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【読書記録 -173】『戦略を機能させる』ハーバード・ビジネス・レビュー 2025年11月号

戦略は誰のためにあるのか

戦略とは:企業が長期的な目標を達成するために、人・モノ・カネといった経営資源をどのように配分するかを定めたもの

ハーバード・ビジネス・レビュー 2025年11月号の特集は『戦略を機能させる』だ。

ボクはこの特集を読みながら、戦略そのものよりも、むしろ「戦略は誰のためにあるのか」ということを考えていた。

戦略は、それを受け取る人によって必要な情報が違う

社員に向けて発表する戦略と、投資家や銀行に向けて説明する戦略では、当然ながら関心のあるところが違う。顧客にとっては、人員配置や資本政策など、ほとんど関係がないかもしれない。

だから、戦略を考えるときには「何を伝えたいか」だけではなく、誰に受け取ってもらいたいのかを考える必要がある。

読んでもらうということ

ボクたちは「戦略」を、どこか概念的なイメージで捉えてしまいがちだ。

だが、本来、戦争における戦略は地図などを使って可視化されてきたはずだ。企業の戦略であれば、それがテキストか図表になるだろう。

そうなると、その「戦略」は(誰かに)読まれなければ意味がない。だが、そこには「人は自分に関係のないものをなかなか読まない」というジレンマがある。

そういう意味では、ジェフ・ベゾスが書いたフライホイールの図は「投資家向けの戦略」として優秀だ。

「フライホイール」というタイトルと併せて、「Amazonがどのように成長するのか」をたった一枚の図(レストランの紙ナプキンにサラサラっと書いたそうだが…)で読ませる力を持った「戦略」だ。

つまり戦略が戦略であるためには、受け手がその戦略を「自分事」として捉えられることが必要なのではないだろうか。

壮大な物語を書く

戦略には、未来へ向かうシナリオがある。

現在、ボクたちはここにいる。
これから、世の中はこう変化する。
だから、ボクたちはこちらへ向かう。

そう考えると、戦略とは自分(もしくは自社)が、どんな苦難に立ち向かいながら成長を遂げていくかを記した物語(ナラティブ)だと言えるだろう。

ハリー・ポッターシリーズは壮大な物語だ。
おそらく、全作通算すると(日本語で)300万字以上になるだろう。

読み手は、それぞれ自分なりの立ち位置で物語に没入していく。ハリーに共感する人もいるだろう。ダンブルドアに自分を重ねる人もいるかもしれない。ひょっとすると、全く俯瞰の状態で物語の進行を眺めるだけかもしれない。

戦略は壮大な物語であるべきだ。
だけど、多くの企業の戦略はその物語のほんの数ページを切り取ったものになっていることが多い。

改めて考えてみよう。

ジェフ・ベゾスのフライホイールの図が、彼の頭の中にあったナラティブ(の一部)だったとは思えない。あれは彼が思い描いた壮大な物語の「目次」だったに過ぎないとボクは思う。

機能する戦略とは

今号のハーバード・ビジネス・レビューの特集に、ジョアン・コッター・サルバドとフリーク・ヴァーミューレンによる「戦略は一枚のビジュアルにまとめなさい」という論文が掲載されている。

タイトルだけを見ると「複雑な戦略を一枚に圧縮することが重要だ」と受け取ってしまいそうになる。しかし、一枚のビジュアルだけで、戦略のすべてがわかるはずがない

だとすれば、ジョアンの言う「一枚のビジュアル」は戦略そのものを圧縮したものではない。ボクには、彼が「目次を視覚的にデザインしろ」と言っているように思える。

目次が優秀であれば「この章は面白そうだ」「ここは自分に関係がありそうだ」「もう少し詳しく読んでみたい」と、自分が読むべきページを見つけることができる。

機能する戦略とは、300万字におよぶ壮大な物語の中から、受け手が「自分のページ」を見つけられるようにするための一枚を指すのだ。

戦略は作っただけでは機能しない。そして説明しただけでも機能しない。ましてや、浸透させようと一方的に読ませるだけでは、受け手にとって自分事にはならない。

大切なのは、読ませることではなく、読んでもらうことなのだ。

そのためには、受け手が自分を登場人物として置くことのできる、300万字におよぶ豊かな世界観が必要になる。

だからこそ、一枚のビジュアルが必要なのだ。

それは、戦略を一枚に詰め込むためではない。
その巨大な物語の中から、受け手が「自分のページ」を見つけるために。

参考リンク

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2025年11月号

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