんでした。

夫の運転で向かうのですが、

出発前から、
なぜか夫はイライラしている。

運転中も、
思うようにいかないことがあるたびに
少しずつ機嫌が悪くなっていく。

そして、
ようやく夢の国に着く頃には、

「せっかく来たのに……」

と思うくらい、
車の中の空気は重くなっていました。

ゲートをくぐると、

「ファストパス取ってくる」

そう言って、
夫は行き先も告げずに走っていきます。

私は、
小さな子ども二人の手を握りながら、

たぶんあっちだろうな。

と、夫の向かった方向へ歩いていきました。

やっと合流したと思ったら、
夫はなぜかさらに不機嫌。

その横で私は、
目を離したらどこかへ消えてしまう息子を追いかける。

せっかく来たのに、
私はずっと誰かの機嫌と、
息子の行動を気にしている。

そんなことが何度も続いて、

私はいつの間にか、
旅行そのものが嫌いになっていました。


子どもたちが大きくなるまで、
何度か旅行には行きました。

でも、
行くたびに、

「もう行きたくないな」

と思うようになっていました。



そして、
娘が中学3年生、
息子が中学1年生の頃。

県民ホリデーを利用して、
ユニバへ行きました。

冬も近いというのに、
その日は暑くて、

歩くのも大変なくらい、
ものすごい人。

ポップコーンを買うのに1時間半かかる。
食べ物を買うのも一苦労でした。

ヘトヘトになりながら、
子どもたちが乗りたいという
アトラクションへ向かいます。

目を離したら、
離れ離れになってしまいそうなほどの人混み。

子どもたちを見失っちゃう

そう思った、その時

右側に娘

左側に息子

二人が私の手を取ってくれました。

「ママ、はぐれちゃうよ」


「いや、まだそんな年ちゃうよ!」


咄嗟にそう言ったけれど、

私よりはるかに大きくなった二人に
挟まれて歩いていると、

小さかった頃の二人の姿が、
ふっと浮かびました。

こんなに大きくなったんだ。と
ちょっと嬉しくて


そして
2人に連れられ歩く自分が
なんだか、おかしくて。



夕方になるにつれて、
人も少なくなってきました。

夫と娘、
私と息子に分かれて行動することに。

私は息子と一緒に、
スパイダーマンへ。

空いていたこともあって、
降りると同時に、また並びます。

3回目

……いや、
さすがにクラクラするぞ

4回目

夫と娘と合流して、
また並んでみたものの、

「もうちょっと……吐きそう、かも」

途中で離脱し、

トイレに、
置き土産をしてきました。



ヘロヘロになった私を、
娘と息子が支えながら
駐車場まで連れて行ってくれました。


「完全に介護やんね」

なんて言いながら。



絶叫系、
昔は得意だったはずなのにな。

三半規管の衰えに、
ちょっと悲しくなりながら、

でも、

私を支えて歩いてくれる二人の姿が、
なんだか嬉しくもありました。


いつもの旅行とは、
少し違う気持ちで帰った一日でした。



そして今日

息子と話すまで、
私はこの日のことを
すっかり忘れていました。

「うちって旅行行ったことないよね」

その一言がなかったら、
きっと思い出すこともなかった。

思い出せてよかった。


だから、
こうして残しておこうと思います。

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softly.beyond                         〜そっと‥そのさきへ〜 最後までお読みいただきありがとうございます。 もしこの記事が少しでもお役に立てたり、心に響くものがあったりしたら、チップで応援いただけると嬉しいです。 いただいたご支援は、クリエイターとしての活動費に使わせていただきます